寿命延ばし高齢の母が安心して暮らせる家に|今ある家をバージョンアップ[5]|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

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2020年9月18日更新

寿命延ばし高齢の母が安心して暮らせる家に|今ある家をバージョンアップ[5]

「今ある家」や「今ある建物」を、ライフスタイルにフィットする住まいに改修した事例をピックアップ! リノベーション協議会のメンバーが、リノベーションでできることやメリット、注意点などを分かりやすく紹介します!

case5「築50年 外人住宅の実家」⇒「リノベし住み続けたい」

◆相談&課題
爆裂・崩落・白アリ被害・段差を除去
思い出が詰まった家に住み続けたい!

◆リノベのプロが提案!
傷みひどいが接道してなく建て替え不可
断面修復工事&防水で建物の寿命を延長

経済的観点からリノベーションを選択される方は多いと思います。例えば、新築で30坪の平屋の建物を建てようとすると、約3000万円ほど掛かりますが、既存住宅を使ったリノベーションなら1/3~1/4の金額で行うことも可能です。しかし、経済的理由だけではなく、長く住んでいる家だからこそ、たくさんの思い出が詰まった場所に住み続けたいとリノベーションを選ぶ方もいらっしゃいます。

住み続けるためにリノベを選択

施主様(50代)は築50年を超える外人住宅に母(80代)と2人で住んでいますが、屋根や庇はコンクリートの爆裂現象が起き、天井内ではコンクリートが崩落している状態。施主様のご要望は、その危険性を取り除きたいこと、また建築当時、土間にコンクリートが打たれておらず白アリ被害も発生しているため、土間コンクリートを流し防虫防蟻処理を行いたいとのこと。あわせて母の身体的能力が低下していることから福祉住環境を取り入れた工事をお願いしたいとのことでした。

実際に建物の調査を行ってみるとコンクリートの傷み具合もひどく、修復費用も大きく掛かってしまうので、あまりお勧めできない旨を説明しました。ただし、通常なら建て替えも検討しますが、今回はそれができない状況にもありました。建物を建築するとき、建築基準法第43条に『建築物の敷地は、道路(幅員4㍍)に2㍍以上接しなければならない』という法律があるからです。今回の建物の敷地は道路に接していなかったため『再建築不可』となり、建て替えることができない土地でした。


修復前。庇下(上)や天井(下)など、鉄筋が腐食して膨張し、コンクリートが剥がれ落ちていた





▲修復後の外観

新しさより80代の母の「思い」優先

接道義務について施主様にお話しし、建て替えができないことを説明。施主様はこの家に対する母の『思い』を大切にしており、戦後、亡くなった父と共に暮らし始めた家の思い出を壊したくないとのことでした。父と4人の子どもと一緒に暮らした家にはたくさんの思い出があり、今は孫もたくさん来る家なので、高齢となった母に新築は必要なく、この場所にそのまま住み続けさせたいという要望がありました。

そこで、爆裂したコンクリートの断面修復工事を行うことに。爆裂したコンクリートをはつり除去し、鉄筋の錆を落とし、錆転換型防錆剤(赤錆から黒錆へ転換)を塗布してポリマーセメントを塗って仕上げました。また、外部からの雨水の浸入を防ぐため、屋上はウレタン防水を施工し、外壁はすべて塗り替えました。費用は建て替えの1/3程度に抑えることができました。

構造体のダメージを修復し、建物の寿命を長く維持することもリノベーションです。これまでの思い出と共に、これからもこの場所で住み続けることができるお母様の喜びと、母を思う施主様の優しさを感じたリノベーションでした。



執筆者
とくざと・まさとし
1978年嘉手納町出身。西日本工業大学建築学科卒業。2016年にLa.fitを立ち上げる。建築士、宅地建物取引士の他、多数の資格を有する。(一社)リノベーション協議会沖縄支部長を務める。

◆La.fitの強み
考え方や好みは、十人十色。既成概念にとらわれず、住む人、使う人にとことん向き合い、「デザイン」「住み心地」「価格」のバランスを大切に一緒に作り上げるのがLa.fitのスタイル。暮らしをトータルでサポートします。
うるま市字塩屋307-5
098-988-5128
https://www.la-fit.net

リノベーション協議会とは 消費者が安心して既存住宅を選べる市場をつくり、既存住宅の流通を活性化させることを目的に、2009年7月に発足したリノベーション業界団体。全国1000社弱の企業等が参画し、優良なリノベーションの統一規格「適合リノベーション住宅(R住宅)」を定め、普及推進している。その年のリノベNo.1を表彰する「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」も年々注目が集まっている。https://www.renovation.or.jp

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1811号・2020年9月18日紙面から掲載

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