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2023年6月16日更新

晴天時も垂れる水滴|インスペクションで解明 住まいのミステリー 第3話(リビング天井)

文・下地鉄郎(インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)

住宅の劣化状態などを調査して報告する「インスペクション(建物診断)」。今回は、リビングの天井から垂れてくる水の出どころについて、インスペクション沖縄の下地鉄郎さんが調べていく。

 第3話(リビング天井) 

晴天時も垂れる水滴

 依頼内容 
築1年の2階建て鉄筋コンクリート住宅。建てて半年ほどたった頃、1階リビングの天井から水滴がわずかに垂れているのを発見。水滴が止まったと思ったら、忘れた頃にまた垂れてくる。この原因を調べてほしい。



 現場の特徴 
・1階リビング天井に水シミ。真上には浴室がある
・水分測定器は1階天井や天井裏、2階床下などでも反応
・2階浴室隣の洗面室には洗面台がある
・2階ベランダにはエアコンの室外機が設置されている
・2階は1階に比べて少しカビ臭い


1階リビングの天井裏。2階床スラブの穴から配線や配管が通る。奥には2階浴室からの配管も見える(下写真)


 い くつもの可能性

電話で依頼者にヒアリングすると「建設会社にみてもらったが、リビングに垂れる水滴の量が少なくて原因が特定できない」という。

依頼者によると、建設会社は外壁や屋上からの雨漏り以外に、リビングの真上にある浴室配管などからの漏水の可能性も考えた。そのため1階リビングの天井や2階浴室近くの床に点検口を設けたり、給水管の水圧試験なども行った。それでも原因が特定できなかったため、雨漏り対策としての防水工事にも踏み切れないそうだ。

その話を踏まえ、以下の仮説をたてて診断を行うこととした。

 仮説 
「外壁や屋上からの雨漏り」「浴室からの漏水」以外に、何らかの「結露水漏れ」などの可能性もある。


 怪 しい室外機

現地調査ではまず、水滴が垂れたリビング天井を確認。水滴はなかったが水シミの跡がある。水分測定器で確認するとわずかに湿っている反応もあった。配管類が通る天井裏でも水分測定器は反応。依頼者からは「入浴時や長雨の時だけでなく、晴れた日に水滴が垂れることもある」との話も聞けた。

2階浴室付近の床下を見ると、こちらもぬれた跡があり、水分測定器が反応。2階には、浴室隣の洗面台や、ベランダに設置されたエアコン室外機もある。よく見ると室外機近くの床タイルの目地が湿って変色している。エアコンから排出されるドレン水(結露水)の影響のようだ。ベランダ近くの床下には点検口が無く確認できないが、どうもこちらが怪しい。

はっきりさせようと浴室と洗面台で1時間ほど放水したが、1階天井裏から水滴は確認されなかった。この2カ所ではなさそうだ。続いてベランダだが、水が垂れた場所まで距離がありすぐに確認できないため、紫外線を当てると光る液体を、室外機付近に流れ出るドレン水に混ぜて様子を見ることにした。


 光 る痕跡

数日後訪れると、1階天井から水滴がわずかに垂れていた。紫外線ライトを当てると、水滴や天井裏の配管表面が発光。犯人はエアコンのドレン水だと特定できた。


紫外線により光る液体(右)。左は水

ドレン水は、タイル目地の隙間から、スラブ面と外壁との打ち継ぎ部を伝って2階床下に浸入。床下を通り抜け、浴室配管とスラブとの隙間から1階リビングに浸入してきたというわけだ=下図。

条件にもよるが、沖縄では夏場のエアコンのドレン水が、1時間に1㍑以上排出されることもある。原因不明の水漏れやカビ臭がある場合は、ドレン水を疑ってみてもいいだろう。




 解決策・アドバイス 

◆エアコン排水管をベランダの排水口まで延長させ、ドレン水がタイル敷きの床に流れないようにすることでほぼ解決する。

◆外壁や花壇のひび、浴室や洗面台からの漏れの可能性もゼロではない。上記の対策を行った上で、その後、水滴が垂れてこないか経過観察することも念のため必要。




しもじ・てつろう/一級建築士、(株)クロトン代表取締役
電話=098・877・9610


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1954号・2023年6月16日紙面から掲載

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