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2019年9月20日更新

[不動産の日特集|実家を生かす]④中古住宅の動向

地価や建築費の高騰から住宅や店舗など新たに不動産を取得するのが難しくなっている昨今、見直したいのが「実家の活用」だ。9月23日の不動産の日にちなみ、2世帯取得に役立つサイトや、店舗への改装事例、行事の際は帰省し普段は宿泊施設にすることで維持活用につなげた3手法を紹介。中古住宅の不動産動向も取り上げる。

市場に出る中古減 未活用の空き家増


※1:「不動産市場DIレポート」は県内不動産関連事業者を対象に不動産市場の動向や今後の見通しを聞く短期動向調査。地価や取扱件数などの上昇・下落感をDI値で示している



中古は出し渋りも
ことし5月に(公社)県不動産鑑定士協会が調査した県内の「不動産市場DIレポート(※1)」から不動産取扱件数の動向をみると、宅地・一戸建て住宅・マンションともにDI値が良好さを示すプラス値で推移している。とはいえ、一戸建て住宅は2017年11月以降、DI値は減少。特に今回は半年前の18年11月からマイナス11.7ポイントと大きく減少した。一戸建て住宅の取扱物件はあるものの、その上昇感は薄くなったと言える。地域別では浦添・那覇以南でDI値がマイナスに転じ、一戸建て住宅の物件は少なくなっていると思われる。

昨今の不動産動向について、同協会理事業務委員長の伴清敬(ばんきよたか)さんは「地価や建築費の高騰で新築住宅に手が出せず中古物件のニーズは高い」と話す。「それにもかかわらず、一戸建て住宅の取引が減る要因は、価格の値上がりや融資の厳しさ、消費税増税の影響などが考えられる。また、市場が過熟すると売り渋りが発生して市場に出てこなくなる傾向があると言われていて、中古物件では地価上昇を見据えた売り手の出し渋りもあるのではないだろうか」

総務省統計局が5年ごとに発表する「住宅・土地統計調査」を見ると、県内の住宅総数に対する空き家率は10%前後で推移。18年の空き家率は10.2%と全国で最も低く、住宅需要の高さがうかがえる。このうち中古物件として市場に出回るであろう賃貸または売却用の住宅は55.5%。20年前に比べ5.3%減少していて、中古物件は出回りにくくなっていると言えるだろう。

定住・移住を促進
その一方で別荘などの二次的利用にも賃貸・売却にも活用されていない空き家(グラフ2内その他の住宅)は増加。こういった空き家を活用して定住・移住を促進しようと、石垣市・久米島町・粟国村などの離島やうるま市島しょ地域では、空き家と定住・移住者とをマッチングする「空き家バンク」などに取り組んでいる=下参照。しかし仏壇や相続問題など、提供側の活用に対する抵抗感やわずらわしさがあり、積極的な活用には至っていないようだ。

地価や建築費の高騰による新築住宅の取得が厳しく、中古物件も思うように探せない中で、実家をうまく活用する選択がこれからは増えていくのかもしれない。

空き家バンク活用の実態・担当者の声
石垣市(企画部企画政策課)
空き家バンクを18年から開設して現在まで2件の空き家の提供があった。うち1件はマッチングが成立した。市外からの移住者向けではあるが、空き家バンクの利用に60人程度の登録があって借りたい需要はあると思う。「使っていないけれど仏壇があって、人に貸すのが難しい」といった声はあるようだ。市では空き家バンクへの提供を条件に修繕費の補助もある。

久米島町(島ぐらしコンシェルジュ矢島守人さん)
地域おこしを目的に17年から空き家バンクを開設。これまで1件の提供があったが、空き家バンクを活用せずに居住者が決まった。提供物件が少ない背景として「相続がきちんとできていない、今困っていないし活用するためにわざわざ面倒な思いはしたくない」という空き家持ち主の思いもあるよう。一方で借り手のニーズはあり、月平均10件ほど住まい探しの相談を受けている。空き家バンクでは民間不動産仲介業者がない地域や、あっても取り扱いにくい物件の活用がメインだろう。利用可能な空き家を活用してもらえるように行政で支援していきたい。


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Case02:宿泊施設
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1759号・2019年9月20日紙面から掲載

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