防災
2018年2月9日更新
知ってる?耐震化「劣化止めても耐震性は上がらない!」
大地震の際にわが身と家族を守る「耐震化」へのさまざまな疑問に、NPO沖縄県建築設計サポートセンターが答える。2回目の今回は、「耐震化とメンテナンスの違い」や「耐震化にかかる費用の目安」「気軽に相談できる専門家」などについて。
Q.メンテしていれば大丈夫?
メンテナンスと耐震化は別物です。外壁塗装などのメンテナンスは、鉄筋やコンクリートなど建材の強度である「耐久性」を維持するためのもの。そのため定期的に外壁塗装などのメンテナンスを行っていてコンクリートや鉄筋は健全でも、そのコンクリートで作られた柱が細かったり柱内部の鉄筋の本数が少なければ、大地震に耐えられず「耐震性能が低い」となります。つまり、「耐久性」と「耐震性」の二つの性能が確保されてはじめて、安全な建物と言えるわけです=イラスト参照。ちなみに建物の耐震性は耐震診断でしか判断することはできません。
Q.劣化がひどくても、耐震補強すれば安全な建物になる?
劣化状況がひどければ、耐震補強できない場合もあります。例えば、建物に生じているひび割れが、コンクリート内部の塩分で生じた鉄筋のさびによる場合、耐久性能の回復はほとんど期待できません。
Q.耐震化っていくら掛かる?
昨年、簡易診断を行った築40年、1・2階合わせて40坪のRC造2階建て住宅で、必要な耐震補強の内容を割り出し試算してみました。補強内容は、1階の四隅と2階の2カ所の柱に、厚さ28センチ、長さ1メートルの袖壁を柱当たり2カ所増設するというもの=図面。1万円の簡易診断の後、耐震診断に94万円、必要な補強工事を行うための設計費と工事監理費に97万円、実際の工事費に780万円で、合計972万円掛かる計算となりました。
仮に同じ建物を耐震補強せずに建て替える場合、解体費用約180万円+新築費用が必要です。
Q.費用の問題で耐震補強ができない時はどうすればいい?
前回もお話ししたように、過去の大地震の死因の上位に挙がっているのが、柱が上の階を支えきれずに建物が崩れ、中の人が圧死するケースです。自宅が2階建てであれば、2階の柱にかかる負担は少ないので、1階よりは2階で寝た方がいいでしょう。可能なら、1981年以降に建てられた住宅に住み替えることをお勧めいたします。
そして大切なのは、今後ご自分はどうしたいのか、またどんな選択肢があるのかについて、お子さんたちと話し合うこと。相談者の中には既にお子さんが独立されていて「話しにくい」と遠慮している方もいらっしゃいますが、大地震が起こってからでは取り返しがつきません。まずは親子で一緒に、サポートセンターの窓口へ相談にいらしてみてください。
Q.耐震化って分かりづらい。気軽に専門家に相談できる?
建物の状態をトータルで判断できる建築士に相談するのがお勧め。県内の建築士が所属する県建築士会や県建築士事務所協会などのHPを参考にするのもいいでしょう。また現在、1万円でおおよその耐震状況が分かる「簡易診断」を県が行っていますので、それを利用するのもお勧め。診断は建築士でもある簡易診断技術者が行いますから、気になる点があればそこで相談するのもいいでしょう。簡易診断の申し込みや耐震診断に関する相談はサポートセンターで受け付けていますのでお気軽にご相談ください。
建物の耐震性と耐久性
築40年の2階建てRC造(1・2階合わせて40坪)の耐震補強内容
<知ってる?耐震化>
・安全の思い込み 家族を危険に
・劣化止めても耐震性は上がらない!
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1675号・2018年2月9日紙面から掲載