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2021年6月11日更新
[沖縄・移住]暮らしをサイズダウン シニアから楽しむ沖縄移住[3]
[文・写真/青木 容子]
60代後半で沖縄に移住した青木容子さん。本連載は、青木さんが移住に伴って、資産整理や断捨離などの暮らしをサイズダウンした経験と、沖縄で生活する中での楽しみを紹介します。
賃貸暮らし 見据えて断捨離
母親が持っていた、青木さんの幼少期の写真。クリアファイルに入れ直して保管している
単身引っ越し程度の荷物
富士宮市の自宅とギャラリーの売却が決まったのが2016年2月。それから実際に引き渡す9月までの半年間で、本格的に断捨離に取り組みました。とはいえ、9月いっぱいまで毎月、企画展も決まっていたので、これまで通り仕事をしながらということになりました。
移住後は賃貸暮らしになるため、これまでよりは狭い家に住むことになるのは分かっていました。もともと夫も私も私物は少ない方でしたが、それでも本当に必要であろうもの、どうしても手放したくないものに絞り、単身引っ越し用カーゴ(高さ2㍍、広さ1平方㍍)一つ分と私たちの車に載るだけの量まで減らす計画で整理し始めました。
振り返ってみて、失敗したなぁと思うのは、衣類の整理。沖縄なら冬もそう寒くないだろうと、厚手のコートやジャンパー類はほとんど処分しました。ところが、実際に移住すると、1年目の冬は全く寒くなかったのですが、2年目から寒さを感じるようになり、先に移住していた友人から言われていた通りになりました。
母の日に息子が手作りしたコラージュ写真。
お金では買えない、思い入れの深いプレゼントなどは手放せなかった
思い出は記憶に残る分だけ
食器は日々使うものなので、本当に気に入っているものだけを残し、人にあげたり捨てたりして、早く片付きました。家具や道具、ギャラリーの備品などは「持って行きたいもの以外はそのままでお願いします」という引き取り手の申し出を受け、ほとんどそのままにしてきました。飾りになっていた空き瓶やキッチン用品なども処分せずに済み、とてもありがたいことでした。
思い出は記憶に残っている分だけで良し。けっこうな量があった写真は、家族のものを息子たちに振り分けて引き取ってもらいました。
一方で、最も処分に悩んだのが「本」でした。夫の舞台関係の本や資料、アート関係、写真集、カタログ、雑誌…など。1冊ずつ見始めると迷いが生じます。そのまま束ねて古紙に出すのもしのびない。そこで、ギャラリーに積み上げ、1冊100円で引き取ってもらうことにしました。とても喜ばれながら次の持ち主の元へと手渡されました。
こうしてギャラリー営業の合間に少しずつ片付け、最終営業日から1週間で最後の掃除を休みなくやり、約束通り9月末に鍵をお渡し。計画通り最小限の家財と共に、仮住まいの富士宮市内のアパートに引っ越しました。この時点では、沖縄で住む家はまだ決まっていませんでしたが、不思議と不安はありませんでした。
旅行先や夫の海外公演先などで購入したカップ、お気に入りの作家の器など、食器は本当に気に入っているものだけに厳選。日々使うものの中に思い出が詰まっている
あおき・ようこ/1948年、長崎市生まれ。夫・嘉一郎とともに、90年から静岡県富士宮市で企画アートギャラリー「芸術空間あおき」を経営。2016年に沖縄移住し、北中城村瑞慶覧のカフェ「沖縄物語」内でアートショップを営む。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1848号・2021年6月11日紙面から掲載