お住まい拝見
2018年7月20日更新
家族・仲間と遊べる家|冨田浩嗣建築研究所
[お住まい拝見・1、2階で公私分け気兼ねなく]実家隣に2階建てを新築したTさん(48)。1階は趣味のビリヤード室や庭まで一つにつながる「遊び場」。上下階で公私を分けたことで家族も来客も気兼ねなく過ごせる。
キッチンから1階室内を見る。リビングダイニングの先にTさん念願のビリヤード室が続く。掃き出し窓を開け放てばウッドテラスや庭までがつながる大空間に
周り気にせず伸び伸び
Tさん宅
RC造/自由設計/家族4人
「学生のころは映画ハスラーにあこがれてプールバーに通った世代」と笑うTさん。住まいには「模合仲間や家族で遊べる空間が欲しい」との思いを詰め込んだ。
玄関から室内へ足を踏み入れると、手前にLDK、奥にビリヤード室が続く。どちらも東に広がるウッドテラスや庭に面しており、明るく開放感いっぱい。掃き出し窓や、LDKとの間の引き戸を開ければ、1階全体が大きなワンルームになる。普段は家族でくつろいだり、幼い子どもたちの遊び場として大活躍。友人らが訪れた際は、1階が開放的な集いの場となる。
家族も友人も気兼ねなく過ごせるようにと、2階に個室と水回りをまとめたことで暮らしやすく。「上り下りの手間はあるけれど、2階に上がってしまえば、お風呂に入って着替えて寝るまで完結できる」。仲間とビリヤードを楽しむ際も、「子どもたちは気にせず寝られる」と重宝している。
マンション住まいだった以前は隣近所を気にすることも多かったが、「子どもたちがぐるぐる走って遊んでいるのを見ると、家っていいなと思う」と笑顔を見せる。
ビリヤード室から見た1階。西側(写真左手)に設けた擁壁の上部は花ブロックとなっており、風は抜けるが隣家からの視線は気にならない
窓は開けっ放し
家造りを考え始めた当初は、通勤に便利な都心で土地を探していたものの、「それなりの広さを確保しようとするとコストが上がるし、家が密集しているのも気になった」。実家隣の土地を譲り受けたのを機に本格的に住まい造りに着手。木造も検討したが、敷地の高低差が最大2メートル以上あることから、費用対効果を考えRC造とすることに。紹介された建築士のプランが「伸びやかで明るくて、すごく良かった」のも決め手になった。
目の前には集合住宅が建つが、目隠し壁の効果でカーテンなしでも気にならず「昼間は割と開けっ放し」。親子4人、伸び伸びと暮らす。
ウッドテラスは奥行き2メートル、芝庭は2.5メートルあり広々。目隠し壁(右手)は上部を抜いたことで、プライバシーは確保しつつ広がりを感じさせるよう工夫している
外観。1階は目隠し壁、2階はアルミのルーバーを設置することで、ほどよく視線を遮っている
ここがポイント
建物と擁壁一体化 コスト減
Tさん宅の敷地は東の駐車場部分から西に向けて最大2.6メートル以上も高くなる傾斜地。斜面を堀り込んで家を建てる場合、擁壁を設置する必要がある。「擁壁だけで土圧を受けようとするとそれなりの大きさが必要になり、コストもかかる。そこで擁壁を建物や東側の目隠し壁と地中でつないで一体化し=下図赤枠部、全体で土圧を分散。擁壁にかかるコストを圧縮した」と一級建築士の冨田浩嗣さんは説明する。
周囲を集合住宅や隣地に囲まれているため、プライバシーの確保も必須。ポイントとなったのは庭先に設けた目隠し壁と、擁壁との間のドライエリアだ。「どちらも隣地からの視線を遮りつつ一部視線を抜くことで閉塞(へいそく)感を払しょく。西側はドライエリアがあることで1階にも窓を設けることができ、採光、通風に一役買っている」。床下や屋根裏には強制換気を採用し、湿気や暑さも軽減した。
室内は1階にパブリックスペース、2階に個室と水回りをまとめ、上下階で公私を分けた。「洗濯機のある洗面室からウオークインクローゼットを通って物干し場でもあるバルコニーへ行き来が可能。入浴後に着替えて洗濯物を干したり、取り込んで収納したりといった家事が効率良くこなせる」。
夫人の要望だった「子どもたちの様子に目が届く」工夫も。子どもたちが遊ぶLDや庭先までキッチンに居ながら見渡せるだけでなく、玄関から出入りする姿が見える小窓も設置。窓は2階個室の階段側にもあるため、1階に居ながら2階の様子も伝わってくる。そのほか、フローリングやトイレのタイル、キッチンなどは耐久性や清掃性を考慮し、素材を吟味した。
建物裏手に設けたドライエリア。このエリアがあることで建物側面が直接土に接するのを防げ、湿気対策や躯体保護にもつながる
2階から1階キッチンを見る。2階の個室は、階段側の窓を開ければ明かりや声がもれ、中にいる子どもたちの様子が伝わる仕組み/写真左
玄関。Tさんの希望でロードバイクをオブジェ風に飾れるよう工夫。正面の小窓の向こうにキッチンがある/写真右
[DATA]
家族構成 :夫婦、子ども2人
敷地面積 :967.49平方メートル(約292.67坪)
1階床面積:84.42平方メートル(約25.54坪)
2 階床面積:64.66平方メートル(約19.56坪)
建ぺい率 :11.04%(許容60%)
容 積 率:15.41%(許容200%)
用途地域 :第一種中高層住居専用地域
躯体構造 :壁式鉄筋コンクリート造
設 計 :冨田浩嗣建築研究所 冨田浩嗣
構 造 :昭・構造設計
施 工 :(株)大興建設
電 気 :(株)日本電設
水 道 :(有)ライフ工業
[設計・問い合わせ先]
冨田浩嗣建築研究所
090-5104-8997
http://tomita.ti-da.net/
撮影/泉公(ララフィルム) 編集/徳正美
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1698号・2018年7月20日紙面から掲載