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2022年6月24日更新
川床に浮かぶライトの傑作|落水荘(アメリカ、ペンシルベニア)|絵になる風景③
「風土に根差した建築」を目指して設計活動を続ける山城東雄さんが、建築家の目で切り取った風景を絵と文章でつづります。(画・文・俳句/山城東雄)
落水荘:画/山城東雄
1988年初夏に、東京の旅行社がライトツアーとして募集をしていたものに応募。参加者は全国から私を含めた4人だけだったが、それでもライト通の社長が、「初回だから必ず実行する」ということで自ら引率してくれた。ありがたくも、5人が車1台で動き回り、ロサンゼルスからニューヨークまでライトの建築だけを見て歩く濃厚なツアーであった。
フランク・ロイド・ライト(1867~1959年)は、91歳で亡くなるまで膨大な数の作品を描き上げた建築家。日本にも旧帝国ホテルや自由学園など彼の作品がある。ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエと並び、近代建築の三大巨匠と呼ばれていた。
ライトはアメリカ人としては珍しく老子に学び、有機的建築を提唱、生涯にわたって造り続けた。その中で、私はこの落水荘が代表的存在だと思っている。
この建築には逸話がある。百貨店オーナーの別荘として1936年に建てられたが、もともとオーナーは川を見下ろす所に造るようライトに命じていた。しかしライトは川と一体になる建築を主張。互いに譲らないまま2年ほどたち、ようやくオーナーが折れて実現したという。それが今や世界的名建築となっている。
川床にせり出す大きなキャンティレバー(片側だけで床を支える構造)、透明度の高い大きなガラスから見る緑の風景や、室内にいると水音が心地よく響き、まさに自然と一体になった建築を体感した。その時の感動が忘れられなくてこの絵を描いてみた。
そして詠んだ句が、
ライトの思いも深き水音か
[執筆者]
やましろ・あずまお/1944年、竹富町小浜島出身。沖縄工業高校建築科卒業後、建築設計会社での勤務を経て、34歳の時に東設計工房を設立して独立。一級建築士。JIA登録建築家。(株)東設計工房代表取締役。(一社)おきなわ離島応援団代表理事。著書に「沖縄の瓦はなぜ赤いのか」がある。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1903号・2022年6月24日紙面から掲載