リノベ
2021年3月19日更新
リノベで差別化 価格競争と無縁に|今ある家をバージョンアップ[11]
次々と新しい建物が建つ中、「古い建物だから」と空室を埋めるために家賃を下げるしかないと悩んでいるオーナーのみなさん。古さを生かしたり、希少性が出るリノベをすることで、競争力のある賃貸住宅に生まれ変わります。
case11「築40年以上のアパート」⇒「賃料アップ&人気物件」
◆相談&課題現代の生活と合致しない間取りや内装
3分の1が空室で家賃を下げるしかない
◆リノベのプロが提案!
建物の魅力である「レトロさ」を生かす
立地を読み解きターゲットを明確化する
次々と新しい建物が建つ中、「古い建物だから」と空室を埋めるために家賃を下げるしかないと悩んでいるオーナーのみなさん。古さを生かしたり、希少性が出るリノベをすることで、競争力のある賃貸住宅に生まれ変わります。
放っておくと負のスパイラルに
物件にあまり手をかけずにいると空室率が高くなり、空室を埋めるために家賃を下げる。家賃を下げると、収益が減り、建物修繕ができず、さらに家賃を下げる…どんどん悪い状況へと追い詰められ、売却や取り壊しをするしかなくなってしまいます。多額の借り入れをして建て替えても、数年後には再び新しい物件ができ価格競争に巻き込まれるという負のスパイラルに。
そこから脱却し競争力を高めるため、私たちが提案するのは希少性を出すことです。
ターゲットの好みに合わせ、モルタル仕上げの床に。多用途に使えるカウンターも造作した
競争力を高める希少性
まず、ネガティブに思われがちな「古さ」を逆手に取り、新しい建物にはない魅力としてレトロさを生かします。既存の建物が必ず持っている、建築当時の時代性や特徴は個性になりやすく、希少性を生みます。
次にターゲットの明確化。年齢や性別・職業まで細かく設定することで、暮らし方や好みなどが読み取りやすくなり、商品の企画やデザインもブレません。反対に、あれこれ盛り込んでしまうと、誰にとっても中途半端な空間になってしまいます。
上写真の事例では、市街地という立地や周辺物件を踏まえたマーケティングの結果、男性の1人暮らしをターゲットに据え、和室を土間仕上げのワンルームへ更新。素材や色も30歳前後の男性に好まれるように選びました。
さらに、洗面スペースやキッチン、カウンターなど、「機能」を壁面に並べ、トランクケース一つで生活するようなミニマリストに向けた物件として差別化を図りました。
他にはない魅力を作ることで、エレベーター無しの物件が、エレベーター有り物件とは違う土俵で戦えるようになったのです。
建物維持につながる再生の手だて
空室改善のリノベでは、物件の特徴を生かした希少性を強みとする企画や、相手に響く見せ方が重要。中でもターゲットの明確化は、数ある物件に埋没しない、長期的な競争力のある物件へ導くポイントです。
建物は放置期間が長いほど傷むので、少しでも早く「再生」の手だてを見つけることが今後の維持にもつながります。
今回の記事が、アパート経営だけでなく、築古物件の使い道に悩んでいたり、ありふれていないアイデアを試みたい方にとって、中古を強みに変える新しい挑戦のきっかけとなることを願っています。
壁面のレトロなデザインを残した共用部
Before
After
仕切りを無くし、広さを感じられるワンルームへと間取りを変更した
執筆者
もりおか・みずほ
大阪の堺で育った関西人。立命館大学卒業後、Arts&Craftsへ入社。住宅系資格を有するが資格には頼らない仕事ぶりで、毎日奮闘中。沖縄で嫁入りし、地元精通ももう間近! リノベーションした自宅に住む。
◆Arts&Craftsの強み
1994年設立、日本におけるリノベーションの黎明(れいめい)期から活動。個人住宅のリノベから空室が目立つビルやアパートの再生コンサルティングまで手掛ける。沖縄事務所は老朽化したホテルを再生し運営もするSPICE MOTEL内。北中城村喜舎場1066 ☎︎098-975-8090
https://www.a-crafts.co.jp
■リノベーション協議会とは 消費者が安心して既存住宅を選べる市場をつくり、既存住宅の流通を活性化させることを目的に、2009年7月に発足したリノベーション業界団体。全国1000社弱の企業等が参画し、優良なリノベーションの統一規格「適合リノベーション住宅(R住宅)」を定め、普及推進している。その年のリノベNo.1を表彰する「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」も年々注目が集まっている。https://www.renovation.or.jp
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1837号・2021年3月19日紙面から掲載