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2024年1月26日更新
1階天井 雨漏り跡の原因|インスペクションで解明 住まいのミステリー 第10話(築45年のRC造2階建て)
文・下地鉄郎(インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)
第10話「築45年のRC造2階建て」
1階天井 雨漏り跡の原因
依頼内容
築45年、2階建て、鉄筋コンクリート造住宅の建物の購入を考えている。1階の天井に雨漏り跡などがあるが、原因がよくわからない。購入にあたり、リフォームを考えているため、雨漏り跡の原因のほか、修繕の優先順位のアドバイスもほしい。
現場の特徴
・築45年。鉄筋コンクリート造2階建て
・1階の天井に雨漏り跡あり
・調査により、過去に2階を一部増築したことが分かった
1階天井の雨漏り跡にサーモカメラをかざすと温度変化があり、雨漏りが続いていることが確認できた
1階天井裏は、床スラブのコンクリートが割れて破片が散らばっていた
過 去の改修が関係か
建物の図面は見つからないとのことで、気になる部分の写真をメールで送ってもらいながら、電話で事前ヒアリング。1階天井の雨漏り跡については「過去の改修と関連しているのではないか」とのこと。
また、「これからリフォームするにあたり、修繕の優先順位についてのアドバイスもほしい」という依頼だった。
雨漏り跡の上部にあたる2階バルコニーは水たまりが確認された
バ ルコニーに水たまり
現地調査を開始。まず打診棒などで外壁面の劣化状況を把握する。建設後の全面的な塗装工事はしていないようだが、構造的な劣化につながるようなヒビは確認されなかった。
屋上や2階のバルコニーは過去に防水工事はなされているが、防水層の経年変化は感じられる。調査時には小雨が降っており、特にバルコニーには水たまりが確認された。水たまりの下は、相談のあった1階天井の雨漏り跡付近だ。
1階に下り、雨漏り跡のある天井向けにサーモカメラをかざすと温度変化が確認された。現在でも雨漏りは続いているようである。天井裏をみると、やはりバルコニーの水たまりがあった付近の下には雨漏り跡が見られた。一部ではバルコニーの床スラブが割れて、天井裏に散らばっている。
もう一度、バルコニーを観察したところ、どうも過去にその範囲の壁などを増築したようだ。その増築工事の際、室内に水がいかないよう勾配が造られ、防水塗装がなされている。しかし、もともとのバルコニーの勾配はそのままのため、谷間ができ水たまりができてしまったようだ。年数がたったことでバルコニーの防水層に目視では分からない切れ目や穴ができ、そこから水たまりの水が床スラブ内に侵入。鉄筋の酸化が進行しコンクリート片が落ちる爆裂(ばくれつ)現象にまでつながったと思われる。
防 水や水勾配の是正
過去の増築の際に追加した壁は構造的な配慮がなされており、爆裂の範囲も一部であったことから、スラブの補修工事はそれほど大がかりではなかった。
依頼主へは、購入後の全面的な塗装・防水工事をしながら、天井裏の爆裂補修、さらに雨漏りの原因でもあるバルコニー部分の勾配不良の是正の優先順位を高くしておいたほうがよいなどのアドバイスを行った。
解決策・アドバイス
◆全面的な塗装・防水工事とともに、天井裏の爆裂補修をする。
◆雨漏りの原因でもある2階バルコニーの水勾配不良の是正の優先順位は高くすること
しもじ・てつろう/一級建築士、(株)クロトン代表取締役
電話=098・877・9610
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1986号・2024年1月26日紙面から掲載