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お住まい拝見

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2019年4月5日更新

シンプルで柔軟に|建築設計工房 Paraya

[お住まい拝見・高天井でコンパクトでも開放感] 名護市のMさん(43)宅は、リビングがある空間、子ども室、水回りで構成されるシンプルな造り。コンパクトながらも高い天井で広く、家族の変化にも柔軟に対応する。


ダイニング・リビング・和室がまとまった空間。手前のはしごを登ればロフトもある。ふすまで仕切ることのできる和室は、普段は寝室として使っているが、来客時には客間になる


友だちに自慢できる家

Mさん宅
RC造/自由設計/家族4人
三角屋根のシルエットがかわいらしい白い外観の平屋建て。スロープに導かれ、玄関を抜けるとすぐに、長男(14)が「視界が一気に広がる感じが好き」と話す空間へ。そこはリビングとダイニング、和室、ロフトが、最大高さ4.7メートルの天井の下にまとまる。

リビングの窓を開け放てば、約8畳のデッキスペースとつながり、視線もその奥の庭へと抜けていく。長男の言葉はその様子を指したものだ。「友だちにも『ここが俺の家だぜ』って自慢できる」と加える。Mさんも「小さいけれど広く感じる。特にデッキスペースは一つの部屋という感じで、人が集まるときに重宝する。家族で焼肉をするときは決まってここです」。

高窓や隣家からの照り返しなどによって明るい室内は白が基調。インテリア好きの夫人が選んだ照明や、木目調にそろえた家具類がよくなじむ。

和室の小上がりではMさんが腰掛けてテレビ、長男はデッキスペースで昼寝、キッチンでは長女(12)が料理の手伝い。それらの様子を長女の隣で眺める夫人は「家全体に目が届き、誰がどこで何しているか分かるのがいいですね」。



高さ4.7メートルの天井で、開放感があるリビング。通路の枠や壁面に木を添わせることでメリハリのある印象になっている。夫人は「この空間に合うインテリアを自分で作ってみたい」



日当たりの良い庭。「乾きにくい空手着も、デッキスペースに置いておくだけですぐに乾く」と夫人

条件決めて土地探し
以前も同じ地域で暮らしていたMさん一家。幹線道路や商業施設が近い割に静かな環境で、住みやすさが気に入ったため、その地域内で土地探しから始めた。

夫婦が決めた土地の条件は50坪以上100坪以下。これは当時住んでいたアパートの1階が「荷物を運び込むのが楽で、使い勝手も良かった」ことや、将来子どもたちが巣立った後を見据え、コンパクトな平屋を建てるため。条件に合う土地を見つけると、知り合いの家を設計した建築士に設計を依頼した。

暮らし始めて約1年。植物好きなMさんだが庭にはまだ何もない。「いろいろ植えてにぎやかな庭にしたい」と話す一方で、ロフトから出入りするテラスにたくさんの盆栽を並べることも楽しみにしている。


ここがポイント
高さと回遊性で広々 デッキも部屋の一部

Mさん一家が求めたのは「コンパクトながらも広く感じる平屋」。建築士の島袋勝也さんはまず、リビングやダイニングなどがあるメインの空間とワンルームの子ども室、水回りで構成される建物を提案。メインの空間は天井を高くして開放感を演出するとともに、高さを生かしてロフトも設けた。室内外をつなぐ広いデッキスペースは、部屋の一部としても機能する。



一つの空間を棚で仕切った子ども室。左の窓はデッキスペースとつながる




洗面室。コンクリートにウレタンを塗ったカウンターは水をはじき、掃除しやすい。奥の浴室のシャワーヘッドや壁のタイルは夫人が選んだ


キッチン。南から入った風が写真奥の物干し場から抜けていく


さらに各部屋はデッキスペースや物干し場などで行き来でき、行き止まりがない。回遊性があることで広く感じるほか、風通しの良さや効率の良い家事動線にもつながっている。

また、「家族の変化に合わせて施主自身で工夫できるよう、あえてシンプルな造りにした」と島袋さん。例えば、今は兄妹が棚で仕切っている子ども室を、2人が巣立った後に棚を取り払って夫婦の寝室などとして使うこともできる。

コストのバランスにも配慮。庇(ひさし)の設置場所を絞るなどしてコストを抑え、その分、押入れ収納やシューズボックスなど家具工事の費用に充てることができたという。

収納は隙間のスペースをうまく活用。和室の小上がり部分のほか、キッチンの上には約6畳の屋根裏収納を設けた。


Mさんが「ソファを買うつもりだったけれど、小上がりの高さがちょうどよくて」と腰掛けることが多い和室。高窓から光が差し込み、日中は照明をつけなくても明るい


外観。打ち合わせ時の家族の仲の良さを見て、「柔らかい印象にするため、箱型ではなく家型にした」と建築士の島袋さん

[DATA]
家族構成 :夫婦、子ども2人
敷地面積 :224.34平方メートル(約67.9坪)
1階床面積:91.53平方メートル(約27.7坪)
建ぺい率 :41.08%(許容50%)
容 積 率:40.8%(許容100%)
用途地域 :第一種低層住居専用地域
躯体構造 :鉄筋コンクリート造壁式構造
設  計 :建築設計工房 Paraya 島袋勝也、仲宗根篤
構  造 :嘉数設計室 嘉数光雄
施  工 :眞大伸技建 伊波興伸
電気・水道:北部設備サービス 具志堅勝、具志堅京介



[問い合わせ先]
建築設計工房 Paraya
0980-56-2955
www.paraya-architect.com


撮影/比嘉秀明 編集/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1735号・2019年4月5日紙面から掲載

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出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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