防災
2021年5月7日更新
自分たちで避難所を運営するために②「施設管理班」|みんなの防災計画[25]
文・長堂政美
避難者自身による避難所運営は、八つの班や役割によって構成される。今回は、発災後すぐに避難所の施設や設備の点検・修理をしたり、避難所設営後に避難所内の環境を整える「施設管理班」について紹介する。
施設点検し 安全守る
避難所の環境改善も名簿生かし協力依頼
大規模な災害が発生し、避難者が避難所を運営する際、最初に編成する班として、前号(1839号、4月2日発行)では避難者の数や個人情報を把握する「名簿班」を紹介しました。
続いて紹介するのは「施設管理班」です。まず、発災当初の大きな役割として、避難所の施設や設備が安全に使えるかどうか点検したり、修理をします。専門知識が必要な場面もあるため、そのような知識を持った避難者がいれば積極的に施設管理班として協力してもらいましょう。
例えば、電気工事業者(電気設備の点検・修理)、水道工事業者(水道施設の点検・修理)、ガス事業者(ガス器具の点検・提供)、大工(施設の修理)、建築士(建物の倒壊度判定)など。
名簿班が受付で名簿を作る際に職業も確認しておくと、メンバーを集めるのがスムーズになります。
点検する中でポイントとなるのがトイレ。避難者だけでなく、災害対応従事者などさまざまな人が使います。地震の揺れで地中の水道管が折れるなど、ライフラインそのものの機能が停止した場合は、「排尿・排便場所の確保」「排せつ物の処理」など、代わりの手段を確保しなければなりません。
普段から、災害用トイレの確保と保管について地域で十分に協議し、目安として男性用1個に対して女性用3個のトイレを確保できるよう備蓄や整備を進めてください。障がい者や女性の意見もしっかり取り入れ、全ての避難者が安心して利用できるようにしましょう。
花で心休める空間
施設が安全に使える状態であることが分かれば、自治会や自主防災組織の会長・役員などを中心に、避難者みんなでパーテーションを作るなど設営をします。設営が終わると、施設管理班は避難所内の環境をより快適になるよう整えたり、防犯などに努めます。
例えば、寝る環境。最初は毛布を確保したり、通気を促したりして、寒さや暑さの緩和に努めましょう。次いで、物資班(7月に紹介予定)と協力しながらマットや段ボールなどを集め、ベッドの導入を目指します。エコノミークラス症候群や、床近くのほこりなどによる健康被害を防ぎます。
ある程度落ち着いてきたら、施設管理班のメンバーとして、生け花が得意な人や保育士などに入ってもらうのもいいでしょう。花で心が休まる空間を設けたり、キッズスペースの設置などに活躍してくれるはずです。
避難者一人一人ができることを生かし、みんなにとって過ごしやすい避難所にしていくことが大切です。
■施設管理班は何をする?
発災直後
施設や設備の点検・修理
避難所を設営する前に、施設や設備が安全に使えるかどうか確認する。余震で被害を受けることもあるので、定期的な確認が必要。危険だと判断された場合は、その場所を立ち入り禁止にする。
避難所を設営した後
施設内の環境改善
毛布を集めたり、通気を促したりして、暑さや寒さの緩和に努める。障がい者や高齢者などの要配慮者を優先しながら、寝る場所やトイレなどの環境を改善する。ストレス軽減のため、花や音楽、キッズスペースの確保など、心休まる空間づくりにも努める。
防犯・防災の呼びかけなど
巡回や掲示板などにより、女性や子どもが人目のつかない場所やトイレなどに1人で行かないよう注意喚起。窃盗防止のため、警察官の巡回を依頼したり、部外者の立ち入りを制限する。屋外の定められた場所のみ喫煙を許可するなど、火気厳禁を徹底する。
■施設管理班 こんな人が向いている!(一例)
発災直後
各種工事業者、大工、建築士
避難所を設営した後
生け花が得意な人、保育士
ながどう・まさみ/NPO法人防災サポート沖縄理事長、元沖縄市消防長
☎098・923・4442
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1844号・2021年5月7日紙面から掲載