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2019年10月4日更新

二つの土間で伸び伸び|ロカルウ

[お住まい拝見|外は6.5畳、内は3畳]「かしこまらずオープンに」と新築したMさん宅は、玄関の外と内に土間がある。6.5畳と3畳の土間は集い・くつろぎ・涼を生み、広い室内と相まって家族は伸び伸び暮らす。

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箱を二つ組み合わせたような外観。パブリック空間となる東側の箱(写真右手)の玄関先には、建物を彫り込んだように設けた、幅4.5メートル奥行き2.4メートルの土間がある。学校にあるような水場も備えつけられており「手や靴を洗ったり、バーベキューにも大活躍」とMさん


かしこまらずオープンに

Mさん宅
RC造/自由設計/家族4人
「玄関らしい玄関はいらないし、部屋はオープンでいい」と造り上げたMさん宅で特徴的なのが、玄関の外と内にある大きな土間スペースだ。

外の土間は建物を彫り込んだような空間で、「昔の家みたいに軒が低い感じがいい」とMさん。「バーベキューをしたり、朝はイスに腰掛けてボーッとしたり」と、雨や日差しを気にせず集い、くつろげる場だ。内に設けたのは、仕切りのない土間玄関。「真夏の日中も、ここなら暑くない。子どもたちが釘を打って工作したり、将来は水槽も置きたい」と、使い方は自在だ。

玄関から台所、居間、食堂、畳間までが見渡せる室内も、自由度は高い。合わせて32畳、天井高3.2㍍の大空間は、食事が済んだらテーブルをよけて遊び場に。柱にもたれて本を読んだり宿題をしたり。「夏でも涼しいから、床で寝てしまうこともしょっちゅう」と笑う。


土間玄関。木サッシ越しに見える庭は絵のよう。



玄関から見た室内。コンクリートむき出しの天井や塗装しただけのブロック壁のざらつきも「味になる」とMさん。必要に応じて仕切れるよう、柱や鴨居を設置


できる所は自分で
「あたらさーせず(大切にし過ぎず)、どんどん手を加えながら暮らしたい。できる所は自分でやったほうが、コストが抑えられてメンテナンス時も困らないし、愛着がわく」とも。ブロックのザラ付きを残した壁や床の塗装も、キッチン後ろの棚も、DIYで仕上げたものだ。「新築時に完全に完成しなくても良かった」と話すのは将来を考えてのこと。「部屋が必要になったら壁で居間を仕切ればいい」と子ども室は一つに。寝室だけは「年を取った時にベッドを分けたり、脇にトイレも造れるように」と広めに取った。

敷地は2軒隣に住む両親から譲り受け、設計は「好きな物が同じで年も近い。同じ匂いがした」という建築士に依頼した。玄関先に設けた手洗い場は、「蛇口を三つ並べたら学校っぽくない?」と建築士と盛り上がった末に生まれた物。「後で変形するかもしれないのは承知の上」でベニヤ板5枚を圧着し畳間の柱や鴨居を造作してもらったり、洗面ボウルやタイル、照明も吟味。建てる過程丸ごと楽しんだ。

緑が映える琉球石灰岩のアプローチや芝庭も夫婦の自慢。「親父が集めた石を生かしてくれた。家と庭が引き立てあってカフェみたいって驚かれる。庭も作り込みたいし、家庭菜園や養蜂もやりたい」と楽しみは尽きない。



石造りのアプローチに映える外観

ここがポイント
深い軒で「穴蔵」感 視覚でも涼を演出
敷地は中部にある古くからの集落でMさんが生まれ育った場所。「近所はみんな顔見知りで敷地にもゆとりがあったため、南に設けた庭に程よく開く造りにして、内部も水回りと寝室以外はオープンな間取りにしました」と建築士の島袋巧さん。

意識したのは陰の作り方。「沖縄の強烈な日差しを避けて心地良く暮らせるように」と玄関先に軒の深い土間を設けた。土間自体が天気や汚れを気にせず使える半屋外空間となるだけでなく、室内に光や熱が入り込み過ぎないようコントロールする役割がある。「目指したのは穴蔵にこもっているような心地よさ。熱を遮るのはもちろん、明るさの加減で感じる涼しさもあると考えたから」だ。西日の熱は、物干し場や水回りを西側にまとめることで遮断。家事動線を短くすることにもつながっている。

建材の選び方もポイントだ。躯体のコンクリートや、毎日歩き回る床は丈夫なチークを使ってコストを掛けたが、壁のブロックやペンキ、建具や収納に用いたベニヤ板・鉄などは、安価で手に入れやすいものばかり。Mさん自身が気軽にメンテナンスできることと、コスト圧縮を狙ってのことだ。MさんがDIY好きだったこともあり、「骨組み以外は造り込み過ぎず、自身でアレコレ手を加えていけるよう余白を残しました」。

そのほか、Mさんの父親が「息子の家づくりのために」と30年前から取っていた琉球石灰岩を活用し、庭造りを担当した葉棚達也さんが石造りのアプローチを提案。植物も台風や潮に強い種類を選んだ。


対面式のキッチンは回遊性を持たせて家事をしやすく。左手廊下奥には夫人の希望で設けた家事台もある。「宿題を添削したり書き物をしたり、朝の身支度にも便利。自分のスペースがあるのがいい」と重宝している



キッチンを含む水回りはLDKより天井が低いものの、天窓やトイレとの間仕切り壁の一部を抜いたことで、狭さや暗さは感じない。



寝室側から洗面、浴室を見る。洗面ボウルは実験用の流し台。左手の勝手口先は、花ブロックで目隠し兼通風採光を図った広い物干し場がある。



Mさんこだわりのモザイクタイルを敷き詰めた浴室


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:362.68平方メートル(109.7坪)
1階床面積:198.5平方メートル(32.8坪)
建ぺい率:31.2%(許容50%)
容 積 率:29.92%(許容100%)
用途地域:第一種低層住居地域
躯体構造:鉄筋コンクリートラーメン構造
設  計:ロカルウ 島袋巧
構  造:徳和設計室 稲福徳和
施  工:(株)沖秀建設 大庭翔弥
電  気:カミヤデンキ 神谷嘉正
水  道:(有)ライフ工業 高山佳晃
流し台・スチール造作:LITTAI metal works  仲地研二
植栽・窓回り:HADANA 葉棚達也・由真


[問い合わせ先]
ロカルウ
098-911-0521
http://localoutkm.com/


撮影/比嘉秀明 編集/徳正美
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1761号・2019年10月4日紙面から掲載

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