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2023年12月15日更新

一部の柱に集中するクラック|インスペクションで解明 住まいのミステリー 第9話(築55年のRC造3階建て)

文・下地鉄郎(インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)

住宅の劣化状態などを調査して報告する「インスペクション(建物診断)」。今回は一部の柱にだけ発生する大きなクラック(ひび)について、インスペクション沖縄の下地鉄郎さんが探っていく。

 

 第9話(築55年のRC造3階建て)

一部の柱に集中するクラック

 相談内容 
築55年、3階建て、鉄筋コンクリート造の空き家の購入を考えている。ただ、柱や外壁はクラックが目立ち、コンクリートスラブの爆裂現象もみられる。特に、一部の柱は縦に大きいクラックがあり不安。劣化箇所の補修や全面塗装などで済むものなのか知りたい。

 現場の特徴 

・築55年。鉄筋コンクリート造3階建て
・3階天井裏でコンクリートスラブが爆裂
・1階~3階の一部の柱にだけ大きなクラック

 

2階の室内。柱には大きなクラックが入っている。右側の柱はコンクリートがはがれて、中の鉄筋も見えている

2階の室内。柱には大きなクラックが入っている。右側の柱はコンクリートがはがれて、中の鉄筋も見えている


3階の天井裏。スラブや梁(はり)に爆裂が発生している
3階の天井裏。スラブや梁(はり)に爆裂が発生している




 10 年近く空き家状態

電話で状況を確認してみると、1階は店舗として賃貸中だが、外階段で上がる2・3階は10年近く空き家の状態だという。55年の間に何度かは改修工事をしたようだが、詳しい記録はないとのこと。

依頼主は「購入後は改修工事を考えており、劣化箇所の範囲や程度を知りたい。3階天井裏の爆裂は補修のめどがたっているが、どの階も一部の柱にだけ大きなクラックが見つかって不安なので、その原因も調べてほしい」と話した。

今回は建物の図面がないということもあり、大きなクラックについては仮説を立てずに現地調査に入ることにした。

屋上にある、鉄筋コンクリート造の水タンク

屋上にある、鉄筋コンクリート造の水タンク



 屋 上防水なく爆裂

現地調査では、柱と梁(はり)のサイズや間隔を記録しつつ、打診棒を用いて全面的に計測。全体的な劣化状況を把握していった。

屋上は防水がされておらず、水たまり跡もあった。屋上スラブの細かなクラックから長年にわたって雨水が浸入し、3階天井裏の爆裂につながったことが分かった。

ただ、一部の柱の大きなクラックは、3階だけでなく、2階と1階の柱にも同じように発生しており、屋上からの雨水浸入だけが原因ではないだろう。記録した柱の間隔や梁の形状から推測すると、構造的な建物自体の荷重の偏りでもないようだ。

再び原因を探索していると、クラックができた柱の上にある、鉄筋コンクリート造の水タンクが気になった。現在は使っていないということだが、コンクリート製のフタを開けてみたところ、フタ近くまで水がたまっていた。オーバーフロー配管がさびついて機能していないなか、フタの隙間から雨水が浸入していたようだ。


 

 超 重量の水タンク

調査結果から、屋上水タンクに規定を超える水が満たされ、その重量が3階から1階までの柱のクラックの主な原因だと判明した。

断水が多かった時代、沖縄の鉄筋コンクリート造の住宅は、屋上の水タンクも建物と同じ構造でつくるケースが多かった。

しかし、屋上の水タンク(特に鉄筋コンクリート造)は漏水のリスクがあるほか、点検・清掃や配管補修などの手間がかかることから、最近では公共水道への直結に変更し、水タンク自体を使用していないケースも多い。また、今回のようなケースもあるため、屋上に使用していない水タンクがある場合は、水が満杯になっていないかなど、念のため注意が必要だ。



 解決策・アドバイス 
◆排水バルブがさびて開かないので、「ポンプで水を抜く」「ドリル等で穴を開ける」などしてタンク内を空にする
◆タンク内の水が浸入してクラックを助長している可能性もあるため、屋上防水を施工する際には、屋上タンク内の防水も忘れずに




しもじ・てつろう/一級建築士、(株)クロトン代表取締役
電話=098・877・9610


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1980号・2023年12月15日紙面から掲載

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