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2017年6月9日更新

急斜面に「平屋風」|(有)アトリエ・ノア

[高低差7メートル 2棟を階段でつなぐ]敷地手前から奥にかけての高低差は7メートル。そこに「平屋風」の家を望んだNさん(41)。建築士は家を「公」と「私」の2棟に分け、真っすぐに延びる階段でつなぎ要望をかなえた。

Nさん宅
RC造/自由設計/家族4人


Nさん宅の敷地は、写真左の接道側から奥にかけて7メートルの高低差がある。家は斜面に寄り添うように建つ。家の中央に駐車場があり、そこから室内への出入りも可能


1階のLDKと和室。和室とダイニングの床下には収納がある。ダイニングの西側(写真中央奥)の掃き出し窓からは駐車場へ出られる。夫人(42)は「たくさん買い物をしたときとか、雨の時はここから出入りしています」と重宝しているようだ
 

無駄ない動線

設計した建築士から「急斜面にある3階建ての家」とは聞いていたが、実際に外観を見て驚いた。
道路に接する東側から敷地奥の西側まで、高低差が7メートルある斜面に寄り添うように建っていて、すべての階が地面に接している。
Nさんの「家族の気配が伝わる平屋風の家」との要望から成った形だ。
1階には、LDKと和室が一体となった伸び伸びした空間が広がる。
ダイニングの脇からは、真っすぐに階段が延びる(下写真)。


子どもたちが顔を出しているところが2階で奥が3階。真っすぐな階段は、視線を妨げず声や気配も伝わりやすい

階段の途中にある2階には浴室とウオークインクローゼットがある。さらにもう一つの扉を開けると眺望の良いテラスへ続く。1階の屋上を活用したそこは、物干し場やバーベキューを楽しむ庭として使っている。
3階には大きな開口部が自慢の子ども室と、寝室がある。
1階「公」の空間と、3階「私」の空間は、階こそ離れているが、真っすぐな階段は視界を遮らず、声や気配を伝える。
Nさんは「1階で夕食を食べて、2階でお風呂に入って着替え、3階で寝る。朝はその逆。無駄のない動線が気に入っている」と満足げに語る。​
 

坂の利 収納・駐車場

この土地を購入したのは、小中学校に近い立地の良さと「知り合いから紹介された建築士に相談したら、面白い家が建てられると言われた」からだ。付近の土地の半額近い値だったことも背中を押した。
制約だった高低差のおかげで、1階の屋上にテラスが造れ、和室やダイニングの床下には収納がたっぷり設けられた。さらには斜面をスロープとして使い、外階段を使わずとも室内に入れる位置に駐車場も確保できた。
「この土地でなければ、理想の家は造れなかった」。Nさんの言葉が印象的だった。


ここがポイント

階段回りの空間
有効活用

「30坪程度で、平屋風の家」。Nさん家族の要望はシンプルだったが、敷地には急斜面という大きな制約があった。
設計を手掛けた建築士、アトリエ・ノアの本庄正之さんは、敷地を調査した上で「地盤はしっかりしていたし、眺望もいい。面白い家が建てられる」と確信したという。
敷地は当初、約120坪で売られていたが、建ぺい率(敷地面積に対し、家が建てられる建築面積を表す)が50%の場所だったことから、「購入するのは60坪でいい」とアドバイス。Nさんは不動産会社と交渉の末、必要分のみを購入し家造りを始めた。
7メートルもの高低差がある土地で、まるまる30坪分の敷地を造成すると工事費がかさむ。そこで本庄さんは家を2棟に分ける造りを提案。土地を平らにする「切土」などの工事を、それぞれの場所で小さく済ませることができた。
その2棟を真っすぐな階段でつなぐ際、階段の上下に空間ができる。そこも無駄なく活用。下側には2台分の駐車場を確保。「道路のそばではなく、あえて家の中央に駐車場を造れば外階段を使わず室内に出入りできる」とのメリットも踏まえてのことだ。
上側は、天井が低くても影響の少ない浴室にした。動線を考え、2階の浴室横にはウオークインクローゼットも設けた。
斜面に寄り添う家は、Nさん家族にもしっかり寄り添っていた。


3階の子ども室。長男(9)の部屋は、長女(7)の部屋より4段分ほど上がっている。これは下にある浴室とウオークインクローゼットの天井高を確保するため。階段で座って本を読んだりと、子どもたちは自由に使う


1階のLDKの屋上を活用した2階のテラス。写真左上に見える窓は、長男の部屋の開口部


浴室には、隣家の無い北側に大きめの窓があり、圧迫感を感じない​

北側立面図
1階と、2階+3階の2棟に分かれている。2棟がそれぞれの場所で土を留める「よう壁」の役目も果たす


[DATA]
家族構成 :夫婦、子ども2人
敷地面積 :198.25平方メートル(約59.89坪)
1階床面積:61.76平方メートル(約18.66坪)
2階床面積:22.18平方メートル(約6.7坪)
3階床面積:42.91平方メートル(約12.96坪)
建ぺい率 :49.54%(許容50%)
容 積 率:59.48%(許容100%)
用途地域 :第一種低層住居専用地域
躯体構造 :鉄筋コンクリート壁式構造
設   計:(有)アトリエ・ノア 本庄正之・前田雅弘
構   造:(有)建築設計 庵
施   工:総合建設業 池村組
電気・水道:丸善電設

[問い合わせ先]
(有)アトリエ・ノア
098-884-2404
http://www.a-noa.co.jp
 


写真/比嘉秀明 編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1640号・2017年6月9日紙面から掲載

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東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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