リノベ
2022年9月9日更新
マンションリノベでも断熱できる?[今ある家をバージョンアップ(26)]
文・佐藤ともえ(リノベーション協議会沖縄支部 会員)
水回りが劣化してきたため、リノベーションの相談に来た夫妻。住まいは鉄筋コンクリート造のマンションで、部屋は南西向き、西側がバルコニーでした。話を聞いているうちに、西日の影響で夜になっても暑く、夏場は寝苦しいということが判明。そこでフルリノベーションを機に断熱を施しました。今回はこの事例をもとに、マンションのリノベ時における断熱のポイントを紹介します。
case26
「マンションにおける暑さ対策」
◆相談&課題南西向きのマンションに住んでいるが、西日の影響で暑い。
◆リノベのプロが提案!
フルリノベを機に内断熱。外の熱を室内に伝えないようにする。
水回りが劣化してきたため、リノベーションの相談に来た夫妻。住まいは鉄筋コンクリート造のマンションで、部屋は南西向き、西側がバルコニーでした。話を聞いているうちに、西日の影響で夜になっても暑く、夏場は寝苦しいということが判明。そこでフルリノベーションを機に断熱を施しました。今回はこの事例をもとに、マンションのリノベ時における断熱のポイントを紹介します。
コンクリートと断熱
コンクリートは蓄熱性の高い素材で、真夏の強い日差しでたっぷり蓄熱します。そして気温が下がり始める夕方になると、蓄えた熱を放出していきます。そのため夜になっても室内は暑いまま、室温はなかなか下がりません。エアコンを効かせるために設定温度を下げると思いますが、そうなると光熱費も気になるところ。
そこで効果的なのが断熱です。断熱と聞くと冬のイメージがあるかもしれませんが、夏の暑さにも有効。外壁の温度を室内に伝えないようにする断熱施工は、過ごしやすい室内をつくるのに大きく貢献すると言えます。
専有部分でできる内断熱
外側に施工する断熱を外断熱と言い、日射の影響をコンクリートが直接受けないので有利な方法ですが、今回はマンションなので、専有部分である室内側から施工する内断熱を採用しました。
内断熱をするためには室内側の壁を取り払いコンクリートの躯体に断熱材を敷き詰めます。解体が必要となるため手軽な工事ではないのですが、全てやり替えるフルリノベーションの予定がある方には検討いただきたい施工です。
壁面に断熱材をはめ込んでいく様子。共用部分である躯体そのものには手を加えないよう、コンクリートの上から貼っているのでマンションでも施工できる
トイレには吸音効果のある断熱材を使用した
断熱材の種類はいろいろありますが、今回は熱を伝えにくい素材である発泡プラスチック系のボード状の断熱材を使用しました。軽量のため、マンションの上層階にも運びやすいです。施工は、上写真のようにコンクリートの壁に下地を作り、その中に隙間ができないようはめ込んでいきます。
今付いている窓の内側にもう一つ窓を取り付ける二重窓も断熱効果が期待できます。解体など大きな工事は不要な場合が多いので、リノベの予定がない方にもおすすめです。
暑かった西側が寝室に
外気の影響を室内が受けにくくなりますので、冷暖房のエネルギー消費を抑える効果があります。リノベーションの際には、家のデザインと合わせて、住んだ後の快適性にも目を向けることが暮らしやすさの改善につながります。
今回断熱を施したお住まいでは、暑かった西側の部屋を寝室として快適に過ごされています。目に見えない問題点を洗い出しながら、お部屋の向きや環境を考慮して計画することが大切だと考えます。
執筆者
さとう・ともえ
島根県生まれ。インテリアコーディネーター資格を有する。「住まい方」から家を考える近藤典子の暮らしアカデミーを修了。間取り提案からインテリアまでトータルでコーディネートする「in tree」を夫婦で設立。
◆(株)in treeの強み
自然素材を使った家づくり。中古マンションを購入し、夫婦で設計・リノベーションした家に暮らしています。ローンのことからデザインまで実生活から得たことをそのままお伝えし、夫婦それぞれの目線から暮らしやすい家の形を考えます。
那覇市小禄5-2-1 501
電話098-960-4680
https://intree.jp/
■リノベーション協議会とは 消費者が安心して既存住宅を選べる市場をつくり、既存住宅の流通を活性化させることを目的に、2009年7月に発足したリノベーション業界団体。全国1000社弱の企業等が参画し、優良なリノベーションの統一規格「適合リノベーション住宅(R住宅)」を定め、普及推進している。その年のリノベNo.1を表彰する「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」も年々注目が集まっている。https://www.renovation.or.jp
■これまでの記事はこちらから
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1914号・2022年9月9日紙面から掲載