特集・企画
2024年5月31日更新
建設分野で活躍する外国人|楊立鑫(ようりっしん)さん[タイガー産業/技術、人文知識、国際業務]
人手不足が深刻化する建設分野で注目が高まっているのが外国人材の登用だ。国によると、業界で活躍する外国人は約11万人、県内は1624人で受け入れている事業所あたりの平均は4.8人に増えている(2023年10月末現在)。設計・管工事・卸売りの各現場で活躍中の外国人と受け入れ企業に話を聞いた。
在庫管理もする楊さんは「商談の上達だけではなく、品質をすぐに見極められるよう頑張りたい」と力を込める。
中国出身
楊立鑫(ようりっしん)さん
(タイガー産業/技術、人文知識、国際業務)
資材 沖縄とアジアつなぐ
建 築・土木資材の卸売業と製造業を行うタイガー産業。中国や台湾、韓国などからボルトや型枠、塗料などを輸入し、県内はじめ日本や世界の建設現場を支えている。同社の貿易部で働く中国広東省出身の楊立鑫さん(27)もその一人。県内の大学に留学し、経済学を学んだのち、3年前に入社した。鉄やアルミなどの卸を担当している。海外のメーカーや国内の小売業者との商談から貿易船の手配、在庫管理まで多岐にわたる業務を行っている。楊さんは「大学で為替や取引について学んだけど、最適な契約のタイミングを見極めることが一番難しい。為替の値動きなどから仕入れする量を考えて価格交渉しないと、メーカーや小売業の方に損をさせてしまう」と正確な日本語で話す。そのため、鉄やアルミ市場の動向や各国の経済状況など毎日の情報収集に目を光らせている。
そんな楊さんだが、留学当初は日本で就職することは考えていなかったという。「沖縄で出会った人たちのおかげで、勉強や学生生活が充実した。人に対して温かい県民性が自分の性格にも合って、沖縄で暮らすと決意した」。経済学の知識と中国語を生かせる企業を探す中で、中国に工場を持つタイガー産業に出合った。「卸業については勉強不足で不安だったけど、思い切って企業訪問。その時に卸業や取り組みを丁寧に説明してくれて、この会社で活躍したいと思った」と楊さん。
在留資格が得られるかどうか、国の出入国在留管理庁に確認。「技術、人文知識、国際業務」を取得できることを知り、手続きも自分で行った。
タイガー産業貿易部の長嶺佳鵬課長
あえて日本語で会話
同社は1992年に中国に自社工場を建設するなど、早くからグローバル展開。現在3人の中国人が働いている。
貿易部には楊さんとともに、中国語が堪能な日本人が在籍。勤務中は中国語で会話していると思いきや、あえて日本語を使うことを徹底している。同部の長嶺佳鵬課長は「資材の説明や商談は日本語です。スムーズに商談を行うだけではなく、言葉足らずになってしまうとメーカーの信用にも関わってくる。外国語で会話する大変さは分かっているつもりですが、職場で日本語力の向上をサポート」と話す。入社時は日本語の表現を指摘されることも多かったが、「そのたびに長嶺課長や先輩を納得させたい気持ちが湧き、日本語の勉強がはかどった」と楊さん。一方で「中国の企業とやりとりするときは中国語の微妙なニュアンスも分かる楊さんが居て、助かる」と長嶺課長。
また、気になる展示会などがあれば、楊さんにも積極的に参加するよう後押ししている。「特にアジアのメーカーの数は増加し、競争力が増しています。品質も年々上がるなかで、えりすぐりの商品を見極める目も培えるように」と長嶺課長。ほかにも、同社ビル内に社員寮を完備するなどし、居住面でもサポートしている。
タイガー産業の貿易部のみなさん。楊さんは日本語を教わったり、時には中国語を教えたりと、言語力を磨いている
技術、人文知識、国際業務とは?
「技術、人文知識、国際業務」の在留期間は最長5年、最短で3ヵ月。申請は原則として日本への入国や在留を希望する外国人本人が行うものと規定されている。
申請できる外国人には大学や専門学校を卒業していること、10年以上の実務経験があることなどが求められる。従事できる仕事も専攻した知識や仕事で培った経験、母国の言語などに関連性のあるものと規定。例えば、「教育学部を卒業したものが弁当の製造・販売業務の現場作業員として採用された」場合、専門知識と業務の関連がないため、在留資格は不認可となる。
※上記の内容は、出入国在留管理庁のHPを参照し、作成したもの。
建設分野で活躍する外国人
◯ベトナム出身/ファン・ヴァン・タインさん(大成設備工業/特定技能1号)
◯インドネシア出身/ラハルディアニ・シャフィラさん(福地組/高度外国人材)
取材/市森知
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」
第2004号・2024年05月31日紙面から掲載