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2025年9月19日更新

シミが伝える「夏型結露」|インスペクションで解明 住まいのミステリー 第30話「築2年 木造2階建て住宅」

文・下地鉄郎(インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)


住宅の劣化状態などを調査して報告する「インスペクション(建物診断)」。今回は、雨漏りも水漏れもしてないのに1階の天井に現れた水シミについての相談。インスペクション沖縄の下地鉄郎さんが原因を解明する。

   第30話「築2年 木造2階建て住宅」
シミが伝える「夏型結露」

 依頼内容 
築2年の2階建て木造住宅。1階の天井に水シミが出てくるようになった。2階の天井には見られず、雨漏りの可能性は低そう。原因と対策を知るためにインスペクションをお願いしたい。



  漏り・水漏れではない

「1階の天井面に現れた水シミの原因を調べてほしい」。築2年の木造2階建て住宅に住む依頼者からの相談。シミが出ているのは1階の天井のみ。2階天井には見られず、屋根からの雨漏りの可能性は低い。2階にはトイレや洗面などの水回り設備がないため、水漏れとも考えにくい。天井を張り替えても、原因が不明のままでは再発の恐れがあるため、詳しい調査を依頼された。

現地調査では依頼主も同席。夏場ということもあり室内はエアコンが効いており、カビ臭さもなく快適である。まず1階天井の水シミを確認しつつ、各所の温湿度とともに、非接触水分計を用い湿気を計測。外壁や屋根裏の換気口の状況から、やはり雨漏れではなく結露であることが分かった。
 
 建物の温湿度と換気状況のイメージ 
 
各所の湿気を非接触水分計で計測。外壁や屋根裏の状況を見ると、雨漏りや水漏れではなく「結露」だと判明した​


  房による結露

建物は木造ではあるが、部分的な骨組みは鉄骨が使用されている。鉄骨は木材にくらべ熱の伝わり方が高く、2階で使用しているエアコンで冷やされた2階床の温度は、床を支える鉄骨材にそのまま伝わり結露を生じさせたというわけだ。

「結露」とは、暖かく湿った空気が、冷えた箇所に触れることで水蒸気が水滴に変わる現象のこと。特にエアコンや換気不足の問題で夏場に生じる今回のような結露を「夏型結露」とも言う。

また、建物の構造や仕様に合わせた適切な換気計画となっていないようで、屋根裏には屋外や屋内からの湿気がこもり、さらに日射の影響もありサウナ状態に。実際、2階天井面や壁面をよく観察すると、うっすらとカビのような模様が発見された。依頼者に屋根裏の換気不足の状況も伝えると少し驚いていたようだが、天井の水シミの原因が分かったことで対策が立てられると、安心しているようだった。

  因や対策は複数

この水シミは建物からのメッセージとも言える。

ただ、複数の原因が重なっており、改善する対策はいくつもある。コストもそれぞれのため一概には伝えづらいが、そのままにしておくと水シミやカビが増えていくことに加え、構造体である木材の耐久性低下にもつながる。依頼主には「湿気がこもりにくくなるように各所の換気を見直すと改善します」と伝え、さらにエアコンの設定温度を少し上げたり、吹き出し口を拡散させるなど下記のような対策が有効であることを後日の報告書で記した。
 

 解決策・アドバイス 
◆夏場のエアコンの設定温度を、可能であればもう少し上げつつ吹き出し方向を拡散させる
◆1階天井面に換気口をいくつか設けて、天井裏と室内の温湿度差をなくす
◆エアコン室外機下の土間がぬれないようドレン水ホースを延長する
◆屋根裏にこもった温湿度の高い空気をもっと外へ逃がすための軒裏換気口を適宜設置する




しもじ・てつろう/1級建築士。(株)クロトン代表取締役
電話=098・877・9610

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2072号・2025年9月19日紙面から掲載

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