巻頭特集・企画
2019年9月20日更新
[不動産の日特集|実家を生かす]②宿泊施設
地価や建築費の高騰から住宅や店舗など新たに不動産を取得するのが難しくなっている昨今、見直したいのが「実家の活用」だ。9月23日の不動産の日にちなみ、2世帯取得に役立つサイトや、店舗への改装事例、行事の際は帰省し普段は宿泊施設にすることで維持活用につなげた3手法を紹介。中古住宅の不動産動向も取り上げる。
Case2 宿泊施設に
帰省時以外は宿 維持し収益にも
室内は畳を取り払いフローリングに。手前から3番座、2番座、引き戸の奥が床の間のある1番座(下写真)。手前がキッチン
伊是名村の木造古民家「銘苅家別邸」
「昔の暮らし」体感
住み手のいなくなった実家。自分たちは既に独立し離れて暮らしているが、行事の際は帰省するし、代々受け継いできた土地や家屋敷を手放すわけにもいかない。かといって、人が住まなければ、だんだんと朽ち果てていくだけ。祖父母・両親との思い出が詰まった家を、維持・活用できないかー。伊是名村の宿泊施設「銘苅家別邸」は、オーナーである銘苅末美さん(42)夫妻の、そんな思いから誕生した。
実家は築70年余の木造平屋。地元の大工に相談したところ、「傷んではいたものの、骨格自体はしっかりしていた」ことから、傷んだ柱やキッチンを入れ替え、屋根に断熱・防水塗装を施すなど1年かけて補修。旅館業の申請が認められ、ことし5月から営業を始めたばかりだ。「梅雨時など10日も閉め切るとすぐカビが生える。週末だけでも人が入れば換気や掃除ができ、それがメンテナンスにつながっている」と話す。
「子どもたちが夏休みに帰るのを楽しみにしていた祖父母の家を活用できたのが何より」と銘苅さん(右)
南に1番座、2番座、3番座、北に裏座、西に台所や水回り、縁側には大きく張り出したアマハジがある伝統的な造りはそのままに、天井は取り払って太く立派な梁(はり)を見せて開放感を演出。「エアコンやテレビはあえて設置せず、夏は蚊帳をつった寝室で扇風機で休んでもらっている」と、「昔ながらの暮らし」を打ち出す。
集客は同村の観光協会やコンベンションビューロー、自身のホームページのみだが、離島好きの女子や外国人の利用もあり、「週末を中心に稼働率も徐々に上がってきている」。宿泊料金は平日3万円、週末や祝日前は5千円アップの1棟貸し。「将来的には離れを改修して自分たちはそこに住み、管理・メンテナンスしながら生活してもいい」と老後のイメージも膨らませている。
意外だったのは島民らの利用。「親せきや知人が来た際に、自分たちも一緒に泊まったり宴会する場として重宝している」と喜ばれているという。
▲リフォーム前
▲リフォーム前
「自分も使う」を優先
当初は、行政に借り上げてもらい公務員住宅として活用してもらったり、村に寄付して居住促進事業に活用してもらう選択肢もあったが、「それでは自分たちが夏休みや清明祭の時に帰る家がなくなってしまう。島に戻れるのも家屋敷があればこそ」と、自分たちが使いたい時には使えることを優先した。
最近では、同じような悩みを抱える島民や知人から「住み手がなく活用したいが修復費用が無い」「解体にもお金がかかる」「手放したくないが維持が大変。ノウハウを教えてほしい」といった相談も増えた。「状態にもよるが、古民家や空き家を借り上げて再生・活用し、オーナーが使いたい時はリネン代程度で使える仕組みを計画中」とのこと。問い合わせは電話080-3376-4622。
セメント瓦は補修し断熱・防水塗装。デッキは新設した。祖父母や両親が手を入れた東側やキッチンのある西側はアルミサッシだが、南北の開口部は昔ながらの木サッシで網戸と雨戸のみ。庭には井戸もある。「夜は真っ暗になるので星がキレイ。波の音やフクロウの鳴き声も聞こえる」と銘苅さん。昔ながらの造りや暮らしを体験できると、子や孫を連れて利用する家族連れも
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1759号・2019年9月20日紙面から掲載