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2019年3月15日更新

漆喰の勾配天井で趣|アトリエ・ネロ

[お住まい拝見 |インテリアこだわり空間演出]那覇の高台に建つMさん(59)宅は、眺めのいい傾斜地に沿った片流れ屋根の家。自然と景色に目が行き、風も呼び込む。自然素材に合うインテリア選びで趣ある空間に。


リビング西側からキッチンダイニングを見る。漆喰で仕上げた片流れの大きな一枚天井が室内を一体につなぐ。漆喰や杉のフローリング、雪見障子に合わせた家具類が映える
 

自然素材で落ち着く空間

Mさん宅
RC造/自由設計/夫婦
那覇市の高台に建つMさん宅は、片流れ屋根でコンクリート打ち放しのシャープな外観。「打ち放しは僕の要望で」と笑うMさんは多趣味で、その一つである自転車やバイクの用具がガレージに並ぶ。「私は自然素材の家にしたくて」という夫人がこだわったのは、室内空間だ。壁や天井は「湿気対策を考えて」漆喰仕上げに。「その漆喰の感じに合わせて選んだ」という北欧インテリアの木製照明に加え、杉床や木製家具など、目に映るもののほとんどが自然素材。それらが和モダンなテイストに統一され、温かく落ち着きのある空間を演出する。

家の中心に置かれた1階キッチンからは、リビングや和室、2階の書斎にも目が行き届く。視線だけでなく、南の掃き出し窓から入った風が室内全体を通り抜け、開放感がある。キッチンのすぐ隣には玄関があり、来客をアットホームな感覚で迎え入れる。
 


ダイニングから和室を見る。片流れ屋根を生かして設けた高窓から、光を取り込む。書斎はガラス窓で仕切り、風と視線が抜けるつくりに
 

和室。前面道路に面する窓は配置や大きさを工夫して、外の気配をできる限り抑えた
 

玄関の土間は広々としていて、大人数が来ても余裕がある。間仕切り壁などは設けず、玄関から上がると、写真右手側にすぐキッチンがある


2階書斎は夫妻の仕事部屋。音楽鑑賞が趣味のMさんが、1階リビングのテレビ音を気にせず静かに楽しめるようにも配慮。夫人がお気に入りのチェアが、杉板のフローリングや木枠のガラス窓にマッチする

プライベート空間となる寝室や収納、水回りは、キッチンの背面に配して公私を分けた。ガレージには勝手口を設け、その先には大容量のシュークローゼットとウオークインクローゼットが直線に並ぶ。「重い荷物の運び込みが楽になった」と夫人は満足そう。


寝室。入り口には大容量のウオークインクローゼット。その先にシュークローゼットと勝手口が見える 
 

水回りにつながる廊下。寝室のウオークインクローゼット上部の引き戸を開けると、廊下の高窓へと風が流れるよう工夫している


老後も見据えて
以前は3世帯が暮らすMさんの実家のワンフロアに住んでいた。「かなり狭く、人を呼びたくても呼べなかった」と夫妻。互いの実家に近い場所で土地を探していたところ、「知人からの紹介でこの土地に出合った」。いくつかの設計事務所を回り、「コンクリートの品質にこだわり、建物の耐久性が高いこと、内装には漆喰や杉の無垢材を多用していることなどが決め手になり依頼した」という。

定年退職後は家庭菜園を楽しみたいというMさんのために、庭の一角には畑が整備されており、「これまでゴーヤーやキュウリなどを育てた」とうれしそうに語った。老後も見据え、トイレは車いすが入る広さに、和室は立ち上がりやすいよう小上がりにした。

「今では、多くの人を気軽に呼ぶことができてうれしい」と夫妻は笑った。


コンクリート打ち放しの外観と夫妻が選んだ青い玄関扉が印象的。ガレージの奥にはMさんのバイクや道具が並ぶ
 

ここがポイント
通風・排熱・費用減 利点生む勾配屋根
敷地は南に那覇の街を見下ろす傾斜地。観光客が行きかう細い坂道に接するものの、夏は南から心地良い風が入り、冬は北の斜面の緑が強風を防ぐ恵まれた環境だった。そこで建築士の根路銘安史さん、水上浩一さんは、「通りの視線は遮りつつ近場の緑も遠くの景色も取り込み、風が家中を抜ける住まいを目指した」。

ポイントになったのは地形に沿うよう1、2階をつないだ勾配屋根だ。南に面したリビングや寝室の開口から自然風を家中に行き渡らせ、排熱も促すことが可能。広がりや家族の気配を感じることもできる。また屋根は居室側への出っ張りをなくす逆梁で施工。室内側から見るとすっきりとした大きな一枚天井が、窓外の景色へ視線を促す役割も果たす。また、通常の2階建てよりも壁や屋根などの表面積を減らしコストも圧縮できるなど、多くのメリットを生み出している。



施工法や建材の用い方にも工夫がみられる。「外観は周辺の環境になじむよう光沢のないマットな打ち放しに。コンクリートの品質にもこだわり、水分の少ない配合で丁寧に打設、養生も十分に行うことで、耐久性を向上させた」。

室内は床には杉板、壁と天井は琉球漆喰と自然素材を用いることで、落ち着きを演出。夫妻好みの家具や照明ともなじむ、趣ある空間に仕上げた。


[DATA]
家 族 構 成:夫婦
敷 地 面 積:259.86平方メートル(78.61坪)
1階床面積:118.79平方メートル(35.93坪)
2階床面積:26.24平方メートル(7.94坪)
建 ぺ い 率:49.8%(許容50%)
容 積 率:47.5%(許容100%)
用 途 地 域:第1種低層住居専用地域
躯 体 構 造:壁式鉄筋コンクリート造
設         計:アトリエ・ネロ 根路銘安史、水上浩一

施   工:Lifetect 宮里
電   気:松島電気工事㈱ 名嘉
水   道:㈲ライフ工業 高山
ガ   ス:沖縄ガス(株) 岡田
キ ッ チ ン:(有)モブ 浜崎




[問い合わせ先]
アトリエ・ネロ
098‐889‐0103
http://www.a-nero.com


撮影/矢嶋健吾 取材/川本莉菜子・徳正美
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1732号・2019年3月15日紙面から掲載

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川本莉菜子

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編集者
好奇心が行動源。まち歩きで面白いことを発見した時に興奮し、脇目振らずに追いかけて迷子になること多し。人が住む・暮らす場所にある歴史、知恵、繋がりの面白さを見つけて発信していきたいです。よく県外出身かと聞かれますが、生粋のウチナーンチュです。

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