庭・garden
2023年10月6日更新
コイ泳ぐ海と岩山 迫力ある自然再現[プロがつくる庭]
Nさん宅(本島北部)
石組みと池。手前にある飛び石に立つと、迫力ある岩山や静かに流れる2本の川、水をたたえる広い海など、雄大な自然が再現された風景を視界いっぱいに楽しめる
2本のせせらぎ 流れ方で趣に違い
大きな規模で没入感
高台にたつNさん宅。向かう坂の途中でまず目を引くのが、前面道路に面した石積みだ。大きな琉球石灰岩をいくつも積んだダイナミックな造りで、訪れる人や道行く人の目を楽しませている。
敷地に入ると、木々に囲まれた小道が坂の上へと誘う。小鳥のさえずりに耳を傾けながら上りきると、一気に視界が開け、砂利敷きの広場が現れる。そして奥には、本部石や琉球石灰岩を使った石組みと池が、泰然と存在感を放っている。大きな飛び石を渡り、石組みに近づくにつれて迫力が増し、自然の中に入っていくような感覚になる。
岩山を再現した石組みは、頂上の大きな本部石を中心に裾野を広げ、幅約15メートル×高さ約3メートルと大規模。頂上からは左右に分かれて水が流れ、それぞれ異なる動きで池へとせせらいでいく。右側は一度大きく落ちてなだらかに、左側は石の上を段々と伝い落ちていきながら、心地よい水音を響かせる。
水の流れを追って下を見ると、海のように広がる池。何匹もの色鮮やかなニシキゴイが悠々と泳ぐ。Nさんは「コイを入れる前には、孫たちがプールとして遊んでいたんですよ」と目を細める。Nさんにとっては、どちらも楽しい光景のようだ。
池で泳ぐたくさんのニシキゴイ。赤や白などのさまざまな色が、石組みに彩りを添えている
技術高い空積みの野面積み
不安定の中の安定
庭が好きで、敷地内の数カ所に庭を設けているNさん。今回は、赤土の地面が広がっていた部分に、「コイを泳がせる池」を知り合いの庭師に依頼した。草刈りなどの手入れも抑えられるように求めた。
依頼を受けたナカムラ造園の仲村弘喜さんは「もともとあった高低差を生かし、山奥から水が流れるイメージ」を提案。本部石と琉球石灰岩を約100トン、植栽はソテツや、テンニンカ、ラン、クロトンなどを使い、手入れがラクな石組みの琉球庭園に仕上げた。
池は曲線を描くことでより自然な雰囲気に。2カ所ある滝口も、頂上からの距離が異なるため、水の流れ方にも変化がついた。
道路に面した琉球石灰岩の石積みは、石をかみ合わせて積む「野面(のづら)積み」によるもの。しかも、モルタルを使わない「空(から)積み」になっているという。「倒壊しないよう石をかみ合わせていく技術が必要で、いろいろな形を見極めながら、上部は平らになるように積んでいった。不安定の中に安定を感じられるようにした」と話す。
Nさんは「目指している完成形はまだまだ。池の石組みに、ツバキやサクラ、クロガネモチなどを植栽したりして、もっと緑を増やしていきたい」とやる気満々。今後の変化も楽しみだ。
設計・施工/(有)ナカムラ造園土木 電話=098・964・5670
取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1970号・2023年10月6日紙面から掲載
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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。