リノベ
2021年2月19日更新
外への動線もバリアフリー化|今ある家をバージョンアップ[10]
2世帯住宅にリノベーションする際、将来を見据えてバリアフリー化を検討する方も多いのではないでしょうか。
Case10「親名義の築40年一戸建て」⇒「増築して2世帯に」
◆相談&課題車いすを使う父のため平らで広い造り
息子夫婦も含め2世帯分の部屋が必要
◆リノベのプロが提案!
家の外まで段差無く移動可能に
空間をフレキシブルに使えるようにする
2世帯住宅にリノベーションする際、将来を見据えてバリアフリー化を検討する方も多いのではないでしょうか。バリアフリー化された住まいは、高齢者だけでなく、子どもや妊婦さんにとっても安心して暮らせる空間となります。今回は、車いすのお父さまと息子さん夫婦が一緒に暮らすため2世帯住宅にした事例から、バリアフリー化リノベのポイントついてお伝えします。
住まいの障害を取り除く
バリアフリーとは、段差の解消や手すりの設置等、暮らす人の生活に合わせて住まいの障害を取り除いていくことを言います。今回は、車いすがスムーズに通れるようにしながら、2世帯の暮らしに適した広さと環境を整えるため、増築も施したフルリノベーションとなりました。
まずはバリアフリー化の基本でもある、段差の解消。敷居などの小さな段差はつまずきやすく、転倒やケガの原因になることも。今回は骨組み以外は全て解体して床をフラットにしましたが、状況によっては部分的な施工も可能です。
廊下幅は車いすでも通りやすいように120センチと広めに設計。床には硬く掃除がしやすいナラ材を用いることで、耐久性はもちろん、見た目にも優しいナチュラルな雰囲気に仕上がりました。バリアフリーに対応できる素材には、実用性とデザイン性を兼ねているものも数多くあります。インテリアを楽しむことと、家族みんなが過ごしやすい空間にすることを両立して計画しましょう。
父の部屋に設けた専用の出入り口。駐車場まで屋根付きのスロープでつながる
室内外の動線をつなげて計画
車いすが出入りするには既存の玄関では間口が狭く、かといって間口を拡張すると予算を上げなければなりませんでした。
そこで増築したお父さまの部屋に専用の勝手口を設置。雨天時にも安心して出入りできるよう、駐車場から勝手口へと続くアプローチのスロープには屋根も設けました。子どもを抱っこしていたり、荷物を持っているときにも屋根があると助かりますね。
家の中だけでなく、外のアプローチや駐車場まで含めて動線を計画すれば、車いすの場合はもちろん、ご家族みんなにとっても使いやすくなるのです。
広い廊下が遊び場に
バリアフリー化した住まいは、開口などゆとりを持たせる必要が出るため、床面積の決まっているリノベーションではどこかにしわ寄せがくる懸念もあります。2世帯にするならなおさらです。
そんなときは、フレキシブルな空間の使い方で解決方法を見いだしていきましょう。例えば廊下を広くした場合、その廊下を子どもの遊び場と兼ねたり、LDKの一部に取り込んだりする方法があります。
今はまだ介護が不要でも、2世帯へのリノベを機に将来にも備えておくことで、介護を受ける側もする側も互いに安心でき、心地良く過ごせます。いざというときに再度お金をかけてバリアフリー化するより、低コストにもなります。
車いすがスムーズに通行できるよう、廊下や入り口の幅は広めにしている
Before
After
トイレ。車いすからの移乗が容易に行えるように、ゆとりのある寸法を確保した
執筆者
さとう・ともえ
根県出身。大阪の工務店で現場を通して家づくりを学ぶ。建築士の夫とin treeを設立。夫婦おのおのの目線で暮らしやすい家を提案。
◆in treeの強み
リノベーション以外に木造新築の設計施工も行う。無垢(むく)材をはじめとした自然素材を使い、シンプルで居心地のいい住まいを手の届く価格でつくる。中古マンションを夫婦でリノベーションした家は、オフィスを兼ねたモデルルームで内覧が可能。那覇市小禄5-2-1 501 ☎︎098-960-4680 https://www.intree.jp
https://www.intree.jp
■リノベーション協議会とは 消費者が安心して既存住宅を選べる市場をつくり、既存住宅の流通を活性化させることを目的に、2009年7月に発足したリノベーション業界団体。全国1000社弱の企業等が参画し、優良なリノベーションの統一規格「適合リノベーション住宅(R住宅)」を定め、普及推進している。その年のリノベNo.1を表彰する「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」も年々注目が集まっている。https://www.renovation.or.jp
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1833号・2021年2月19日紙面から掲載