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2023年1月27日更新
沖縄・名護で感じるスペイン 緑豊かなパティオがシンボルの賃貸アパート|住んでみたい! こだわり賃貸③
新年度に向けて賃貸物件が活発に動く時期。今回は、県内にある“こだわり賃貸”を紹介する。ほかのアパートとはひと味違うデザイン、間取り、共有スペースを有する3物件をピックアップ。設計者やオーナーに「なぜ、そこにこだわったのか」意図や思いを聞いた。
こだわり賃貸③ ラメットコローレ(名護市)
中庭で感じる季節とスペイン
正面側から見た様子。3階分の高さの大きなアーチが目を引く。スペイン風にするため、正面側の窓の上にはひさしを設けていない(写真はいずれもキャリア・プラン提供)
植栽と一体化したアパート
白い塗り壁に大きなアーチ。装飾が施された門扉を開くと、4階建ての建物に挟まれた、石張りのパティオ(中庭)が広がる。大きなシマサルスベリをはじめ、ピンクテコマ、モンステラ、ドラセナ、アスパラスプレンゲリーなどの植物が建物を彩っている。
スペイン風リゾートホテルのようなこの建物は、名護市大南にあるアパート「Rametto Colore(ラメットコローレ)」。「小枝の色」を意味しており、約10坪の1LDKが16戸ある。
名前の通り、一番の特徴はやはり緑を感じられるパティオだ。「吹き抜けで明るく、風が通り抜けるので夏涼しいんですよ」。そう話すのは、施主であり、設計も手掛けた(株)キャリア・プランの中本克二代表取締役社長。施工も自社で行った。
どの住戸もパティオに面した窓があるため、部屋にいながら緑を楽しむことができ、室内に光も入ってくる。
夜の外観。ライトアップされ、ホテルのような雰囲気。地震が起きた時に力を分散させるため、構造的には一つの建物ではなく、左右対称の二つの棟をつなぎ合わせた造りになっている
吹き抜けで明るいパティオ。4メートルを超える高さのシマサルスベリが天に向かって枝を伸ばす。2階より上はパティオに面してバルコニーもある
壁厚25センチで雨仕舞
イメージの基となったのは、中本さんがスペインで見た、パティオのある集合住宅。「中庭があり、植栽と一体化したアパートを沖縄でも造りたかった」と話す。
そこで植栽を担ったオフィスタカスギの髙杉忠代表は、シンボルツリーとしてシマサルスベリを提案。「葉の色が明るく枝ぶりもきれいなので建物に合う。落葉樹で、夏は葉を茂らせて陰を作り、冬は落葉して暖かい日光をパティオに届けることもできる」と説明する。
植物の管理も徹底。水やりはタイマー式にしているほか、定期的なメンテナンスを髙杉さんに依頼して、見栄えのいい状態を保っているという。
門扉や手すり、外灯などは、鉄製に見えるが、実はさびにくいアルミ鋳物。よりスペインらしさを出すための特注品だ。外壁もスペイン産の石灰を混ぜ込んだ塗り壁にしている。
さらに、正面側の窓の上のひさしはあえて設けなかった。中本さんは「ひさしは雨水が垂れて窓から入らないようにするため設けるものだが、ひさしがあると日本的になってしまう。そのため外壁の厚さを25㌢にして、一般的なものより奥まった位置に窓を設けた」。スペイン風のデザインにこだわりながら、雨だけでなく日差しも入りにくくした。
季節と異国を感じる非日常的な雰囲気を、日常の風景として暮らしていけそうだ。
室内。玄関には額縁に入ったクロスが飾られている。模様は部屋ごとに異なる
建物の奥から見たパティオ。階段の手すりや外灯=左下写真、門扉=右下写真=などは、オリジナルのアルミ鋳物で作成したもの
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取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1934号・2023年1月27日紙面から掲載
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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。