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2024年4月19日更新

居住支援③|横の連携で包括的な支援を[介護を支える 住まいの工夫(32)]

前回に引き続き、沖縄県内の「居住支援」の状況を支援に携わる人々に聞く。今回は多くの高齢者が暮らす地域で、介護や福祉に関する相談対応、支援を行う那覇市地域包括支援センター松川の中村丘学所長に話を聞いた。

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介護を支える住まいの工夫 (32)


居住支援③
横の連携で包括的な支援を


入居後の支援も重要

高齢者の総合的な相談窓口である地域包括支援センター。多くの高齢者が暮らす那覇市の地域包括支援センター松川の中村所長は、「近年、住宅の退去を余儀なくされた高齢者からの相談が増えている。特に元気な高齢者は、そこに関わる不動産業者、家主も含めて支援制度の外に置かれがち。住まいに関わる問題を解決するための明確な窓口が不足している」と現状を危惧する。

また、「住宅で困る人の多くは複雑で多様な困りごとを抱えている。障がい、高齢といった縦割りでなく、横につながり連携しながら必要な支援につなげ、入居後も見守る必要がある」と強調する。

中村さんは以前、区画整理に伴い転居先を探していた精神疾患のある高齢者が、数千万円の資金があるにも関わらず住まいが見つからないと相談を受けたことがあった。独居高齢者、保証人不在、精神疾患が原因で住宅確保が難航。中村さんは居住支援法人の(株)レキオスに協力を仰ぎ、一時的な仮設住宅への転居をへて、3年後に適切な住まいを見つけ転居させることができた。また、民生委員などとも連携し、その後のサポートにもつなげた。

今後、沖縄は他県より急速に高齢者が増加するとされ、住宅問題もますます深刻化すると予想される。中村さんは「地域の不動産業者や包括支援センターなど各関係機関だけで問題解決するのは難しく、居住支援法人との連携が不可欠。住宅確保後も、多様な問題に対処できる横断的な連携が重要」とした。


分野を超えて連携

国は住宅確保要配慮者に対し、住宅セーフティーネット制度で居住支援体制の強化を図ってきた。本年度は法改正に向けても動き出したが=囲み、「法整備を待っている間にも住まい探しに困っている人がどんどん増えている。ただ待っているわけにはいかない」と中村さん。住宅問題に直面している人々をサポートするため、レキオス、不動産業者、弁護士など有志と共に、入居者支援者一覧の情報シートの様式や仕組み作りに取り組んでいる。情報共有で大家の不安を軽減し、住宅問題の解決に貢献したいとの考えだ。

中村さんは現状制度の下で、支援者がそれぞれの枠を超えてなんとかサポートしている困難さを打ち明けながら、「高齢者も元気なうちに保証人や緊急連絡先を考える、持ち物や身辺を整理しておくなど、将来に備えることが大切」と呼び掛ける。





なかむら・きゅうがく/那覇市地域包括支援センター松川所長。社会福祉士。高齢者の問題について、居住も含め総合的な相談に対応している


取材/赤嶺初美(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1998号・2024年4月19日紙面から掲載

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