お住まい拝見
2018年1月19日更新
今の生活に合わせたリフォームで快適に|建築アトリエトレッペン
[お住まい拝見・60代、生活に合わせリフォーム]「若いころは満足していたが、年を重ねて不便を感じるようになった」と話すMさん(62)宅は、築30年。今の生活に合わせたリフォームで段差がなく、庭ともつながる開放的な空間になり、「楽に動ける」と喜ぶ。
困りごとがすべて解決
Mさん宅
築30年/RC造/家族2人
浦添市の住宅地。Mさん宅は、交通量の多い道路沿いにある。1階は駐車場で、2階にダイニングとキッチン、和室、水回りがあり、3階には寝室と子ども部屋という造りだ。
上の子が小学校に入学した30代の時に新築。「当時の設計の方と話して、私たちに合う造りにしてもらった。モダンな住まいでとても気に入っていました。でも、60代以降の生活をイメージできていなかった」とMさんは振り返る。
年を重ね体力や生活習慣が変化。室内外の段差や、水回りの間取りに不便を感じるようになっていた。亡くなった両親の仏壇を設ける必要も出たことから、定年を前に、老後を見据えて建て替えを考えた。
新聞や講演会などで知り、関心を持っていた建築士に相談したところ、「解体費用が思いのほか掛かることが分かった。躯体は頑丈だったので、リフォームの提案をもらい、お任せすることにしました」。
2階のリビングと和室は庭ともつながり開放的。写真右手のテレビボードには和室の欄間の格子を再利用した。現在のリビングは以前のダイニング部分で(下写真)和室とは段差もあった
リフォーム前
ダイニングとキッチン。対面式にしたことで明るく、家族の様子も感じられるようになった。写真右手の引き戸の奥は、和室から変更した寝室
[リフォーム前]中央の壁を隔てた左奥にキッチンが独立。右手奥は和室
広々、家事も楽に
リフォームしたのは主に2階部分と外回り。夫妻の希望は「バリアフリーで、車イスになってもスムーズに生活できること」で、特にトイレや浴室の使いやすさを重視した。「住まいで優先することが、若いころとは全然違った」とMさん。
室内は、床の段差をすべてなくしてフラットに。広い庭に面したダイニングと壁で隔てられていたキッチンは、スペースを広げて対面式に変えた。LDKから西側の和室まで一体的につながった空間は、庭に面して明るく開放的で、家族の顔もよく見える。「以前は、子どもたちがいない時間に食事の支度をしていたので、独立型でよかった。でも、夫婦二人だと対面式のほうが孤立感がなくていい」と夫人。
階段下にあり、狭かったトイレはキッチンと浴室の間へ移動。スペースも広げた。水回りが横並びにまとまり、「家事が楽になった」と喜ぶ。
外回りは玄関ポーチの段差を解消。東側の歩道に面した勝手口とポーチを結ぶ空間にスロープを設けるなど、車イスで出入りしやすい環境も整った。Mさんは、「不便さが全て解消されて満足しています」とにこやかに話した。
トイレはドアを親子開きにして広い間口を確保。天井中央に走る配管をボードで隠しおしゃれに塗装。デザイン的に見せた/写真左上。キッチン。正面奥にある物干し場まで、洗面脱衣室を通って一直線。愛犬の居場所となっている物干し場からは、勝手口と玄関ポーチにアクセスできる/写真中央。広く取った玄関前の廊下。突き当たりには、階段下から移動したトイレがある。リビングと廊下を隔てる壁(写真右手)から漏れる照明が、室内の気配を伝える/写真左上
ここがポイント
室内外つなぐ仕掛けも
庭
庭からリビングと和室を見る。広い庭だが、リフォーム前は外からの視線を遮るため、ベンジャミンをヒンプンのように一列に並べて植えるだけで、リビングと庭は分断された状態だった。リフォームでリビングの庭先に弧を描く開放的な縁側を設け、庭の植栽と造りも一新。室内外がつながる仕掛けとした。竹でしつらえた光悦垣(こうえつがき)=写真左手=が、前面道路や隣家からの視線を遮る。
玄関ポーチの回りも段差を解消。中央の木戸の奧にスロープがあり、勝手口に抜けられる
リフォーム前
玄関アプローチは、閉鎖的な門壁と段差をなくして出入りしやすくした
リフォーム前
Mさん宅は敷地が広く、建物の床面積も広いわりに、キッチンや洗面、トイレといった日々の生活に重要な空間が極端に狭く、使いづらい造りになっていた。その上、床には段差も多かった。リフォームを手掛けた建築士の照屋寛公さんは、「以前のスタイルを生かしながら、現在の暮らしやライフスタイルの変化で生じた困りごとを解決するプランを提案しました」と話す。まず、室内は床の段差をなくし、家事や介護がしやすいように、キッチンの並びに水回りを一直線にまとめ、スムーズに移動できるように動線を整理した。
元のスタイルも生かして
キッチンを対面式にしたことでLDKから和室まで連続した空間になり、家族の顔がいつでも見えるように。「リビングの先に開放的な縁側を設けることで、屋内外のつながりも生まれました」と照屋さん。廊下やトイレは、車イスでの生活を見据えて広く取った。
強烈な西日が悩みだったリビングに隣接する和室には、可動式ルーバーを設けて入り日をカット。出窓下にあった収納には照明を仕込み、飾り棚に仕立てた。使われていなかったキッチン東側の和室は、一部をキッチンの拡張に充て、残った部分は夫婦の寝室に造り替えた。ワンフロアで生活が完結する環境を整えた。建物は築30年だが躯体は状態が良く、よう壁などに見られた小さなひび割れの補修や外壁の塗装をし直す程度の修繕で済んだ。
[DATA]
家族構成:夫婦
施工面積:105平方メートル(約31坪)
躯体構造:鉄筋コンクリート造
築年数 :30年
工 期:約2カ月
設 計:建築アトリエトレッペン
照屋寛公、(スタッフ)橘木純次、桃原真紀
施 工:新都開発 山里高幸
電 気:山川電気 山川輝明
水 道:春水工業 新里直人
造 園:末吉園 普天間直利
キッチン:共立太陽住器 東江しのぶ
[設計・問い合わせ先]
建築アトリエトレッペン
098-859-0710
http://www.treppen.jp
撮影/比嘉秀明 ライター/比嘉千賀子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1672号・2018年1月19日紙面から掲載
この記事のキュレーター
- キュレーター
- 比嘉千賀子
これまでに書いた記事:152
編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。