お住まい拝見
2015年6月19日更新
2階リビングが◎ 家族の気配程よく|studio jag1級建築士事務所
2年前、沖縄本島中部、宜野湾市の住宅地に新居を構えた下地さん(35)一家。鉄筋コンクリート造2階建てで、2階にリビングを設けた住まい。下地さんは「上下階を風が抜け心地良い。リビングと子ども部屋も一体的に使え、家族がいつも一緒に過ごせるのがいい」と、目を細める。
みんな一緒に過ごせる
下地さん宅(家族4人)自由設計 RC造
2階子ども室からリビング、キッチンを見る。奥のキッチンは独立型だが、横に目をやればリビングの家族の様子がうかがえる。造作家具は、結婚当初から持っていた収納に色を合わせた
使い勝手のいい空間
1階に寝室と水回りのプライベート空間をまとめ、2階にリビングなど生活の中心となる空間を据えた下地さん宅。
2階は11・6畳のリビングを中心に、東側に子ども室、南側に和室、西側にキッチンがつながる。大きな開口部に面した子ども室は、リビングと一体的に使っている。「家族が同じ場所で、一緒に過ごせるのが気に入っています。子ども室は建具で仕切れば個室になるし、長い目で見ても使い勝手がよさそう」と下地さん。
キッチンは「片付けが苦手。調理中のにおいが家中に広がるのもダメ」という夫人(35)の希望で独立型に。とはいえ、調理中でも横に目をやればリビングや子ども室が見渡せ、家族の様子がすぐに分かる。「パントリーもあって、広くて使いやすい。料理が好きになりました」とにっこり。
和室にあるつり収納下の小さな空間は、長男(6)と次男(4)の格好の遊び場。「ちょうど玄関の真上。床面が格子状のグレーチングなので、子どもたちはそこから、お父さんに『いってらっしゃい』『お帰り』と声を掛けています」と夫人。
建築士の提案に感謝
以前はアパート住まい。引っ越しを考えた際に家賃との兼ね合いを考え、住宅取得を決めた。土地探しは2年半かけてじっくり。その間、周囲に話を聞いたり本を読み、家づくりの知識も深めた。設計は下地さんの大学の先輩で、手掛けた住宅も好みだった建築士に依頼。敷地購入時から同行してもらい、プランを相談した。
実は当初、2階にリビングがあるのは、階段の上り下りが面倒そうでNGだったという。「でも提案されたプランを見て、夫婦ですぐにこれだ! と一致。空間が柔軟に使えるのが魅力的だった。周辺環境も踏まえたプロの提案に、感謝しています」と下地さん。
1階部分の面積をコンパクトにした結果、「思いのほか庭が広く取れたのも良かった」。芝生や木々を植え、郷里に住む祖母に教えてもらいながら野菜も育てる。「やりとりが増えておばあちゃんもうれしそう。子どもたちも楽しそうに水掛けを手伝ってくれる。これからもっと菜園を充実させたい」。夫人は穏やかな笑みを浮かべた。
リビングの東側(中央奥)は子ども部屋。道路側に設けた開口部が室内に風と光を届ける。同時に外への視線の抜けも生まれ、開放的に
1階西側にある庭。家族でバーベキューをしたり、子どもたちが水遊びを楽しむほか、菜園スペースでは野菜も育てている
外観。ベランダの手すりには、半透明の合わせガラスを採用。周囲からの視線を遮りながら、光を取り込む。駐車スペースは、せり出した2階部分が屋根代わりになり、雨の日もぬれずに出入りできる
ここがポイント
建具で自在に分割 上下階で風抜け涼
東西と北にアパートや住宅が近接している下地さん宅。周囲の視線を遮りながら光と風を十分に取り込めるよう、建築士の久志直輝さんは2階にリビングのあるプランを提案した。広いワンルームをイメージし、2階はリビングを中心に子ども室や和室を隣接させた。「大きな建物のない東側に開口部を設けることで、明るさ、外への視線の抜けを確保した」と久志さん。それぞれの部屋を建具や可動式家具で仕切れるようにしたことで、来客や家族の成長に応じて自在に変えられる空間が生まれた。
1階はプライベートゾーンで、2階より床面積を抑えて寝室と水回りを配置。前面道路に面して設けた駐車スペースは、上部にせり出した2階の子ども室が屋根代わりになり、施主が希望した「雨にぬれずに出入りできる駐車場」を実現した。
敷地は東から西に約1・5メートルの高低差があるが、「数段の外階段と内部の階段を利用して、埋めることなく高低差を解消できた」と話す。
上下階に風が抜けやすい造りで、湿気や暑さを和らげる工夫も光る。1階や階段の踊り場(西面)に設けた地窓から取り込んだ風は、グレーチングとルーバーで仕上げた和室のつり収納の下部から2階に抜ける。
2階の和室。つり収納下部の床面はグレーチング、壁面は木製ルーバーになっていて、1階や階段室からの風を2階に取り込む役割を果たしている。子どもたちの格好の遊び場にもなっているそう
階段。玄関の正面に当たる西面の壁はエコカラットで仕上げ、風を取り込む地窓を設けた。写真右上、キッチンの壁に開口部を設け、1階の声や気配が感じられるようにした
1階のトイレと洗面脱衣室。奥の物干場に抜けられる。トイレの壁面にはアクリル板を使い、圧迫感を和らげた
[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:175.54㎡(約53.10坪)
1階床面積:60.70㎡(約18.36坪) 2階床面積:66.70㎡(約20.18坪)
建ぺい率:38.91%(許容60%) 容積率:61.47%(許容200%)
用途地域:第1種中高層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造壁式構造
設 計:studio jag1級建築士事務所 久志直輝、河上親生
構 造:(株)アサヒ建築設計研究所
施 工:(株)比嘉組
電 気:松島電気工事
水 道:(株)共立技研
[設計・問い合わせ先]
studio jag1級建築士事務所
098-874-2055
http://www.studio‐jag.net
写 真/高野生優・フォトアートたかの撮影
編 集/比嘉千賀子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1537号・2015年6月19日紙面から掲載
この記事のキュレーター
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- 比嘉千賀子
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編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。