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2017年2月17日更新

名ばかり福祉避難所 障がい者を守れず|みんなで考えよう!豊かなまち⑪

災害時、障がい者は移動や情報入手の困難で指定避難所にたどり着くことは難しい。避難室ではさまざまなバリアーに囲まれ、二次被災する可能性もある。車いす利用学生で、障がい者の防災について卒業論文を執筆中の田畑秋香さんと避難所を考える。

災害時バリアー② 避難所

大規模地震災害では、ほとんどが指定避難所に入れない。連続する地震におびえ、情報や物資を求める人が殺到するからだ。高齢者や移動困難者、視覚や聴覚に障がいがある人は大幅に到着が遅れる。避難できても安心して暮らせる環境には程遠く、必要な情報も得にくく孤立する。最初からあきらめ、壊れた自宅にとどまる人も多い。
国は阪神・淡路大震災以後、避難所での生活が難しい人が円滑に避難滞在できる施設を福祉避難所として確保し、「生活相談員」による相談・助言支援体制と生活環境の確保を定めた。だが、熊本地震では市民への周知がなく、機能しなかった。熊本市は176施設を福祉避難所に指定、1700人受け入れ可能のはずが、本震が発生した日の利用者は5人だけだった。介助者にも伝わっておらず、福祉避難所の存在を知らないまま体調不良で亡くなった障がい者もいた。
行政の計画では、いったん指定避難所に避難した要支援者を、保健師などが福祉避難所に誘導する2段階誘導方式だった。実際には、ただでさえ移動や情報入手が難しく、避難所に行くことすらままならない。過去の事例では、行政による要支援者の安否確認ですら1カ月はかかっている。
沖縄でも周知方法や2段階方式に同様の課題があるほか、行政による「指定」「協定」だけで備蓄や具体的な運営は施設まかせになっている。過去の災害の教訓は生かされず、災害時要支援者の命は危機にさらされたままだ。
健常者と要支援者を分けず、共に暮らせる避難所であることが望ましい。辛い時だからこそ、健常者の仲間と一緒にいたいと願う障がい者も多くいる。行政は、国に押される格好で福祉避難所を形だけ増やすより、福祉機能も持つ指定避難所やそのためのマンパワーを増やす努力をすべきだ。


3・11後の岩手県大槌町の避難所。障がい者が生活するには厳し


福祉学科のある大学は積極的な開設を

―車いす利用者にとっての避難所の困難は?
 田畑  たとえば避難室で女性が着替えにくい問題があるが、私たちはさらに困難だ。健常者のようにさっとできないし、仕切りがあっても上からのぞかれてしまう。仮設トイレも同様で、男女別だけでなく高齢女性や障がい者女性専用を設置する必要がある。

―トイレは特に苦しい。
 田畑  避難者がいっぱいの時、「トイレが遅い」と思われるのはつらい。テント付き障がい者用トイレを設置してほしい。今の制度では、指定避難所に入れたとしても、福祉避難所に移ることは難しい。仕方なく指定避難所で生活していて「トイレが遅い」と言われると精神的に苦しく、結局飲まず食わずになってしまう。

―熊本地震でも、行政の福祉避難所は機能しなかった。
 田畑  沖国大で、障がいのある学生に「災害時の避難先」についてヒアリングした。大半は「車中泊」「福祉避難所」だった。福祉避難所に指定された施設を調べると、備蓄も人手も不十分だった。行政は「福祉」を名付けるなら、もっと当事者視点で考えてほしい。

―機能しない「福祉避難所」は必要?
 田畑  人々が「福祉」「一般」にとらわれなくなれば、分ける必要はなくなるはず。障がいについての知識や理解が少ないから、福祉避難所を設けざるを得ない。福祉施設の機能が難しいなら、大学に設置すべきだ。敷地が広く、さまざまな設備がある。
沖縄国際大学の体育館が避難所になれば、隣の校舎を福祉避難所にすると体育館に避難した仲間と会いやすい。停電が解消したら、エレベーターも使える。手話やノートテイク(要約筆記)ができる学生がおり、聴覚障がいの学生も安心できる。福祉専門職の教員もいる。何より、みんなと一緒に生活できる。

―災害時、福祉学科のある大学が果たす役割は大きい。
 田畑  昨秋、福祉避難所を自主開設した熊本学園大学に行き、避難生活を送った車いす利用学生に話を聞いた。仲間がいて、自分のことをよく分かっている教員がいることで、まったく寂しくも怖くもなかったという。災害時こそ、大学は広いキャンパスを活用してほしい。大学なら区別や差別が少なく、より平時に近い避難所生活を送ることができる。仙台や神戸の大学のように、学生が消防団に入る制度があれば、なお心強い。災害時、福祉系学科のある大学は福祉避難所運営に名乗り出るべきだ。


地域のワークショップで、避難所生活の困難を訴える田畑さん(右)


文・稲垣 暁(いながき・さとる)
1960年、神戸市生まれ。なは市民活動支援センターで非常勤専門相談員。沖縄国際大学・沖縄大学特別研究員。社会福祉士・防災士。地域共助の実践やNHK防災番組での講師を務める。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1624号・2017年2月17日紙面から掲載

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