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2017年7月21日更新

風が巡る築40年の家|アトリエガィィ

[お住まい拝見・古民家とRC融合 共生のヒント]40年前、クーラー嫌いな施主が幼なじみの建築士と建てたのは、RCと伝統的な木造古民家を融合した、家中に風が巡る住まい。自然と共生するアイデアは今も色あせない。

お住まい拝見|アトリエガィィ
台所側から見た大広間。大窓から入った風は勾配天井・吹き抜けを伝って各居室へ。窓外にある開閉可能な無双式の木ルーバーが、視線や日差しを程よく遮る

 

日中も室内ひんやり

Tさん宅
RC造/自由設計

アジアの民具がセンス良く配された室内。「どれも旅先やのみの市に出掛けた際、亡くなった夫と一緒に買い集めたもの」と夫人。長年使い込まれ、あめ色になった床や建具にマッチする。
40年前の建築当時、高校教師だった故・Tさんが建築士と作り上げたのは、北西・南東を貫く吹き抜けのLDKを軸に、左右に個室を振り分けた2階建て。「風を入れ、クーラーを使わず生活したい」と、随所に風が巡る仕掛けを施した。
外壁の花ブロックが朝夕の日差しを遮り、大広間の窓外では開閉できる無双式の木ルーバーが周囲の視線や光・風をコントロール。風は、仕切りのない大広間の窓から各居室へ行き渡るだけでなく、床下の通風口から壁内の換気筒を伝って家中に循環する。
2階の個室脇に伸びる換気筒は台風時の雨漏りでふさいだものの、屋上緑化などは当時のまま。「日中でも帰ってくると空気がひんやり。ホッとします」と夫人は話した。


大広間から台所方向を見る。窓や建具の木サッシはすべてオリジナル。吹き抜け両サイドに見える造り付けの飾り棚の裏手が縦方向の換気筒。飾り棚上部から床と平行に横方向にも換気筒がのびている
 

思い出が愛着に

もう一つTさんが要望したのは教え子や飲み仲間が集える大広間と、来客に対応できる間取りだ。多い時は一度に30~40人集まったことも。夫人は「個室や水回りは2階にもっていって大正解。当時は下の子が生まれたばかりでしたから、子どもたちをお風呂に入れたり寝かしつける時もお互い気をつかわずにすみました」と振り返る。
20年前に改修。その際、2階にあった水回りは水漏れしていたこと、また将来も考え、1階の台所隣へ移動。床を張り替え、外壁を塗装した。
そうして築40年がたった今、子ども部屋は長男・長女家族が遊びにきた際のゲストルームとして活用。子どもたちが幼いころ鬼ごっこした広間や階段では、孫たちが元気に走り回る。
Tさん主体で進めた家づくりに「虫や台風時の吹き込みなど不便さもありましたが、どこにいても光も風も入ってくるから気持ちよくて。今では全部私の特等席」と夫人。木サッシへの思い入れは格別なようで「冬の隙間風が寒くて取り換えも考えたけれど、なくなるのは寂しくて。子どもたちも気に入ってますから、住める間は住み続けたい」と笑顔を見せた。


コンパクトで使いやすい台所。夫人のリクエストで「元気の出る赤」をタイルや収納扉に採用。勝手口の無双窓から風が抜け「煙やにおいも気にならない」


ここがポイント

室内・床下・壁裏
自然換気で健やか



東南上空から見た外観。屋根には土を乗せ屋上緑化で断熱。花ブロックが朝夕の日差しや台風時の強風を和らげる(建築士提供)


「風が通る家に」と建築士の佐久川一さんが提案したのは昔ながらの知恵と最新技術の融合。「骨組みにコンクリートを採用した以外は、間取りや構造、材まで、極力古民家のそれを生かすことにした」。
間取りは古民家に見る田の字型をヒントに9分割。北西・南東の対角線上に大広間、食堂、台所を置き、左右に個室を振り分けることで大きな風の流れを作った(下図参照)。




風水の家(風の塔・通路)の概念図
左は断面の、右は平面の風の流れの概念図。建物中央にある吹き抜けの両サイドには縦方向の換気筒(風の塔)、そこから東西に向けて横方向の換気筒(風の通路)を設けることで、閉め切っていても室内は常に外気と触れている状態。二つの換気筒は各部屋とつながるだけでなく、床下の空気層と屋根裏のふところも結び、室内の隅々に新鮮な外気がめぐる




食堂吹き抜けの両サイドには、縦方向に風が抜ける換気筒(風の塔)と横方向の換気筒(風の通路)をつないで設置している(上図参照)。
「外出時も自然換気でき湿気や暑さ対策に有効」で、人も家も健やかに。室内に風を呼び込む大空間は「コンクリートだからできたこと」と説明する。構造も、昔ながらの寄棟づくりを参考に「日差しや台風対策になる低く深い軒、換気を促し豊かな空間づくりにもつながる吹き抜け」を作り上げた。
「横方向の換気筒は一部木仕上げだったため雨漏りで閉じざるを得なかったが、材を検討すれば考え方は有効。環境・エネルギー問題が深刻な今後にこそ生かしたい」と話した。

湿気や熱コントロール “風水の家”​


建築当時の大広間(右・建築士提供)。手前にあるのが「風のコタツ」。くり抜いた床に無双式のルーバーが敷かれており「座るとお尻が寒過ぎるくらい」と笑う夫人。現在は閉じている。


吹き抜け両サイドの飾り棚の裏が縦方向の換気筒(写真左)
大広間の窓外にある無双式の木ルーバー。アマハジと相まって視線を遮りつつ風を取り込む。下に見えるのが床下の換気口。口も大きく数も多い(写真右)





[DATA]
敷地面積 :193平方メートル(約58坪)
1階床面積:88.54平方メートル(約26.7坪)
2階床面積:40.8平方メートル(約12.3坪)
建ぺい率 :51.8% 
容 積 率:67%
躯体構造 :鉄筋コンクリート造
設  計 :アトリエガィィ 佐久川一
施  工 :瀬長組



[設計・問い合わせ先]
アトリエガィィ
098-897-1379
http://www.atelier-gaii.com/


写真/泉公(ララフィルム) 編集/徳正美
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1646号・2017年7月21日紙面から掲載

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