巻頭特集・企画
2020年1月3日更新
[特集]せっかく家を建てるなら楽しい家がいい!|見た目
建築費や地価が高騰しているからこそ、せっかく家を建てるなら思いっきり楽しい家にしたい! 週刊タイムス住宅新聞の巻頭コーナー「お住まい拝見」や「こだわリノベ」に登場する家にもそんな傾向が見られる。
そこで過去3年間(2017年1月~2019年12月)に登場したお宅の中から、えりすぐりの楽しい家を紹介する。
内装には施主の好みが顕著に表れる。思いっきり自分好みの空間に仕上げた5物件を紹介。モダンやレトロ、男前やかわいい家。どのお宅も細部までこだわっていて、どこを切り取っても絵になる。
せっかく家を建てるなら見た目を楽しみたい!
―好みのデザインや趣味を反映した家について(東江)どこを切り取っても絵になる家は、施主と建築士のセンスがピッタリ合っての賜物(たまもの)。ピックアップした5物件の施主は、センスの合う建築士を探すために本紙を読んだり、完成見学会に行ったり、共通の趣味を持つ建築士に依頼したりしている。
(出嶋)デザイン性の高い家って、細部までこだわっている。記事内ですべて紹介しきれないのが残念。洗剤やシャンプー・リンスまで、市販品でなくお気に入りのボトルに詰め替えて使っているところもある。
(東江)本当に気に入ったものを選んで置いているよね。あと、設計の段階から、絵やフィギュアを飾る場所を決めているから、きれいに収まっている。
(徳)家全体を個性的にするのはハードルが高いけれど、例えば家事室やキッチンなど自分が主に使う空間だったり、トイレなどの小さな空間のデザインにこだわった家は結構ある。
(出嶋)趣味が高じてパン教室を開きたいと、住まいとは別のキッチンを設けた家もあった。
(徳)DIYや釣りが趣味という人の家は、土間があったり外に作業場があるお宅が多い。
(東江)趣味の道具をディスプレーしてかっこよく見せたお宅もある。それが個性になっているし、無駄なスペースを作らずに済んでいる。
インダストリアルスタイル
▼2019年11月15日発行号(1767号)掲載 設計・施工/(有)エバデザイン
1階LDK。黒を基調とした内装に、夫婦が好きで集めてきたビンテージの家具が映えるスタイリッシュな空間
鉄や石などのクールな質感に赤と黒、車、そして工場をイメージさせるインダストリアルスタイルー。築25年の住まいをリノベーションするにあたり、Yさんは好きな要素をすべて詰め込んだ。1階の天井や壁はコンクリートを塗装しただけ。梁や照明の配管もむき出しで仕上げ、壁のへこみも、あえて残している。
特に目を引くのは、床に敷き詰めた大判の磁器タイルだ。Yさんは「鏡面の美しさを保つにはマメな掃除が必要だが、外せなかった。フローリングや塩ビタイルと違い汚れは吸い込まないため、長い目で見たらこのほうが管理しやすい」と話す。室内を黒でまとめていても暗さや狭さを感じないのは、「天井を抜いたり、梁や天井いっぱいまで高さを取った建具で階高を強調。鏡などで広がりを演出しているため」と建築士の糸洲芳彦さん。黒中心でも高く、広く。スタイリッシュな大人の空間になった。
階段。工場っぽい雰囲気に合わせ踏板などは溶接せずにボルトで留めた
南フランス風
▼2017年12月15日発行号(1667号)掲載 設計/アトリエPAD一級建築士事務所
外観。白い壁とフランス瓦で南仏風をイメージしている
カントリー調の雑貨が好きなUさん宅の外観は、白い壁にフランス瓦を合わせた南仏風のイメージ。「家を建てるなら南仏風と決めていた」こともあり、欧風住宅を多く手がける饒平名知善さんに設計を依頼した。饒平名さんは南仏風のイメージを保つため、例えば、道路と建物との間に設けられたヒンプンのような塀や、敷地を囲む塀は、上部が曲線を描くプロバンス風にした。「圧迫感を軽減しながら、プライバシーと意匠性を両立させた」と話す。
キッチンや照明、タイルなどはUさんたちで調達し、内装の施工も大工のおじを中心に自分たちで仕上げた。雑貨を飾ったり、キッチンパネルに壁紙を貼るなどアレンジしていたところ、中学生の長女もインテリアや雑貨に興味を持ち始め、親子で空間作りを楽しんでいるという。
お気に入りの雑貨が飾られたLDK。キッチンパネルにはレンガ調の壁紙が貼られている
ホテルライクな空間
▼2019年4月19日発行号(1737号)掲載 設計/(株)一級建築士事務所 斎
絵画やシャンデリアが映える32帖のLDK。天井高を取り、600ミリ角の大判タイルを採用。平面と高さのバランスをとることで広さを感じつつ落ち着ける空間に
ワイン好きでパーティーを楽しむ機会が多いMさんが「大勢でゆったり過ごせるように」と新築した住まいは、まるでホテルのスイートルームのよう! 2階のLDKは32帖ある。人工大理石のカウンターと一体になったオリジナルのアイランドキッチンに、「広く見えるように」と鏡面扉で統一した背面収納。夫人が好きなスワロフスキーも、照明として取り入れただけでなく、置き物としてもあちこちに飾られている。3階のプライベート空間は、木やダークブラウンで落ち着いた雰囲気に。
夫婦のベッドルームや水回り、バッグ類を立てて収納できるウオークインクローゼットといった細部まで、設計の際は建築士の玉那覇昇一さんと何度もやりとりした。「実は依頼先探しは彼で4人目。何でも話せた」おかげで、「イメージ通り!」の空間に仕上がった。
パウダールーム。間仕切り上部はガラスにし、明るさと広がりを演出
大正ロマン
▼2017年8月11日発行号(1649号)掲載 設計/(有)空間計画アーティザン
家の中でも特に大正ロマン感が漂う和室。建具と調度品が調和している
「大正ロマンな雰囲気が好きなので木造の平屋建てを考えていた」というUさん。だが予算や希望の部屋数をすりあわせた結果、2階建ての鉄筋コンクリート造(RC造)を建てることになった。
それでも「見た目は妥協しなかった」と話す。室内にはツヤ無しの杉材をふんだんに使い、外部にはヒバ材を使用。建具や窓枠にはダークカラーの木を用いた。木を多用したことでRC造ながら木造の雰囲気が漂う。随所にすりガラスを用いたり、夫妻が吟味したインテリアも効いてハイカラな雰囲気に仕上がった。「以前、タイムス住宅新聞に木の建具を用いた家が載っていて、こうしたい! と思ったんです。それが依頼した建築士・津波光教さんの自邸だった」と話す。
隣家との緩衝空間としての役目も持つ日本庭園を眺めながら、縁側で朝食を食べたり友人とビアガーデンを楽しんでいた。
室内外ともに木を多用することでRC造ながら、木造のような雰囲気を醸している
個性&遊び心全開
▼2019年4月12日発行号(1736号)掲載 設計/LSD design(株)
築26年の実家2階をリノベした渡口さん宅。玄関を開けると愛犬のイラストがお出迎え
扉を開けると愛犬のイラストに出迎えられる。施主の渡口さんは釣り好きとあり、そこには釣り竿(ざお)と「LOVE FISHING」の文字も描かれている。上部には漁船の照明のようなライト。家に1歩入っただけで施主の趣味が分かる、個性全開のお宅だ。手がけた建築士・平良玄峰さんも釣り仲間。気心知れた間柄とあり「最高にしっくりくる家を造ってくれた」と話す。
さらにキッチンの腰壁には古着のデニムで作ったオリジナルの「デニムタイル」があしらわれている。鉄骨製の家具や作り付け収納、照明などと相まって、家全体にラフで格好いい印象が漂う。
築26年の実家2階をリノベーションした渡口さん宅。夫妻の好きな物をちりばめて空間を一新させていた。
キッチンの腰壁に用いられているのは、型枠用の合板に古着のジーンズを巻き付けて作った「デニムタイル」
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1774号・2020年1月3日紙面から掲載