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2022年3月4日更新
[沖縄]建設業界で働く女性|3月8日は国際女性デー③
さまざな業界で活躍する女性が増えているが建設業界ではまだまだ少数。その中で、ひたむきかつ、しなやかに働く4人の女性を紹介する。
技術不足の焦り仲間と共に解消
経営者 (株)丸元建設 社長
teamけんせつ美ら小町 共同代表
糸数幸恵さん
いとかず・ゆきえ/1986年、那覇市出身。横浜国立大学経営学部卒業後、県外企業に就職。2013年、家業を継ぐため丸元建設に入社。17年に代表取締役社長就任。19年、建設技術者養成センター代表・坂口智美さんと建設業女性交流会「teamけんせつ美ら小町」を設立
「年齢や価値観によって働き方もさまざま。男女共に多様な働き方ができる選択肢を」
「近年、建設現場で働く女性は増加。とはいえ、一企業の中で見ればまだまだ少ない」と話す、㈱丸元建設社長の糸数幸恵さん(35)。企業の垣根を越えて建設業で働く女性が交流できる「teamけんせつ美ら小町」を、2019年に立ち上げた。現在22社から40人が参加。同じ環境にいる人同士が気軽に相談する場を設けた。
美ら小町の活動目的の一つは技術の向上。その背景には、これまでの女性を取りまく雇用環境から生じる、技術習得への〝焦り〟を解消することにある。
「4、5年前まで女性に現場はこなせない。ほかの仕事のほうが働きやすいだろうと考える企業が多かった」。女性は、入社しても事務職に配属されたり、現場経験があって現場職に戻れたとしても若手扱いされたりしたという。「そうして生まれた『出遅れた』『技術不足なんだ』という焦りを、共有して共にスキルアップする環境が必要だった」
美ら小町の定例会は、参加者が携わっている技術を発表する場に。建設業への入職、キャリアチェンジを考えるきっかけにと、仕事を楽しむ女性技術者の紹介動画も配信する。
遠慮から配慮へ変化
丸元建設では、糸数さんの働きかけもあり、現在2人の女性技術者が活躍。「わが社も以前は女性技術者の採用に消極的だった。でも、働きたい、現場が好きという彼女たちの人一倍の熱意が職員にも伝わった」と振り返る。「女性じゃきついからやらなくていいよ」と遠慮がちだった会社の雰囲気は、仕事を任せつつ適切な休憩を促すなど、自然と配慮するように変わった。
「淡い色の作業ズボンは、生理中の不安がある」との女性技術者の声を受け、糸数さんは黒のズボンとの選択制に変更。さらに形も太めか細めか選べるようにし、ベテランと若手で好みの形が違う男性にも配慮した。
「女性という同じ性別であっても、年齢、家庭と仕事のどちらを重視するかといった価値観などの違いで、求める働き方はさまざま。今後は働き続けられる環境づくりが課題。長時間労働といった業界全体で解決しなければならない課題もあるが、会社として男女共に多様な働き方ができる選択肢を用意したい」と糸数さんは話した。
美ら小町は昨年、生コン工場を見学。「品質に関わるコンクリート成分表の見方が分からない」という声をきっかけに企画した
美ら小町の勉強会の様子。来年度は学生向けのイベントなどに力を入れ、新しい世代に建設業の魅力を発信する
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取材/川本莉菜子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1887号・2022年3月4日紙面から掲載