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2019年9月27日更新
築50年古民家を改装“和”前面に“琉”チラリ|HOTELに習う空間づくり[5]
当連載では県内のホテルを例に、上質で心地良い空間をつくるヒントを紹介する。
和風邸okinawa city(沖縄市)
空間コンセプト「和テイスト」
仕切り・天井取り開放的に
沖縄市にある「和風邸okinawa city」は、築50年余の沖縄古民家を「和風」にリノベーションした一棟貸しのコンドミニアムだ。
真っ白な外壁と、その足元には焼杉をイメージした黒い板が貼られている=写真2。
「和風邸」の名の通り、日本家屋のような雰囲気だ。オーナーで同物件のプロデュースも手掛けた宮里学さんは、「海外の観光客も想定して空間作りをした。特にアジアの方々にとって沖縄は最も近い日本。だから〝和〟を前面に出して〝琉〟はさりげなく散りばめる程度にした」と語る。
琉球石灰岩を用いた玄関を入ると、和室が二間続いている。一番座、二番座のある造りは沖縄の古民家的だが、仕切りは取り払った。さらに、天井板を撤去した最大約5㍍の天井高は、古民家には無い開放感だ。「ここは一番こだわった部分。工事や配線の処理は大変だった」。苦労のかいあり、「玄関を開けた瞬間、皆さん感動される」と話す。
むき出しになった梁は宮里さん自ら黒く塗装した。柱も同じ色に塗装し、外観と同じく和モダンな雰囲気。「そこにゴテゴテと沖縄のものを飾ると、やぼったくなってしまう。やり過ぎ無いように心がけた」。そっと壁に飾られたクバ笠や、明かり取りの青いガラス窓がさりげなく彩りを添える。
以前は「裏座」として表と分断されていた台所も壁を一部取り払い、顔が見えるようにした=3。「家族みんなが伸び伸びと過ごせるよう配慮した」
アジア圏の人々は家族・親戚まで同じ部屋に宿泊したがることも多い。そういった「大家族のだんらん」もかなう空間を目指した。
リノベしても「味」は残す
古民家をリノベーションするにあたり、建材の「味」を残すことも意識した。柱や梁はなるべく既存を生かし、新たに設置した柱も同物件で不要になった木材を利用。レトロなすりガラスも残した=6。
また、「和室の畳は変えたけれど、ダイニングの床は既存を生かしている」。磨いてニスを塗り直したが、傷やへこみはそのままだ。見た目や足の感触から、おばあちゃんの家に遊びに来たような感覚になる。
「そう言ってもらえるとうれしい。やんばるにあった祖母の家は、瓦屋根の古い家で、幼心に『なんかいいなぁ』と憧れていた。コンドミニアムを手掛けるにあたって古民家のリノベを選んだのは、その憧れを形にしたいという気持ちもあった。生まれ変わらせても温かみは残そうと思っていた」と話す。
宮里さんがコンドミニアムを手掛けるのは2棟目。経験を生かした工夫も随所に光る。例えば、「壁の足元は傷つきやすいのでフローリング材を張っている。クロスより衝撃に強いし、部分的な補修もできる」。脱衣所のドア上部はルーバーを設けて換気に配慮した=5。
「空間造りにおいて、大事なのはバランス。機能性とデザイン性だったり、懐かしさと目新しさだったり。その調和を重視したのが和風邸。県内の方にもぜひ利用してもらいたい」と話した。宿泊に関しての問い合わせは電話098-959-2303(宮里)
▲1.写真右側が玄関。室内に入ると、二間続きの和室とダイニング、キッチンまで見渡せる。天井板を取り払った最大約5メートルの天井はインパクト大。縦横の広がりで開放感たっぷりだ
▲2外観。足元に黒く塗装した板を貼り日本家屋風にした
空間コンセプト「和テイスト」
仕切り・天井取り開放的に
沖縄市にある「和風邸okinawa city」は、築50年余の沖縄古民家を「和風」にリノベーションした一棟貸しのコンドミニアムだ。
真っ白な外壁と、その足元には焼杉をイメージした黒い板が貼られている=写真2。
「和風邸」の名の通り、日本家屋のような雰囲気だ。オーナーで同物件のプロデュースも手掛けた宮里学さんは、「海外の観光客も想定して空間作りをした。特にアジアの方々にとって沖縄は最も近い日本。だから〝和〟を前面に出して〝琉〟はさりげなく散りばめる程度にした」と語る。
琉球石灰岩を用いた玄関を入ると、和室が二間続いている。一番座、二番座のある造りは沖縄の古民家的だが、仕切りは取り払った。さらに、天井板を撤去した最大約5㍍の天井高は、古民家には無い開放感だ。「ここは一番こだわった部分。工事や配線の処理は大変だった」。苦労のかいあり、「玄関を開けた瞬間、皆さん感動される」と話す。
むき出しになった梁は宮里さん自ら黒く塗装した。柱も同じ色に塗装し、外観と同じく和モダンな雰囲気。「そこにゴテゴテと沖縄のものを飾ると、やぼったくなってしまう。やり過ぎ無いように心がけた」。そっと壁に飾られたクバ笠や、明かり取りの青いガラス窓がさりげなく彩りを添える。
以前は「裏座」として表と分断されていた台所も壁を一部取り払い、顔が見えるようにした=3。「家族みんなが伸び伸びと過ごせるよう配慮した」
アジア圏の人々は家族・親戚まで同じ部屋に宿泊したがることも多い。そういった「大家族のだんらん」もかなう空間を目指した。
リノベしても「味」は残す
古民家をリノベーションするにあたり、建材の「味」を残すことも意識した。柱や梁はなるべく既存を生かし、新たに設置した柱も同物件で不要になった木材を利用。レトロなすりガラスも残した=6。
また、「和室の畳は変えたけれど、ダイニングの床は既存を生かしている」。磨いてニスを塗り直したが、傷やへこみはそのままだ。見た目や足の感触から、おばあちゃんの家に遊びに来たような感覚になる。
「そう言ってもらえるとうれしい。やんばるにあった祖母の家は、瓦屋根の古い家で、幼心に『なんかいいなぁ』と憧れていた。コンドミニアムを手掛けるにあたって古民家のリノベを選んだのは、その憧れを形にしたいという気持ちもあった。生まれ変わらせても温かみは残そうと思っていた」と話す。
宮里さんがコンドミニアムを手掛けるのは2棟目。経験を生かした工夫も随所に光る。例えば、「壁の足元は傷つきやすいのでフローリング材を張っている。クロスより衝撃に強いし、部分的な補修もできる」。脱衣所のドア上部はルーバーを設けて換気に配慮した=5。
「空間造りにおいて、大事なのはバランス。機能性とデザイン性だったり、懐かしさと目新しさだったり。その調和を重視したのが和風邸。県内の方にもぜひ利用してもらいたい」と話した。宿泊に関しての問い合わせは電話098-959-2303(宮里)
▲1.写真右側が玄関。室内に入ると、二間続きの和室とダイニング、キッチンまで見渡せる。天井板を取り払った最大約5メートルの天井はインパクト大。縦横の広がりで開放感たっぷりだ
▲2外観。足元に黒く塗装した板を貼り日本家屋風にした
▲3.ダイニングは既存の床を生かしている。その隣にある台所は、表座から顔が見えるよう壁を一部撤去した
▲4.琉球石灰岩を用いた玄関。ここにも和の要素と琉の要素が共存する
▲5新設した洗面脱衣所。明かり取りの青い窓が効いている。ドア上部には換気用のルーバーも設けた
▲6.柱や梁は既存を使用。レトロなすりガラスもそのまま利用した。懐かしい雰囲気が和風邸にマッチしている
▲7.間取りは、もともとの造りから大きくは変更していない。「トイレやシャワー室を二つずつ新設したくらい」。壁や天井を取り払うことで、細切れだった空間を開放的に生まれ変わらせた
取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1760号・2019年9月27日紙面から掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。