地域情報(街・人・文化)
2023年3月17日更新
カタルーニャ州バルセロナ サグラダファミリア|ガウディ建築を歩く[スペインタイル紀行⑫]
文・写真/山内直幸
「神様はお急ぎになりません」沖縄から同行した建設会社部長の「工期はいつまでですか?」という質問に案内係の答えが返ってきた。神様の時間と僕たち人間に与えられた時間との圧倒的な差に妙に納得した。
カタルーニャ州バルセロナ サグラダファミリア
ガウディ建築を歩く
サグラダファミリア、完成した教会聖堂のバシリカ中央
「いま」を重ねた建築
「神様はお急ぎになりません」
沖縄から同行した建設会社部長の「工期はいつまでですか?」という質問に案内係の答えが返ってきた。神様の時間と僕たち人間に与えられた時間との圧倒的な差に妙に納得した。
最初にサグラダファミリア(スペイン・バルセロナ)を訪れた1995年当時、中央にある教会聖堂に屋根はなくクレーンが動き回る工事現場がそこにはあった。1882年に建設が始まった大聖堂は完成するのに300年はかかると言われていた。それが今ではどうだろう、教会聖堂は出来上がり、大窓のステンドグラスから虹色の光が降り注ぐ。天辺に星を冠した九つ目の塔「聖母マリアの塔」が出現し、完成予定は2026年に短縮された(コロナ禍の中断により延期になった)。
思えば、このサグラダファミリアの建築にどれだけの人たちがその人生を懸けてきたことだろう。日本人でありながら装飾総監督を任された彫刻家・外尾悦郎氏は「本当にやりたいと思っていることがいつか来るだろうと思っていても、いま真剣に目の前のことをやらない人には決して訪れない。憧れているその瞬間こそ、実はいまであり、だからこそ常に真剣に命懸けで生きなければいけない」と語っている。地球の自然や歴史に比べて人の一生はきわめて短い。だからこそ、僕たちは「いま」を真剣に生きることが大切なのだ。
タイル使いの名人
サグラダファミリアの入場には事前の予約が必要なので気をつけよう。教会内部の入場券と塔へ上がるエレベーター券のセットで購入するのがおすすめだ。塔の上からはバルセロナの街を一望できる。
偉大な建築家アントニ・ガウディはサグラダファミリアのほかにもバルセロナに多くの作品を残した。モザイクタイルを貼った大トカゲで有名なガウディの理想郷「グエール公園」、曲線を生かした造形美の集合住宅「カサ・ミラ」、イスラム様式を取り入れた「カサ・ビセンス」などなど。中でもタイル好きとしておすすめなのが、カサ・ミラから徒歩5分の距離にある「カサ・バトリョ(バトリョ邸)」である。海をテーマにしたガラスモザイクを使った外壁、仮面のようなバルコニー、モダンなステンドグラス。内部の吹き抜けは青いタイルのグラデーションで仕上げられ、見上げると海の底にいるようだ。ガウディはタイルの耐久性と芸術性に注目し、多用した建築家だ。
夜のカサ・バトリョ外壁上部。うろこのような屋根、仮面に見えるバルコニーの手すり(バルセロナ市内)
カタルーニャの独立
2017年11月に訪れた時、バルセロナは独立運動の真っ最中であった。アパートのバルコニーにはカタルーニャの旗が掲げられ、議会や市庁舎の周りは警官隊による厳戒警備が敷かれていた。10月には州議会が独立宣言を可決し、街中で人々が歓喜した。カタルーニャ人はカタルーニャ語を話し、その言語と文化を誇りにしている。スペインを長年支配してきたカスティーリャ人から差別された歴史を持つ彼らには複雑な問題があるのだ。ここで起こっていることはウチナーンチュにとっても人ごとではないような気がした。
旧市街にあるカテドラル前の広場に行ってみる。そこでは多様な人々が手をつなぎ輪になってカタルーニャの民族舞踊「サルダーナ」を踊っていた。幸せで平和なひとこまがそこにはあった。
◇ ◇ ◇
一年間のお付き合い、ありがとうございました。一日でも早くウクライナに平和が訪れますように。=おわり
執筆者
やまうち・なおゆき/沖縄市出身。米国留学より帰国後、外資系の商社勤務を経て1995年、スペインタイル総代理店「(有)パンテックコーポレーション」を設立。趣味は釣りと音楽、1950年~60年代のジャズレコードの鑑賞、録音当時の力強く感動的な音をよみがえらせるべく追求。
㈲パンテックコーポレーション
宜野湾市大山6-45-10 ☎098-890-5567
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1941号・2023年3月17日紙面から掲載