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2023年12月8日更新

断熱+気密+高効率設備で省エネ|今ある家をバージョンアップ[38]

文・嘉手苅麗子/リノベーション協議会沖縄支部会員、RENOBEES((株)アーキラボ ラフィット)

case37「マンションでも断熱リノベ」

外からの熱の影響を受けにくくする「断熱」。しかし、年間を通して温暖で湿度の高い沖縄だと「断熱すると余計に湿気がたまりそう」「沖縄に断熱は必要ない」と思う方も多いのでは? 今回はマンションリノベの事例から、断熱について紹介します。
 

◆相談&課題
マンションのリノベーションを検討中。リノベで光熱費高騰の対策もできる?


内窓で外からの熱の影響防ぐ

今回はまず、既存の窓の内側にもう一枚、内窓を取り付けました=写真①。外気温の影響を最も受ける窓を2重にし、間にある空気層によって「断熱」することで、夏は外から日射熱が入るのを防ぎ、冬は室内から外に熱が逃げにくくなります。冷暖房も効きやすくなるので、設定温度の下げ過ぎや上げ過ぎも抑えられ、光熱費削減につながります。

簡単に断熱性を高められ費用対効果の高い内窓は、結露軽減や遮音効果、ガラスによってはUVカットなどのメリットもあります。

また、窓が付いている壁や共用廊下側の壁など、外部に接している壁の室内側には断熱材を施工=②。下階が住空間ではなく通路で、外気に触れるため床にも施工しました。

このときのポイントは、隙間なく施工し「気密性」を高めること。そうすることで、隙間からの熱の出入りがなくなり、断熱性能を上げられます。反対に気密性が低いと、冷暖房をかけても隙間風が入り、室温はどんどん外気に近づき、冷暖房の効きも悪くなって光熱費が上がってしまいます。

内窓を設けた開口部。2重の窓の間にある空気層で断熱し、外からの熱の影響を抑える
写真① 内窓を設けた開口部。2重の窓の間にある空気層で断熱し、外からの熱の影響を抑える

② 壁や床に断熱材を施工する様子。隙間なく施工することで気密性を高める写真② 壁や床に断熱材を施工する様子。隙間なく施工することで気密性を高める
 
省エネ性の高い高効率エアコン

続いて「高効率」エアコンを設置=③。これは、小さなエネルギーで大きな冷暖房能力を引き出せる、省エネ性の高い空調設備です。

今回は高効率のダクト式エアコン1台で、2LDKの全室を賄える全館空調を取り入れました。機器代金と電気代を合わせても、壁掛けエアコンを全室に入れて稼働させるより、計算上お得な結果になったからです。

全館空調は24時間稼働させるため、運転時の消費電力を気にされる方も多いですが、最も電気を使うのはエアコンの起動時。室温が設定温度に安定した後は、自動的に運転が制御され、消費電力はそれほど多くなりません。

全館空調のエアコン(写真右)と全熱交換型換気システム(左)。エアコンから出ているダクトで、各部屋に冷えた空気や暖めた空気を送る
写真③ 全館空調のエアコン(写真右)と全熱交換型換気システム(左)。エアコンから出ているダクトで、各部屋に冷えた空気や暖めた空気を送る


全熱交換型で快適に換気

断熱性や気密性を高めると室内温度は安定しますが、きちんと換気しなければハウスダストなど健康被害のリスクが高まります。24時間換気も義務付けられていますが、通常は外気をそのまま取り入れるため、夏ならせっかく効率よくエアコンで冷やした室内に熱い外気が入り、室内温度は上がることに。

そこで今回は全熱交換型換気システムを採用。外気を室内の温度や湿度に近づけながら換気できるため、室温が保ちやすく、強制的に空気の入れ替えもできます。

今回の事例では、国が推進する省エネ住宅の基準に近い、省エネリノベマンションとなりました。そして、気になっていた光熱費は、計算上だと年間約50%削減に。予算によって使用する資材や機器も変わりますし、同じ施工をしても家の状態などによっては理想通りにいかないこともあります。今回の場合も、物件の立地や構造などの条件に合わせ、改修前後の温熱計算をしながら必要な建材の選定を行いました。全てを取り入れるのではなく、できる範囲で省エネリノベを検討してみてはいかがでしょうか。




執筆者
かでかる・れいこ
リノベーション事業部「RENOBEES」で、デザイン・住み心地・価格のバランスを大切にしたリノベを提案中。電話=098・988・5128


■リノベーション協議会とは 消費者が安心して既存住宅を選べる市場をつくり、既存住宅の流通を活性化させることを目的とした団体。全国800社弱の企業などが参画している。
https://www.renovation.or.jp

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1979号・2023年12月8日紙面から掲載

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