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2025年2月14日更新
保証書にアフター点検の記載を!|知っておきたい!補修・改修のキホン⑪
今ある家に住み続けるには定期的なメンテナンスが欠かせない。が、何から手をつけていいか分からない人も多いのでは? 外装を中心に建物全般の補修改修を手掛けるタイズリフォームの赤嶺雄一郎さんに、ポイントを解説してもらう。今回は工事完了後に不具合がないか確認するアフター点検について。

文・赤嶺雄一郎 (株)タイズリフォーム代表取締役
保証書にアフター点検の記載を!
アフター点検とは?
アフター点検(サービス)とは、主にマンションやビルなどの大規模修繕工事完了から一定年数が経過した後に、施工した部位が適切に機能しているか、新たな不具合が発生していないかを定期的に確認する目的で施工業者が無償で実施する点検のことを言います。業者によっては、一戸建て住宅でも実施されることがあります。
この点検サービスは、既存顧客の満足度を高めるだけでなく他社との差別化や施工品質、リピート率向上にも寄与するため、実施している業者も多く存在します。
「保証部位や項目」には特に注意
多くの施工業者は工事完了後に保証書を提出すると思います。これは、瑕疵(かし)保証の考えから発生したもので、瑕疵とは「欠陥」のことを指します。
天災地変や社会通念上不適と思われるものなどを除き、保証書があれば工事後の瑕疵について一定の保証を受けることが可能です。
しかし、保証書があれば全て安心だとは限りません。保証書には「保証部位」・「保証項目」・「保証年数」が明確に記載される必要があります。どの部位が保証の対象となるのか、どういった不具合に何年間保証するのか、明確に記載されていない場合は施工業者とトラブルになる場合があるため、十分な注意が必要です=表1。
■表1

保証対象となる部位・項目・年数・無償アフター点検の実施時期や免責事項が記載されている保証書の例。アフター点検についての記載がない場合、施工業者による自主的な実施は曖昧なものとなる場合が多い
アフター点検は任意で実施される
以前施工を依頼した業者に対して施主から「不具合の指摘をしても対応してくれない」、「工事後は定期的に点検を実施すると言っていたのに全く来てくれない」などの不満を聞くことがあります。保証書を確認すると、先述した保証部位や項目の記載がない場合が多いですが、しっかりとした保証書である場合もあります。
これは、無償点検の実施が「担当者との口約束のみで、保証書に記載がない」ことが原因であると考えられます。このような場合は、施主がたまたま瑕疵を発見したことで補修実施に至る場合がほとんどです。軽微な瑕疵なら良いのですが、屋上や高所など施主が普段確認することができない部位の場合は、漏水事故など被害が甚大になってから瑕疵が発覚することも多く見られます。
そのため、施工業者による確実な無償アフター点検実施を希望される場合は双方協議の上、保証書などにその旨を書き加えておくことをお勧めします=表1赤字部。
点検結果の記録残す
アフター点検実施後、保証項目に該当する不具合が確認された場合は、補修工事を実施することになります=写真2。
先述した通り、屋上や高所は危険なため施主による確認が困難な場合があります。このような部位の現況や補修工事の内容を正確に把握するためにも、工事完了後には「アフター点検報告書」を提出して貰いましょう=写真3。
また、建物全体の現況を把握するため、不具合のなかった良好部位や新たに気付いた点も記録に残しておくと理想的です。
修繕工事は一度実施すれば終わりというものではありません。アフター点検やセルフチェックを定期的に実施することで、建物の現況を正確に把握し、次期修繕工事の計画案につなげていくことが大切です。
■写真2

屋上の打ち放しコンクリート外壁と防水塗装面との境界に発生した塗膜の剥がれ補修例。以前と同じ工法・仕様で補修工事を実施
■写真3

2階建ての一戸建て住宅のアフター点検報告書の例。撮影部位、現状、対応の報告だけではなく、点検時に気付いたことも記録している

【教えてくれた人】
あかみね・ゆういちろう/㈱タイズリフォーム代表。1級建築士、マンション維持修繕技術者、既存住宅状況調査技術者、宅地建物取引士
◆(株)タイズリフォーム
電話=098·975·7815
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2041号・2025年2月14日紙面から掲載