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2022年5月27日更新

天空の社に続く祈りの道|末吉宮(那覇市首里末吉町)|絵になる風景②

「風土に根差した建築」を目指して設計活動を続ける山城東雄さんが、建築家の目で切り取った風景を絵と文章でつづります。(題字・画・文/山城東雄)

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「祈りへの道」P80号

首里城をはじめとした世界遺産の数々に見られるように、沖縄には世界に誇る石造文化が根づいている。

30年ほど前、イタリアの山岳都市を見る建築ツアーに参加し、そこで見た緩やかな石畳の階段のつくりが、上の絵にあるような沖縄のものとそっくりなのに驚かされた。

沖縄の石造技術がヨーロッパから伝播(でんぱ)したのではと感じた。その後、この末吉宮を描いてみたくなり早朝に訪れた印象を描いた。

末吉宮は、尚泰久王の時代(1456年頃)に天界寺鶴翁和尚が、熊野三所権現を勧請(かんじょう)(※)し祭ったと伝えられる。戦前、昭和11年(1936年)には旧国宝に指定されたという。末吉の一大聖域の中、首里王府から特別な待遇を受ける「琉球八社」の一社として祭られ、戦禍で焼失したものの、戦後再建されている。

この石段を上るとさらに立派な石造階段があり、高くそびえる朱色の木造の社(やしろ)へと導く。京の清水寺のようにかなり下から列柱が持ち上げる建築手法は沖縄では他に例を見ない。天空の社のイメージである。

外殻は自然の岩の上に石垣を積み上げており、先人の石工の技術の素晴らしさ、息吹が感じられる。

このお社は末吉公園の最上部にあり、うっそうと茂った森の中、静謐(せいひつ)な空間で祈りをささげる人が時々訪れる。沖縄は石の文化を持った祈りの島なのだと改めて思えてくる。

そこで詠んだ句が、
「春暁や祈りへ続く石畳」


(※)勧請…神仏の分霊を他の地に移して祭ること


次回は落水荘(アメリカ・ペンシルベニア州)を紹介したい。




[執筆者]
やましろ・あずまお/1944年、竹富町小浜島出身。沖縄工業高校建築科卒業後、建築設計会社での勤務を経て、34歳の時に東設計工房を設立して独立。一級建築士。JIA登録建築家。(株)東設計工房代表取締役。(一社)おきなわ離島応援団代表理事。著書に「沖縄の瓦はなぜ赤いのか」がある。

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1899号・2022年5月27日紙面から掲載

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