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2018年3月9日更新

制約逆手に 宮古島の家|LSD design(株)

[お住まい拝見 メリハリと遊び心で建築費減]生コンクリート単価が本島の約2倍と言われる宮古島。Kさん(36)宅は、LDK以外の天井高を抑えたり、ロフト部をパントリーにしたり。建築費減をメリハリと遊び心でクリアした。

「好き」が形にKさん宅

Kさん宅
RC造/自由設計/家族4人


LDKと和室は「家族の顔が見える」ことを重視。仕切らず一体的な空間にした。LDK以外は天井高を低くすることで建築費を抑えつつ、空間にメリハリを付けている


建築費の高い宮古島。その厳しい予算計画の中だったからこそ、床面積以上の広がりと、遊び心のあるKさん宅が生まれた。

個性的な外観もその一つ。建築士が「飛行機の翼をイメージした」というグレーの外壁部分のおかげで、「雨が降っていても、車から家までぬれずに移動できて便利」とKさん。そこは、車一台分の車庫の役割を果たす。「車庫がほしい」という希望と、生コンクリートの価格が沖縄本島より高い宮古島で使用箇所を厳選した結果がこの形になった。「僕が飛行機好きだと建築士さんにポロッと話したら、ボーイング767と同じサイズの窓まで付けてくれた」と目を細める。


外観は、飛行機の翼のような外壁が特徴。この翼は車庫の役割も果たしている。窓はボーイング767と同様のサイズになっている。飛行機好きのKさん自慢のデザインだ

室内は、LDKと和室が一体となった開放的な造り。その中央に鎮座するアイランドキッチンは、人の出入りや家族の様子に目が行き届く、さながら操縦席だ。夫人(35)は、「間取りはもちろん、ダイニングテーブルやキッチン前面の装飾などもお気に入り。私好みの雰囲気にまとめてもらった」と満足げに話す。


リビングからキッチンを見る。板材をモザイク調に貼ってデザインされたアイランドキッチンは夫妻のお気に入り。写真左側は書斎とパントリー
 

家族の秘密基地も

もう一つ、夫妻の要望から成る面白い空間が、掘り込み書斎と収納スペースのパントリー。LDKの一角にある。書斎は、隣接するダイニングより45センチほど低い場所にあることや、2坪という小ささから、守られているような安心感がある。そこは、Kさんが読書をしたり、夫人がパソコンをしたり、長女(8)と次女(5)がままごとをしたり、家族皆の秘密基地だ。書斎から玄関へは、小さな扉から出入りできる。

書斎上部にあるパントリーは「片づけが苦手」と言う夫人にとって「何でも隠せる重宝な場所」。ひな人形やクーラーボックスなどをしまっている。

予算との兼ね合いで、「書斎や収納までは無理かなと思っていたけれど、ちょうどいいサイズで造ってもらえた。年が近く、話が合う建築士さんにお願いしたのは正解だった」と夫人。祖母の家があった土地を譲り受け、「好き」「ほしい」をギュッと詰め込み建てたマイホーム。家族の笑顔が満足度を物語っていた。


上はパントリーで下は書斎。パントリーは階段からも写真上部の窓からも物が出し入れできる。階段下のスペースも書斎の一部になっている


書斎と玄関は小さなドアでつながっている。娘たちの格好の遊び場だ


ここがポイント
生コン使用部を厳選

宮古島の物件を多く手掛けているLSDデザインの建築士・比嘉幹さんは、「本島より生コンクリート単価の高い宮古島では、その使用量が建築費に大きな影響を与える」と語る。Kさん宅でも、「コンクリート使用部を厳選した」と説明する。

外壁や水回りの壁はコンクリートだが、室内の壁は木を多用。「間仕切りに建具や木を使うことで、コンクリートの使用量を減らしながら、将来の間取り変更にも対応しやすくした」と、未来のコスト減も見据えた。

天井高はLDKが270センチで、その他の空間は220センチと、50センチ低くして生コンの使用量を減らした。「家全体の天井を低くすると圧迫感が強くなる。メリハリを付けて、LDKが広く感じるように設計した」。

LDKの天井高を活用し、要望のあった書斎とパントリーを造った。「書斎は建物の基礎を利用して45センチ床を下げて大人が立って歩けるようにしている。その上にパントリーを積み上げることで、坪数を広げず要望の部屋を確保した」と説明する。



LDKの天井高は270センチだが、それ以外の場所は220センチ。50センチ分、コンクリートの使用量を減らした。書斎は床を45センチ低くしたが「基礎を利用しているから、造成工事は必要最小限にとどめられた」と建築士の比嘉さんは語る


書斎には遊び心をプラス。床の低さを生かし、玄関との間に、不思議の国のアリスのような小さなドアを設けた。“オウチ〟の形をした扉は、かわいらしい室内の雰囲気を引き立てている。

比嘉さんは、「打ち合わせでは、家造りに関係ないこともお話しする。施主の好みを探り、暮らしが楽しくなる『遊び』を入れることも心がけている」と語った。


子ども室は二つに区切れるようになっている。壁紙は長女、次女がそれぞれ自分の好きなものを選んだ


トイレの一部には、夫人が選んだタイルを貼った。室内のかわいらしい雰囲気とマッチしている1階


[DATA]
家族構成:Kさん夫妻、子ども2人
敷地面積:430.34平方メートル(約130.40坪)
1階床面積:101.41平方メートル(約30.73坪)
建ぺい率 :31.30%(許容60%)
容 積 率:23.57%(許容200%)
用途地域 :第1種中高層住居地域
躯体構造 :鉄筋コンクリート造壁式構造
設  計 :LSD design(株)比嘉幹、安慶田健太
構  造 :(株)濱川構造設計
施  工 :LSD design(株)
電  気 :東光電気(株) 上地勝則
水  道 :合同会社アルファー産業 塩川達也



[問い合わせ先]
LSD design(株)
098-894-4282
http://www.lsd-design.co.jp


撮影/比嘉秀明 編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1679号・2018年3月9日紙面から掲載

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スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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