お住まい拝見
2017年4月28日更新
家事がスムーズ! コンパクトな平屋の家|(有)アイ・エイチ・エー設計
築50年の住宅を建て替えたAさん(48)。敷地の高低差を利用し、車庫と住居部分で高さを変えたコンパクトな平屋は、短い動線で日々の家事ストレスを軽減する。
Aさん宅
補強CB造/自由設計/家族4人
1階のリビングからキッチンを見る。壁も建具も白で統一し爽やか。写真右手の廊下奥にある勝手口から車庫へと出入りできる
明るくて落ち着ける
読谷村内の住宅地。20年近く暮らした夫人(46)の実家が老朽化し、建て替えを決めたAさん夫妻。「娘(17)も息子(15)も高校生、あと数年で巣立つ。夫婦二人になったら、物を増やさずシンプルに暮らしたい」と、コンパクトな平屋建てを希望した。
車好きのAさんは、「車庫から家に出入りできること」を重視した。東西にゆるやかに傾斜し、1.5メートルの高低差がある敷地。住居部分を高い地盤に合わせ、車庫は西側の前面道路の高さに下げて空間をつなぎ、勝手口を通して出入りする。車庫は念願のシャッター付き。「前の家はシャッターがなく、ほこりが吹き込んだ。これで万全。後々お気に入りの車を購入して楽しみたい」とにっこり。
住居部分は約30坪。庇の深い南側のテラスに面してリビングとキッチン、和室がL字に配置され、北側に個室が並ぶ。「どの部屋も明るいし、窓を開ければ風が抜けて気持ちがいい」と夫人。
リビングを広く使えるよう設計時に食卓は置かないと決め、キッチンにカウンターを設けた。「子どもたちは部活や塾があって、食事の時間は家族でまちまち。うちにはカウンターがちょうどいい」。
キッチンの背後には家事室とウオークインクローゼット、廊下を挟んで洗面・浴室があり、勝手口から車庫脇の干し場に抜けられる。「家事が楽になりました。家事室は3畳ほどですが、明るくて落ち着ける。アイロン掛けはもちろん、本を読んだり、パソコン作業をしたり。一日中いても飽きない」と気に入っている。
約13畳のリビングは、背もたれの低いソファーを置くことで圧迫感を緩和
ダークな色合いでまとめたキッチンは収納もたっぷり。正面奥に見えるのは和室/写真右
夫人お気に入りの家事室は、細長い天窓から光が差し込み明るい。背後(写真左)にウオークインクローゼットがある/写真左
将来の暮らし見据え
設計は、知人の紹介で出会った建築士事務所に依頼した。「相談した中で、設計のセンスが一番好みだった」ことが決め手になった。キッチン南側にある和室は、長男のリクエスト。「前の家にも畳があったからか、落ち着くみたい。作る予定ではなかったけど、作って正解でした。トイレにも近いので、将来はここで寝起きするのもいいかも」と夫人。
人を招くのが好きな新垣さんは、テラスの整備を思案中。「テーブルやイスを置き、日よけのテントも伸ばして、ホームパーティーをしたい」。楽しみはますます増えそうだ。
ここがポイント
高低差つけ程よい距離
Aさん宅の課題は、①敷地の高低差 ②コンパクトな住居空間を圧迫感なく、どう効率的に使うかの2点だった。
敷地は東から西に傾斜し、高低差は1.5メートル。西側に前面道路、ほか3面に隣家がある。①について建築士の伊波米次さんは、住居の設計地盤を高い部分に設定し、車庫は道路と同じ高さになるよう1.15メートル下げて、それぞれの空間をつなぐ設計を提案した。
住居部分の地盤を上げることで擁壁の高さは60センチから1.5メートルになり、費用は約200万円の増額になった。それでも、住居が隣家から見上げる位置になることで視線が遮られ、南風を十分に取り込むことができるなどメリットは大きい。
「住居部分と車庫の高低差があることで適度な距離感が生まれ、空間分けもできる」と伊波さん。
②ではまず廊下を極力なくし、キッチンの背後に家事室やクローゼット、水回りをまとめ、効率的な家事動線に。また、リビング南側にテラスを、個室と浴室の北側にコートを設けて視線の抜けを作り、採光も図った。「テラスの庇は2.5メートルと深くし、リビングの奥まで日差しが届かないようにした。庇が深いと室内が暗くなりがちだが、外壁も内壁も白にしたことで明るさが出た」。
引き戸や掃き出し窓を天井いっぱいの高さにしたことも、圧迫感解消に一役買っている。
勝手口から車庫を見下ろす。上部に設けた高窓が室内にも光を届ける/写真左
テラス(写真左手)に面した和室は4畳半。地窓からも視線が抜け、広く感じられる/写真中央
来客用(右手)と家族用に分かれた玄関。引き戸で仕切れるようになっている/写真右
西側の外観。「車庫の隣に2台分の屋外駐車スペースもあって助かってます」とAさん
断面に見る工夫
北東側の奥と道路に面した西側で1.5メートルの高低差があった。その差を生かし、前面道路に接する車庫部分を1.15メートル下げた
[DATA]
家族構成 :夫婦、子ども2人
敷地面積 :271.67平方メートル(約82坪)
1階床面積:145.13平方メートル(約44坪)
建ぺい率 :59.28%(許容60%)
容 積 率:42.74%(許容200%)
用途地域 :第一種低層住居専用地域
躯体構造 :補強コンクリートブロック造
設 計:(有)アイ・エイチ・エー設計 伊波米次、呉屋さゆり
構 造:(有)長嶺総合設計 長嶺安一
施 工:(有)平良建設 源古恭成
電 気:(株)真和電工 池宮義昭
水 道:(有)名設 知名定敏
キッチン :(株)モンシュマン 下地裕美
[問い合わせ先]
(有)アイ・エイチ・エー設計
098-890-1325
http://www.iha‐design.jp
写真/高野生優(フォトアートたかの) 編集/比嘉千賀子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1634号・2017年4月28日紙面から掲載
この記事のキュレーター
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編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。