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2022年6月17日更新

[沖縄]木陰生むような剪定を| 最近、目につく街路樹の姿|街中のみどり③

文・写真/武田慶信

舎でも街でも、道路沿いに街路樹のある風景が当たり前になっている。

木陰のない道路の場合、夏場に直射日光が当たると、表面温度は50度を超えることもあり、逃げ出したくなる。逆に、緑豊かな街路樹による木陰がある路面は、木陰がない道路に比べて表面温度が20度も低くなり、心地よく感じる。さらに、街路樹の樹冠(枝葉の広がり)が大きいと、生理的・心理的ストレスが緩和されることも分かっている。
 

強剪定で哀れな姿に

「道路構造令」という政令では、自動車や歩行者の安全を守るため、道路上に一定の空間を確保する「建築限界」を定めている。一般的には、車道側は高さ4.5メートル、歩道側は高さ2.5メートルとされており、街路樹がその範囲内に枝を伸ばさないよう制限している。

ところが、この建築限界を大幅に超えて枝を伐採(強剪定(せんてい))している例が最近多い。

例えば、名護市宇茂佐、国道449号のビロウヤシ。哀れな姿に驚き、管理する北部土木事務所に連絡すると、担当者も理解してくれ、剪定方法を再考してもらえることになった。

また、名護市宮里にある公園では、樹高10メートル、幹の直径70センチの古い大木が根元から惜しげもなく切り払われた。なぜ伐採したのか。樹齢40年以上の立派な樹木を材木として何かに利用したのだろうか。しかし、街の魅力をつくる公園の樹木を、材木として利用することは許されないのではないか。



名護市宮里、ロケット公園のシンボルツリーだったセンダンの大木は、大きな木陰をつくり、子どもたちに愛されていた=写真(1)。しかし2~3カ月前、枝が剪定された=(2)。そしてつい最近、太い幹まで切断された=(3)

街路樹への行政の意識高めて

街路樹の価値が軽んじられるのは悲しい。街路樹として、どの樹木をどう植えて、どのように管理するか、一貫した行政の理念が求められている。

昨年出版された小冊子「街路樹は問いかける」によると、50年前には「人命と緑のどちらが大切か」という言葉で、車道や歩道で通行を邪魔する樹木を、景観・木陰などを考えずにどんどん伐採した時期があったという。今でも街路樹管理者からそれに近い弁解がましい話を聞くことがある。安易な「ぶつ切り剪定」ではなく、何の木か分かるような、木陰を生む「整枝剪定」をしてもらいたい。景観や自然環境の保全が重視される時代、街路樹に関しては行政の姿勢が重要となっている。
 たかが街路樹、されど街路樹。皆で一緒に街の緑を見直したい。
 


名護市宇茂佐、国道沿いのビロウヤシ


2カ月ほど前に強剪定された様子


北中城村石平の強剪定されたガジュマル


浦添市大平の強剪定されたホウオウボク


執筆者
武田・よしのぶ/1943年、奄美大島生まれ。造園家。82年、県緑化市民センター設立参画。87年、オリオンビール花の国際交流熱帯花木130万本育苗配布参画など。

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1902号・2022年6月17
日紙面から掲載

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