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2022年11月18日更新

【沖縄】車いすのヒヤリハット|介護を支える 住まいの工夫⑰

介護が必要な人も、介護をする人も、安心して安全に暮らせる住まいの整え方を紹介するコーナー。今回は「車いすでのヒヤリ・ハット事例」から、特に自宅内で起きやすいものを紹介。理学療法士の井岡有子さんが事故防止対策についてアドバイスします。

介護を支える住まいの工夫 ⑰

車いすのヒヤリハット

小さなことでも安全確認を

利用者本人が操作して進む自走用車いすは、自分で移動できることで行動範囲が広がり、自立心の向上、介護の軽減などさまざまな利点がある。しかし、「安全を第一に考えた使用法、確認作業を大事にしてほしい」と理学療法士の井岡有子さん。訪問リハビリなどで、長年、在宅介護を支援している井岡さんは、「自宅内の慣れた空間は確認を怠りがちで、事故の発生事例も多い。車いすのブレーキをきちんと掛ける、移乗するときは高さを合わせる、傾斜を移動するときは後ろ向きで降りるなど、いつでも、ちょっとしたときにこそ注意を」と促す。

よくあるのが、ブレーキを掛け忘れたまま移乗しようとして車いすが動き転倒する事故=囲み1。「ブレーキの掛け忘れは、本人だけでなく、介助者にも起こりがち。骨折など大きなケガにつながることも少なくない。ブレーキ掛けを習慣化するよう、本人だけでなく、介護する家族も徹底しましょう。ブレーキ操作がしやすく、また視覚的にも注意が向くように、赤や黄色のテープを巻いたラップの芯をレバーに差し込む方法もあります」とアドバイスする。

ほかにも、トイレなど移乗介助の際に、足を置くフットレストに足をぶつけてケガをしたり、可動式の肘掛けに足や服を挟み込むトラブルも多いと井岡さん。「介護者が注意するのはもちろんですが、介助するための空間スペースがしっかり確保できていない可能性もある。介助の空間確保は事故防止の大切なポイントの一つ。ケアマネジャーや療法士などに相談を」と促す。


家族で安全な環境作り

事故防止には、安全な環境づくりの視点が欠かせない。Aさんのように、床に落ちたものを拾おうとして、前方へ転落したり、車いすごとひっくり返る事故も「意外に多く起きている」という。「落ちた物を慌てて拾おうとして、フットレストに足を乗せたまま前傾すると、車いすの前方に体重が掛かり、ひっくり返ってしまうこともある」と説明。「手すりを物掛けにしたり、ベッドサイドや廊下の床に物をいっぱい置いて、事故を誘発する原因になっていないか確認し、問題があれば改善を。安全な環境づくりは家族全員で認識し、維持することが大切です」と力を込めた。




Aさんのヒヤリ・ハット3事例
半身不随で車いす生活を送る母を在宅介護中のAさん。自宅内で「車いすの使用中に、これくらいならできるだろうという過信から、ヒヤッとした場面があった」と話す。Aさんのヒヤリ・ハット体験を三つ紹介する。


①ブレーキを掛けずに立ち上がり、転びそうになった
車いすからベッドやトイレの便座に移乗するとき、車いすのブレーキを掛け忘れることが時々ある。車いすが動いて転びそうになった。車いすからベッドやトイレの便座に移乗するとき、車いすのブレーキを掛け忘れることが時々ある。車いすが動いて転びそうになった。

②車いすで段差を前向きに進み、バランスを崩した
室内の小さな段差のあるところで、「これくらいなら大丈夫だろう」と思った母が、車いすを自操して前向きに下り、大きくバランスを崩した。室内の小さな段差のあるところで、「これくらいなら大丈夫だろう」と思った母が、車いすを自操して前向きに下り、大きくバランスを崩した。

③落ちているものを拾おうとして車いすごとひっくり返った
手すりに掛けていたタオルが床に落ちていて、車いすに乗ったまま拾おうとしたら、車いすごと前に転倒。頭を強く打ち、急いで病院で検査をしてもらった。大事には至らなかったが、本人も相当な恐怖を感じた。手すりに掛けていたタオルが床に落ちていて、車いすに乗ったまま拾おうとしたら、車いすごと前に転倒。頭を強く打ち、急いで病院で検査をしてもらった。大事には至らなかったが、本人も相当な恐怖を感じた。




いおか・ゆうこ/医療法人おもと会訪問リハビリぎのわんおもと園 理学療法士


取材/赤嶺初美(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1924号・2022年11月18日紙面から掲載

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