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2024年1月12日更新

世界に一つ 羽付きシーサー|知財 この人あの会社⑭

沖縄の魔よけや守り神として知られるシーサー。今回紹介するのは、あまたあるシーサーの中でも、背に羽が付いた躍動感あふれるシーサー。南城市に窯元を構える佐野壽雄(としお)さん(67)のオリジナル作品で、意匠登録をしている。心を込めて一つ一つ手練りで作品を生み出す。

制作中の天子シーサーとシーサーポーズを取る佐野さん

 
 天子シーサー/とうき家~春壽(はるとし) 佐野壽雄さん 

趣味が高じて作家に

佐野壽雄さんの窯元「とうき家~春壽(はるとし)」では、シーサーや食器など大小の焼き物を制作・販売をするほか、オーダーメードの注文も受け付けている。

佐野さんは30代のころ、子どもと粘土工作をしたのをきっかけに、陶芸を趣味とするようになった。そのころは師匠に付き、食器や小型のかわいいシーサーを制作しては地域の窯元で焼いてもらっていた。定年を機に「1度きりの人生だから後悔したくない」と南城市に窯元を開いた。


「置き物」ではなく「生き物」

佐野さんの生み出すシーサーは、今にも動き出しそうな躍動感が特徴。無意識に作者自身に似てくるらしく、彫りが深い顔に迫力ある表情、目頭には大きな涙点を付けている。毛並みが豊かで、風を受けてたなびいている。佐野さんは「どのシーサーも『置き物』ではなく『生き物』として魂を込めて制作している」と力を込める。

代表作の一つ「天子シーサー」は背に羽が生え、今にも飛び立ちそうだ。「ニライカナイがある南城市に、天から舞い下りた高貴な守り神」とイメージを語る。

「今までにないものを作りたい」と、4つ足で立つシーサーや、玉を抱き3点で立っている姿など、制作が難しいとされる姿のシーサーも手掛ける。「自分の中のイメージを妥協せず突き詰め、作品として結実させている。模倣をしていてはその人を超えることができない」と語る。

佐野さんは羽付きシーサーのデザインを保護する方法はないかと、県知財総合支援窓口に相談。一つのデザインコンセプトから発生する複数のバリエーションの意匠を登録できる「関連意匠」を活用し登録。また、名称である「天子シーサー」「天使シーサー」「羽付きシーサー」などの商標登録も行った。


南城市に設置されている天子シーサー。重量のあるシーサーを3点(玉と後ろ足2本)で支えるのは非常に難しいという


「シーサーは目が命」

佐野さんの制作するシーサーは、高さ70~90センチの大型のものから、30センチほどのものもある。色も希望により赤土色のものから、ブルーや白など、うわぐすりで色付けするものまで対応できる。外に設置するシーサーは風雨にさらされるため、数週間かけて手練りで肉厚に制作し、乾燥を数カ月、そして窯焼きに数日かけてじっくりと完成させる。工房を訪れるお客さんは、やはりシーサーの表情を気に入って購入してくれるという。佐野さんは、「シーサーは厳しさだけではなく優しさも必要。厄よけには怖い目がいいが、日々家を出入りする家族やお客さんのことを考えると人間味のあるまなざしが欠かせない」と語った。
 
工房の販売スペースにはさまざまな姿のシーサーが並ぶ



[執筆者]
宮川準(みやかわじゅん)
1967年、東京都出身。大学卒業後、都内で就職。2012年、沖縄に移住し沖縄県発明協会に入職、以来INPIT沖縄県知財総合支援窓口を担当。

 
 information 

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1月15日(月)大久保秀人弁理士
1月18日(木)本堂裕司弁理士
1月25日(木)松本秀治弁理士
2月1日(木)大久保秀人弁理士
2月6日(火)松島恵美弁護士
2月8日(木)西平守秀弁理士

 会 場 
沖縄県知財総合支援窓口(浦添市伊祖2-2-2 3階)

 時 間 
各日午前10時~、午後1時~の2枠を設定しています。


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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1984号・2024年1月12日紙面から掲載

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