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2024年9月13日更新

工事の出来は計画でほぼ決まる|知っておきたい!補修・改修のキホン⑥

今ある家に住み続けるには定期的なメンテナンスが欠かせない。が、何から手をつけていいか分からない人も多いのでは? 外装を中心に建物全般の補修改修を手掛けるタイズリフォームの赤嶺雄一郎さんに、ポイントを解説してもらう。6回目は、修繕設計の重要性について。


文・赤嶺雄一郎 ㈱タイズリフォーム代表取締役


工事の出来は計画でほぼ決まる

修繕設計とは「劣化した建物に対し、調査依頼された業者が修繕工事の計画と仕様書を作成する」ことです。工事のおおよその金額を算出するのに大きく関わるだけでなく、分譲マンションなどの大規模修繕工事から、一戸建ての外壁塗装・屋上防水工事や小範囲の補修工事、内装リフォーム工事まで、建物の工事に関する計画全般が対象となります。

この修繕設計の良しあしは新築やリフォーム、工事の規模を問わず、工事の内容や出来栄えに大きく影響します。
 
調査は有償も

修繕設計を行う前に、まず建物の調査診断を実施します。目的は「建物の現況と劣化の原因を明確にし、修繕方法や今後の劣化予防策などを検証すること」です。

健康診断や人間ドックと似ていますね。面白いのは、築年数が同じくらいの建物でも、新築時の仕様や工法、立地や建物の向き、メンテナンスをしているか否かで、劣化の程度が変わることです。現在多くの業者がこの調査診断を無償で行っていますが、事前に無償か有償かの確認をとっておきましょう。

建物は一つ一つ状況が違い、劣化の程度もさまざまです。「今後その建物をどのような状態で、どのくらいの期間維持したいのか」によっても、提案内容は多様に変化します。分譲マンションや商業施設といった大型建築物の場合、調査や報告書の作成に多大な労力が必要になるため、有償になることも珍しくありません。

また、漏水事故などで原因箇所を特定する際、水をまいて侵入経路を特定する散水試験などを行うこともあり、有償となる場合があります。これも事前に確認を取るようにしましょう。


■打診調査
打診棒で壁面をたたきながら調査している様子。写真は日当たりの悪い北面外壁の著しい汚損例。多くの場合、南西面は紫外線による変色、日射熱によるひび割れやモルタルの浮きが多い

調査報告書で安心

写真や資料などが記載された調査報告書は、専門的かつ難解な見積書の理解を助けてくれるだけでなく、双方の認識のズレを防ぐ効果があります。そのため、工事の提案を受ける際には調査報告書を提出してもらうことをお勧めします。

報告書には、「劣化の原因と対策」「セルフチェックした項目や希望する工事内容の有無」「費用対効果に優れた提案か」などが記載されているかをチェックしましょう。


■調査報告書
建物の現況と提案内容が対比形式で記載されている報告書の例。難解な専門用語にはイラストや写真を使用した解説も

仕様書で具体的に

工事仕様書とは「工事を注文するときに、その内容や実施方法を指示する書類」のこと。工事を受発注する際、工事請負契約書にこの仕様書を添付して契約書類の一部とします。

記載されているのは、使用する材料・部品・設備の規格・寸法などで、施工の手順書や検査の方法なども含まれます。あらかじめ見積りに添付されていたり、内訳書や特記事項・施工条件書の中で明記される場合もあります。

気を付けたいのは、こうした詳細な項目が記載されず、見積もりの段階で工事全体を一括りにして金額表示された「一式見積書・一式仕様書」の場合。これだと他社の見積もりと内容の比較ができないだけでなく、工事中や工事後にさまざまなトラブルに発展してしまう可能性が高くなるからです。

これらの書類の添付や記載がされない場合は、しっかりと内容を説明してもらい、そのやりとりをメモに残しておくようにしましょう。


■仕様書に基づく見積書
仕様書に基づき工種や工事項目が細分化されて明記されている見積書の例。施工内容の変更などにも柔軟に対応が可能
 
 


【教えてくれた人】
あかみね・ゆういちろう/㈱タイズリフォーム代表。1級建築士、マンション維持修繕技術者、既存住宅状況調査技術者、宅地建物取引士

◆㈱タイズリフォーム
電話=098·975·7815

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2019号・2024年09月13日紙面から掲載

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