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2025年5月16日更新
気持ちや思い出こもる大切な存在が「ラグ」|ラグの世界⑮
これまでは「Layout(レイアウト)」のバイヤー、平井香さんがラグ買い付け旅での出逢(あ)いやラグにまつわる現地の人たちを紹介してきたが、今回は少し目線を変えてラグの魅力をつづる。同東京店の小松智美店長にラグの魅力やラグの選び方などを教えてもらった。

エピソード⑮ インテリアとしてのラグの魅力

著者(平井)が初めて購入したバル-チのラグ(右側の赤とベージュのもの)
レイアウトの東京店は、もっともインテリア業界とつながりが深く、とてもお世話になっている。そこの小松店長は、たくさんのラグと出逢い、誰よりもお客さまとラグとの出逢いを見守ってきた。
そんな彼女が語るラグの魅力は「一度敷いたら『なくてはならない』大切な存在に変わること」と話す。「遠い異国で名前も知らない織り手さんが織りあげたラグとの出逢いで、人のぬくもりを感じる安心感のある空間をつくることができます」。 また「ウールのラグは湿度調整や防音、ほこりの舞い上がりを防ぐなど高い機能性を兼ねそなえたインテリアでもあります」と教えてくれました。

東京店の小松店長
彼女が最初に手にしたラグは90センチ×60センチのハイクオリティーのギャッベ。「鹿や人間が楽しそうに描かれたゆるいデザインですが、織りに丁寧さを感じました。最初に見た時はそこまでピンときていなかったのですが、お店で毎日見ること数カ月。どんどん好きになり、最後はどこに敷くかも考えずに『私が連れて帰らなきゃ!』という使命感が。今はベッドサイドや窓ぎわ、寝室のドア前などいろいろな場所で楽しんでいます」

小松店長が初めて手に入れたラグ。家のいろいろな場所に置いて楽しんでいるそうだ
たくさんのラグに触れ
「ラグの選び方」について聞くと、「まずはラグをたくさん見て触れること。たくさんのラグを見ることで好きな色やデザインが絞られ、ラグの表情を見て自分の部屋に合うかどうか分かるようになります。心に響いたラグが見つかったら、手に入れるタイミングも大切。『一生モノ』という言葉や予算でためらうのも分かりますが、深呼吸して勇気を出してみましょう。『あの時、勇気を出した自分を褒めたい』という瞬間は、わりと早めに訪れるはずです」と話す。
小松店長が言う「手に入れるタイミング」というのは、私も実体験がある。十数年前、まだラグの仕事を始める前のこと。ラグへの興味がどうにも抑えきれなくなった私は、勇気を振り絞ってラグのお店へ行った。バルーチの祈祷(きとう)用じゅうたんの実物をどうしても見たくて、お店の方に聞いたが今はないという。残念な気持ちをこらえ、ほかのラグを見せてもらっていると、配送のお兄さんが荷物を抱えて入ってきた。
「あ!」と思い出したようにお店の方が包みを開けると、私が会いたかったバルーチのラグが入っていた。艶があるラグを見た瞬間、この出逢いを逃しちゃいけない! と思ったのを鮮明に覚えている。このラグは今でもダイニングテーブルの下で活躍している。
ロマンチックな存在
十数年前のあの時、心を奪われたキモチや、家族との思い出が詰まったこのラグは他の何にも代えがたい。ハンドメイドラグの魅力は、手に入れてから時を経た“ふとした瞬間”に「あの時の自分の価値観」みたいなものを思い出させてくれるちょっとロマンチックなところかもしれない。
◇ ◇ ◇
私は今、新しい旅の準備をしている。今回はどんな出逢いがあるのか今からワクワクだ。来月からはまた旅の様子をお届けします。

執筆者/ひらい・かおり
ラグ専門店Layout バイヤー
那覇市西2-2-1
電話=098・975・9798
https://shop.layout.casa
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2054号・2025年05月16日紙面から掲載