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2019年8月9日更新

高低差生かした3階建て|遠藤建築設計室

[お住まい拝見|前面道路より5メートル下に土地]駐車場側からは1階に見える部分が実は3階。遠藤篤志さんは、前面道路より5メートル下にある土地に高低差を生かした家を建てた。全面土間床など、建築士の自邸ならではの試みも随所に見られる。

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駐車場側から見ると平屋に見えるが、実は3階建て。写真の建物は3階部分。1・2階が住居スペース。建物の手前の階段を下った所に自宅の玄関がある


全て土間床 「冬場も平気」

遠藤篤志さん宅
RC造/自由設計/家族2人

遠藤さん宅が建つのは前面道路より5メートル下にある土地。造成工事を最小限にするため3階建てにし、道路とほぼ同じ床高になる3階に駐車場を設けた。

その3階にある屋上テラスからの眺めは圧巻=下写真。眼下に南風原町の街並みが大パノラマで広がる。施主で建築士の遠藤篤志さんは、「クセのある土地ではあったけれど、南東側の眺望の良さと、価格が周辺相場の半額程度だったことから購入した」と話す。


3階の屋上テラス。眺望を楽しみながら、仲間とバーベキューをしたり、ここで仕事をすることもあるそう

住居スペースは1、2階。1階にアトリエや寝室、2階にLDKがある。どちらも南東側に大きく開き、開放感バツグン。「夜景も最高です」と夫人。

道路側には物干し場やテラスがあり、道路の音や擁(よう)壁の圧迫感を遮る、緩衝空間としての役割を果たしている。「どちらも擁壁からは少し離れているので3方向から風が抜ける。だけど雨は擁壁がシャットアウトしてくれる。豪雨時でも洗濯物が干せるんです」。土地の長所はもちろん、短所まで生かした。


2階のLDK。南東側の眺望を生かした造り。掃き出し窓には網戸を隠すレースカーテンのみを設置。夜景も楽しみながら暮らす。床も壁もコンクリートがメインの空間で「木の建具や造作家具で印象を和らげた」と遠藤さん


2階、リビングからキッチン側を見る。右奥が玄関。1階へはガラスの向こうにある外階段からも、手前の内階段からもいける

断面図


1・2階は擁壁との間に空間をあけ、三方から風が通るようにしている


左官仕上げ無しの壁
実験的な試みも行った。その一つが浴室以外、全て土間床にしたことだ。「冬場の寒さを確かめたかった。うちはスリッパを常用しているので、真冬も平気だった。掃除もしやすいし、快適」

また、内外の壁は左官無しで仕上げた。通常は型枠を外した後、凸凹を左官で整えるが「凸凹のまま塗装をして仕上げ、コンクリートの表情を生かした。おかげで、土間床やシャープな造りなど、硬い印象になりがちな空間が和らいだ。コストダウンにもつながった」。所々、型枠の木目がうっすら見えるのも気に入っている=下写真。 

取材時、眺望に驚いたのもつかの間、気が付けば細部に見入っていた。やっぱり建築士の家は面白い。


左官無しでクリア塗装で仕上げた外壁。「あちこちボコボコしていたり、型枠の木目が見えるのが面白い」


キッチンの奥には小さなパントリーがある。「扉を設けずとも、リビング側からは見えないようにしている」。背面の収納は、下部はLDKの他の収納と同じく木製だが、上部は白。「上の収納は壁に同化させることで圧迫感を軽減した」と説明する

 

ここがポイント
常にスッキリ“見せる水回り”
遠藤篤志さん宅は浴室や洗面室など、細部まで生活感を感じさせないおしゃれな造り。「自邸は建築士としての看板でもある。お客さんに見せることも多いので、負担無く美観が保てるようにした」

まずは浴室。扉はガラス製、取っ手も透明にした。「シャワーの水栓は立ったままでもひねりやすいように高めに設置。そしてシャワー下のガランは浴槽上部に移動させた」。極力、シンプルな見た目にして生活感を薄めた。

そして排水のための床勾配は通常、100分の1程度だが、実験的に75分の1にした。「入浴していても傾斜を感じることはない。水はけも良いし、お客さんにも勧めたい」

ウオークインクローゼットにも工夫が光る。中央の物干し竿(さお)は、「仕上げ干し用。除湿機を稼働するためのコンセントも設けた。小さなことだけど、とても重宝している」。

その隣には洗濯機ゾーンがある。「日々、意外と目に入るので、〝見せる場所〟にした」。壁は黒く塗装。それに合わせ収納棚も黒で統一。インパクトのある厚い棚板の収納が、洗濯機の存在感を中和する。


ウオークインクローゼット内には仕上げ干しできる物干し竿や、除湿機を稼働させるためコンセントを設けている


モノトーンでまとめた“見せる洗濯機スペース”

玄関は土間床の利点を生かし、靴を着脱する「たたき」を省いた。「靴はすぐシューズクロークにしまう。シューズクロークには、カギなど外出に必要な小物を置くスペースを設けたので、靴をしまうのと同時で済む」

小技が効き常にスッキリ。モデルハウスとしても機能する。



​浴室と洗面室。トイレまで一体となっている。洗面台は85センチと高めにした。夫婦とも「あまり腰をかがめず、使いやすい」と語る 


バルコニー側からの外観。各階とも大きな開口部があり、とても開放的。駐車場側から見た外観とは真逆の印象

[DATA]
家族構成:夫婦
敷地面積:378.51平方メートル(約114.49坪)
1階床面積:101.85平方メートル(約30.80坪)
2階床面積:98.10平方メートル(約29.67坪)
3階床面積:38.59平方メートル(約11.67坪)
建ぺい率:30.74%(許容50%)
容 積 率:63.02%(許容100%)
用途地域:第一種低層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート ラーメン構造
設  計:遠藤建築設計室  遠藤篤志
施  工:(有)沖忠建設
構  造:(有)建築設計庵
電  気:(有)中原電設
水  道:(株)和高建設工業



[問い合わせ先]
遠藤建築設計室
098-996-1720
http://endoh.boo.jp


撮影/矢嶋健吾 編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1753号・2019年8月9日紙面から掲載

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この記事のキュレーター

スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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