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2022年5月13日更新

[沖縄]景観芸術から精神性に触れる|琉球風水からひもとく Lily's スペースジャーニー②

沖縄の離島の集落で風水が息づいていると感じたのは、どの家も南向きであることに気づいた時です。集落の周りをぐるりと見わたすと、集落全体が山に抱かれて南を向き、前方には海がありました。個人宅でなく「集落」に風水を感じた時、「国家レベルで風水が取り入れられたのでは」と直感が働きました。人生で忘れもしない感動を味わったひとときでもあります。

集落の風水を風景からひもとく

景観芸術から精神性に触れる

誰もが当たり前に、南向きの好立地で住むことができるように設計された「風水集落」。一体どのようにしたらできるのでしょうか。琉球王朝の国家政策には、思想の軸がありました。自然と調和する「風水思想」です。現在残されている風水集落は、自然の恵みに対する感謝の気持ちが何より大切とされた時代からの贈り物なのです。

沖縄の風水集落は、芸術作品であり、大切な有形資産です。そして、この景観芸術の根底に流れる風水思想は、沖縄に残る無形資産です。風水集落に訪れる人は、その景観の中で、自然との調和を大切にした先人の美意識に触れることができます。芸術作品の精神性に触れることは、人生を変えるほどのインパクトをもった価値のある体験です。

この大切な有形資産と無形資産を次世代につなぐためには、私たちはどうしたらいいでしょうか。あなたが住み続けたい街は、どんな街ですか。王朝時代の風水師になった気持ちで、誰もが当たり前に幸せに暮らせる街とはどんな街か、考えてみましょう。
 

地球宝石

山を背中にして、前方に海を望む。北側にある山を背中に、南を向いた集落の前面には洋々たる海。
山を背中にして、前方に海を望む。北側にある山を背中に、南を向いた集落の前面には洋々たる海。夏は涼しい海風が前方から流れ込み、冬の厳しい北風は山によってさえぎられる。集落はまるで両腕に抱かれているよう。心地よい光や風を取り込む機能性だけでなく、「抱き護(まも)る世界観」があることで、精神的な安心感ももたらされる。中国で風水術が最高レベルに達した清の時代に、最新の知識と技術が伝わった琉球王国(18〜19世紀)。国家政策レベルで造られた伝統集落は、世界的にも貴重な存在。景観破壊が進む中、誇り高く守っていきたい地球の宝石である。


技術に依存しない街づくり

竹富島の集落
竹富島の集落=写真=がそうであるように、統一感のある美しい街並みをよく見てみると、都市計画レベルでどの家も南側に向くように設計されている。全ての家が、太陽の光と夏の涼風という自然のギフトを受け取れるようにとの思いが込められているようだ。一方、現代の日本の住宅事情では、それぞれの住宅は正面の道を挟み向かい合っている。「南向き」の家があるとすれば、道路を挟んで向かいにある家は「北向き」である。北向きで暗ければ照明を明るくすればいいし、寒ければエアコンをつければいい。それだけのことかもしれないが、現代技術への依存でもある。自然と調和することで暮らしを快適にしてきた先人のスピリットを、現代の街づくりに生かせないのだろうか。


観光の主役に

竹富島の集落内の道
竹富島の集落内の道は、ゆるやかにカーブを描いている=写真。風水では直進して速いスピードで進むエネルギーを悪い氣と考え、直線を避け曲線を描く。周囲を山やフクギなどの木々に守られている効果と相まって、風のスピードが抑えられ穏やかな氣の流れになる。風水集落の中は、海風が強く吹いていても気づかないほど心地よい。集落を歩く時は、道のラインと風の心地よさに意識を向けてみて。観光客も、地域に住む人も、今までの価値観と違う視点で集落を歩けば、新しい発見ができる。何げない風景の中に新たな価値観が生まれれば、集落も新たな役割を担う。琉球風水の思想に触れられる集落は、観光の主役にもなりうるのではないか。

執筆者 とうどう・りり(Lily)/建築士と連携し、新築住宅の間取りからインテリアまでトータルで風水設計を行う。王朝時代の伝統風水術を現代住宅に適用するため、風水空間プロデュースの手法を体系化した。ロンジェ®琉球風水アカデミー学長。
執筆者
とうどう・りり(Lily)/建築士と連携し、新築住宅の間取りからインテリアまでトータルで風水設計を行う。王朝時代の伝統風水術を現代住宅に適用するため、風水空間プロデュースの手法を体系化した。ロンジェ®琉球風水アカデミー学長。


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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1897号・2022年5月13日紙面から掲載

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