お住まい拝見
2018年6月1日更新
大開口で庭とつながるリビング|アトリエ・ダグ・アーキテクト
[お住まい拝見・子どもが伸び伸び遊ぶ造り]本島中部にあるYさん(44)宅は鉄筋コンクリート造平屋建て。複数の庭で、どこにいても緑を楽しめるのが特徴だ。ロフトや低い通路など、子どもの興味もかき立てる。
リビング。幅3.6メートルの大開口で庭とつながり、開放的。内装材として木を多用することで、コンクリート打ち放しの印象を和らげている
2回くぐって頭切り替え
Yさん宅
RC造/自由設計/家族5人
「どこにいても緑が見えるので気持ちが安らぎます」。敷地のあちこちに配置された大小さまざまな庭を眺めながら、夫人(42)が話す。窓を開ければ家中を風が巡り、ヤコウボクの花が咲く時季には家中が甘い香りに包まれるという。
中でもリビングは幅3.6メートルの大開口を全開にすると、室内外が一体化。Yさんは「夏場、床にそのまま寝そべったら、ひんやりして気持ちいいんですよ」。上からは、ロフトを秘密基地のようにして遊ぶ子どもたちの声がこぼれ落ちてくる。公園の木陰にいるような居心地の良さだ。
共働きで、先に帰宅した方がご飯を作るという夫婦。中央にあり家全体の気配を感じられるという広いキッチンには、夫婦で立つことがあるほか、長女(14)が手伝うことも。
料理が出来上がると、ダイニングで宿題をする長男(12)や次男(8)が配膳し、ダイニングが勉強の場からだんらんを楽しむ場へと変わる。
一人でこもれる空間もある。書斎にたどり着くには、まず夫婦室の棚の下に開いた高さ90センチほどの通路をくぐりウオークインクローゼットへ。奥へと進み、もう一度腰をかがめて棚の下を通って行く。Yさんは「2段階のしぐさが必要なおかげで、気持ちを切り替えられます」。また、Yさんが読書をしていると、次男がやってくることも多い。「低い通路が楽しいみたい」と子どもの好奇心もかき立てる。
施工の様子見て愛着
子どもの成長や誕生をきっかけに家づくりを考え始めたYさん。約5年がかりで同じ校区内に土地を求めた。
設計は夫人の妹宅を手掛けた建築士に依頼。将来を見据えた平屋で、庭やランドリールームを設けること、使いやすい家事動線などを要望した。
建築中は毎日、次男が幼稚園の帰りに見学。今では、「手袋をして雑草を抜いたり、掃き掃除をしたりと、家のこととなると積極的に手伝ってくれます」と夫人。家族の愛情を一身に受ける住まいはこれからも、伸び伸び暮らす家族と庭の成長を見守っていくのだろう。
ダイニング。テーブルとイスは現場で作ったもので、イスはリビングで使う際はテーブルにもなる
北側の庭。リビングと子ども室に面しており、それぞれから違った風景を楽しめる
外観。浸水しがちな地域のため、道路よりも床の高さを上げている
ここがポイント
回遊できる間取りで通風
夫人の「庭がほしい」という要望に対し、設計した下地恒さんは「一つの庭を囲むのではなく、庭や坪庭、植え込みを随所に設けて、どこからでも緑を楽しめるようにした」と説明する。
各庭に面した窓は開閉可能にし、間取りも回遊できるようにすることで、風通しの良さを確保。視線が抜けて、開放的な空間づくりにもつながっている。
屋内に設けられたランドリールームでは、「上部と下部に設置されたジャロジー式の窓が通風を促し、乾きやすさに一役買う」。天井近くには棚を設け、ウオークインクローゼットとしても使えるようになっている。
将来の家族構成の変化にも対応。庭に面した子ども室は、子どもが巣立った後に、ゲストルームとして使えるよう畳敷きに。北西角の子ども室は、ランドリールームとの間の壁の一部に木材を使用。子ども3人分の個室が必要になった時には、ここにドアを設けることで、子ども室を仕切ることができる。
暑さ対策としては屋上に敷く遮熱ブロックを活用。天井裏の空間が不要となるため、全体的に階高を抑えることができ、コンクリートにかかる費用の節約にもつながる。
西側には水回りをまとめて、家事のしやすい動線にしつつ、西日による熱が居室に及ぼす影響を抑えた。子ども室では西面に収納を設けた。
コンクリート打ち放しの硬い印象を和らげるため、窓枠や仕切り部分には木を使用。造り付けの家具と同じタモ材を使うことで統一感も出した。
一方、床は少し堅めで長持ちするチーク材に。「使えば使うほどあめ色になるので、塗装はせずにオイル仕上げだけにした」。
広々したキッチン。植木鉢が置かれた右の開口部からはダイニングやリビングの、ポットのような白い置物のある左の開口部からは洗面室の、中央の廊下からは奥の子ども室の様子が分かる
畳が敷かれ落ち着いた印象の夫婦室。右端の棚の下から、隣にあるウオークインクローゼットが見える
ウオークインクローゼットから見た書斎。奥の扉からも出入りでき、夫婦室に面したウッドデッキとつながる/写真左。長女が使う掘り込み式の机。こもった感じで集中できそう/写真中央。洗濯機を回す、干す、アイロンがけが1カ所でできるランドリールーム。床は琉球石灰岩が敷かれている/写真右
[DATA]
家族構成 :夫婦、子ども3人
敷地面積 :226.38平方メートル(約68.47坪)
1階床面積:101.48平方メートル(約30.7坪)
建ぺい率 :48.83%(許容50%)
容 積 率:44.83%(許容100%)
用途地域 :第一種低層住居専用地域
躯体構造 :鉄筋コンクリート造壁式構造
設 計 :アトリエ・ダグ・アーキテクト 下地恒
構 造 :パス建築研究室
施 工 :與那城組
電 気 :シロマ電気
水 道 :国設備工業
[問い合わせ先]
アトリエ・ダグ・アーキテクト
098-836-8813
http://www5.plala.or.jp/dug/
撮影/矢嶋健吾 編集/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1691号・2018年6月1日紙面から掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 出嶋佳祐
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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。