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2025年3月14日更新
補修・改修の一歩は現状把握から|知っておきたい!補修・改修のキホン⑫
今ある家に住み続けるには定期的なメンテナンスが欠かせない。が、何から手をつけていいか分からない人も多いのでは? 外装を中心に建物全般の補修改修を手掛けるタイズリフォームの赤嶺雄一郎さんに、ポイントを解説してもらう。今回は全11回の連載を振り返る。

文・赤嶺雄一郎 (株)タイズリフォーム代表取締役
補修・改修の一歩は現状把握から
家主自ら建物をチェック年が明けて、もう3月になりました。三寒四温の言葉通り、寒さと温かさが入り交じる毎日ですが、読者の皆さまはいかがお過ごしでしょうか。昨年4月からスタートした本連載も早いもので1年を迎えました。そこで、最終回の今回は過去に掲載した全11回の内容を振り返ってみたいと思います。
4月の連載では「補修や改修工事を実施する必要性は理解できるが、何から手を付けて良いか分からない」とのご意見に対して、建物の各部位のセルフチェック手法を取り上げました=表1。建物や設備は必ず劣化しますが、その進行や状況は部位や部材によりさまざまであるため、まず「家主自ら建物の現況をセルフチェックで把握すること」が必要です。
梅雨直前の5月は建物の劣化や漏水事故に直結する部位=下写真=についてより具体的なチェック方法をお伝えしました。
■表1

セルフチェック表の例。確認しておくべき重点箇所や各部位の修繕周期を知ることで、適正なチェックが可能。ほかの重点箇所は下のURLを参照
https://sumai.okinawatimes.co.jp/commons/renovation/detail/21297
2024年4月12日に掲載した「セルフチェックのすすめ」の記事

シーリング材(赤丸部)が劣化すると、漏水事故などにつながる

鉄筋の膨張で屋根裏に剥落したコンクリート
足場組んだら各種工事も
6月は原則、高額な足場を組んだ際にしか施工ができないバルコニー内の工事内容や各種修繕の概算費用について。同じく10月も、足場を組んだ際にのみメンテナンスが可能な高所に設置された各種設備配管(給水・給湯・排水・ガス)の種類と劣化の具体例、そしてこれらの工事を同時に実施することで、建物の総修繕費(ライフサイクルコスト)の低減に大きく貢献することを解説しました。
「一式」の見積書は×
台風シーズンである7月は、どういう部位から浸水するのか、実際に漏水事故が発生した際に注意すべきことは何か、具体的な事例を紹介しました。外壁を貫通しているエアコンの配管穴、各種配管、換気口、防水コンセントや照明器具の隙間から浸水することを知った読者の皆さまから大きな反響をいただきました。
8月は、優良業者を選定するために必要な相見積もりを取得する際の注意事項を記しました。具体的には日々のセルフチェックで感じていることが提案されているか、一式見積もりではなく数量や工法・使用材料の工事仕様が詳細に記載されているか、電線保護管設置費やアスベスト事前調査費をはじめ法令上必要な項目が計上されているかなどが挙げられます。

仕様書に基づく見積書は工種や工事項目などが細分化され、詳細に記されている
施工の記録は必ず残す
9月は、「建物診断とその精度によって工事の成否がほぼ決まる」ことをお伝えしました。どんなに腕の良い職人さんが施工しても、そもそも計画が悪ければ良い工事になりません。また、トラブル防止のために書類で記録を残すこと、具体的には建物の現況や劣化の原因と対策などが記載された「調査報告書」や金額算出の基準となる「仕様書」を提出して貰うことは欠かせません。
11月は、人体に有害な水銀を含む蛍光灯が2027年末で国内生産および輸入が禁止になることやその対策と注意点について。12月は県内でも問題となっている老朽化したブロック塀問題、1月は県内でも近ごろ増えてきた木造建物のメンテナンス手法について解説しました。

ブロック塀のチェックポイント
駆け足で全11回の記事を振り返りましたが、実はまだまだ皆さまへお伝えしたいことが多々あります。そのため、本連載はもう1年間続けさせていただくことになりました。来月からシーズン2として、より有益な情報を発信していけるよう頑張ります! 引き続きよろしくお願い申し上げます。

【教えてくれた人】
あかみね・ゆういちろう/㈱タイズリフォーム代表。1級建築士、マンション維持修繕技術者、既存住宅状況調査技術者、宅地建物取引士
◆(株)タイズリフォーム
電話=098·975·7815
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2045号・2025年3月14日紙面から掲載