屋外の段差解消|出入口に昇降機とスロープ[介護を支える 住まいの工夫(28)]|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

家づくりのこと

家づくり

2023年12月15日更新

屋外の段差解消|出入口に昇降機とスロープ[介護を支える 住まいの工夫(28)]

介護が必要な人も、介護をする人も、安心して安全に暮らせる住まいの整え方を紹介するコーナー。今回は工夫が光る「段差解消」の事例を介護リフォームmapの比嘉直臣さんが紹介します。

介護を支える住まいの工夫 (28)

屋外の段差解消
出入口に昇降機とスロープ


各専門職が知恵を絞る

在宅介護における屋外の段差解消は、要介護者が移動するときの心身への負担や不安を軽減するだけでなく、社会とのつながりを増やし、生活への意欲や認知機能の維持のためにも大切なこととされる。

屋外の段差解消としては、スロープの設置などがあるが、現場の状況によっては簡単でない場合もある。1500件以上の介護保険工事を手掛けてきた比嘉直臣さんは、そんな難しい現場でも、「介護を支えたいという人々の思いと知恵を集め、より良い住環境を整えることができた」と笑顔で話す。

特に記憶に残るのは、病による後遺症から、自宅で車いす生活を送ることになったAさん(80代男性)宅の段差解消工事だ。Aさん宅は、駐車場から玄関までの段差が大きく、ほぼ直角に曲がらないといけないような場所もあった。Aさん宅に集まったケアマネジャーや作業療法士、福祉用具専門相談員と比嘉さんは、「段差解消をスロープだけで考えれば、車いすでの移動は無理」と判断した。「そのとき、ふとケアマネジャーが、花壇の上を通り、玄関ではなく部屋の掃き出し窓をつなげることができれば、とつぶやいたんです。その言葉にピンときました」と比嘉さん。作業療法士も段差解消昇降機の活用や、介護しやすい方法を考えるなど、皆でアイデアを出し合い、プランを立てることになったと当時を振り返る。

福祉用具の担当者も現場を確認し、設置面積が小さな段差解消昇降機を用意した。

花壇を一部、取り壊すことになったが、Aさん家族から「安心して外出できるようになり良かった」と喜ばれ、比嘉さんも「仕事へのやりがいを感じた」と胸を張る。


三つの感情を大切に

比嘉さんは「介護リフォームを行うときは、常に三つの感情を大切にしている」と語る。「一つ目は、介護を必要とする人の自尊心。次に安心したいという要介護者と介護者の気持ち。三つ目に助けたいという第三者の思い」だと言う。「その第三者の助けたいという思いだけでやってしまうと、本人や家族の望んでいないものができてしまう。介護リフォームは、やり過ぎた改修になると、本人の自尊心を傷つけたり、身体機能を維持する機会を奪うことにつながる場合もある」と表情を引き締め、「介護リフォームはその方法や制度をよく知るケアマネジャーや、経験豊富な業者に相談することが大事」と呼び掛ける。


 

花壇取り壊しスロープ 部屋の窓に段差解消昇降機

写真提供:介護リフォームmap

改修前

    ▼

改修後1


改修後2

車いす生活を送るAさんの自宅は、駐車場から玄関まで段差が大きく、直角に方向を転換しないといけない場所があるなど、車いすでの移動が困難だった=改修前。花壇の一部を取り壊してスロープにし、玄関ではなく部屋の掃き出しの窓から出入りできるよう、段差解消昇降機を設置=改修後2。昇降機は設置場所に合わせて、面積の小さいものを用意した=改修後1。これまで困難だった外出が安心してできるようになった。

段差解消の改修工事は、条件を満たせば介護保険制度の給付対象となり、上限20万円の工事費用の内、7~9割が給付される。また、段差解消昇降機は、各市町村の条件によるが、介護保険制度でのレンタルも可能な場合がある。



ひが・なおとみ/「介護リフォームmap」代表。介護保険住宅改修、申請業務、バリアフリー工事相談対応。介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級


取材/赤嶺初美(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1980号・2023年12月15日紙面から掲載

家づくり

タグから記事を探す

この連載の記事

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2128

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る