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2015年9月11日更新

緑の風景と一体に 涼を感じ伸び伸び|アトリエネロ

沖縄本島南部、敷地の北側に木々の緑、東から南側の眼下には住宅地が広がる丘の上に建つ新川清則さん(55)宅。芝生で覆った勾配屋根、土間、南側に開いたぬれ縁など、昔ながらの民家のエッセンスを取り入れた住まいだ。「風が抜けて涼しい。細かいことを気にせず家中ラクに過ごせる」と住み心地の良さを実感している。

土間中心に暮らし自在

新川清則さん宅(家族3人 自由設計 RC造)


芝生で覆われた勾配屋根が印象的な住宅外観。屋根を緑化することで太陽熱の影響を効果的に和らげる。緑が残る周囲の風景にも調和し、安らぎを感じさせる

共働きで平日は忙しいものの、休みの日にはキャンプをしたりカヌーを楽しんだり、アウトドアで過ごすことが多い新川さん一家。
家を建てるなら「職住一体で家事や集いが気楽にできる家を」と気心の知れた建築士に設計を依頼。建築士と共に描いたのが、土間を中心に固定の間仕切りを極力なくし、生活の場と仕事場を緩やかにつなげた平屋建てだ。
玄関を入ると天井高約4メートルのコンクリート土間の広間を中心に、オープンな空間が広がる。南側に和室と新川さんの仕事場、西側に水回り、北側に家族3人の個室が並ぶ。
「妹の家に土間があって使いやすそうでいいなと思っていた」と夫人。台所まで一続きの土間は「調理中、油がはねてもひと拭きで済むし、掃き掃除もラク」。アウトドア道具を手入れしたり、大人数の集いにも柔軟に対応できる。
各個室は土間より床高を40センチほど上げてあり、腰掛けるのにちょうどいい高さ。好きな場所に座ってユンタクできたり、引き戸の開閉で広間とのつながりを自由に調整できることも、生活のしやすさにつながっている。

家全体が半戸外に
もう一つ、居心地の良さを生み出しているのが風通しの良さ。屋根の緑化をはじめ広間や台所の高窓、玄関扉のルーバーなど、さまざまな換気の仕掛けが涼風を呼ぶ。
屋根を覆う芝生には雨水をためて散水できるよう、新川さん自ら半年がかりでコツコツとタンクと配管も設置した。「作業が面倒と思ったこともあったけど、芝生が元気なおかげで家の中も外からの見た目にも涼しい。頑張って良かったと思う」
休みの日、ぬれ縁や和室に寝転がれば、風を感じながら夕景や月の美しさに目を奪われる。「家全体が半戸外の感覚で過ごせて、あれこれやるのも気負いがない。いろいろな意味でバリアフリーな家」と笑う夫妻。
住むほどに使い方のアイデア広がる住まいだ。


土間の広間。多目的に使える。玄関側の軒にあるルーバーから風が入り、格子扉(左)上部にある高窓(内倒し窓)を通って高窓(右)へ風が抜ける


すっきりシンプルな台所。奥には家事室や浴室などが配置され、家事がスムーズにできる


個室は引き戸と窓を開けると、風が通り広間とオープンにつながる。床は腰掛け代わりになるほか、下は収納スペースとして活用


ぬれ縁。景色を眺めながらくつろぐ新川さん(右)と息子


ここがポイント
躯体の耐久性高め熱ためない工夫も

構造設計者の新川さんは、自宅の設計を、何度も仕事を共にしたアトリエ・ネロに依頼。建築士に依頼した主な希望は、「耐久性の高い躯体」と「使い勝手のよい土間」、「涼しく過ごせること」だった。
アトリエ・ネロでは、北西に面して木々の緑が連なり、東南に視界が開ける敷地の形状を生かして生活スペースを計画。土間を中心に東側に家族が集う広間や和室を、水回りを西側に、北側には家族3人それぞれの個室を設けた。
躯体は、密度が高く耐久性のある「ひび割れないコンクリート工法」を採用。勾配屋根は周囲の景観との調和やふく射熱を抑える効果を考慮し、芝生を張った。
熱気を効果的に逃がし、風通しを促す工夫もポイント。同設計事務所の根路銘安史さんは「オープンな間取りと外に開いた造りで風を抜けやすくしたほか、天井近くに高窓を数カ所設け、採光と排熱を促しました」と解説。常に外気を取り込めるよう、玄関スペースの上部にはルーバーを設置した。このほか、台所は排気塔の役目もあるという。料理の際に発生する熱が上昇気流をつくり、他の部屋の熱気を引っ張って北側の高窓から外へ逃がす効果も狙った。
自然の換気システムと緑化で、真夏日でもエアコン要らずの涼しい住まいとなった。


南側に面した和室。窓を開けるとぬれ縁と一体的に使え、客人をオープンにもてなせる場に。4・5畳とは思えないほど、開放感たっぷり


 涼をもたらす工夫 
景観効果・熱軽減担う屋根

周囲の景観との調和、ふく射熱軽減にも効果的な屋上緑化。雨水散水システムは新川さんが自身で考案し、設置。「屋上に上がるとより視界が開けて爽快」と新川さん=編集部撮影

機能性抜群の玄関

住居と仕事場の出入り口を兼ねる玄関スペース。上部は換気用のルーバーになっていて風や光もよく通る。格子戸手前、左側が仕事場、正面が住宅になっている。格子扉はフルオープン可能


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども1人
敷地面積:527.04㎡(約159.4坪)
1階床面積:120.92㎡(約36.6坪)
建ぺい率:23.13%(許容50%) 容積率:22.94%(許容100%)
用途地域:第一種低層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造壁式構造
設 計:アトリエネロ 根路銘安史、水上浩一、吉岡雄一郎
構 造:パス建築研究室 新川清則
施 工:(有)匠建 山川欣也
電 気:松島電気工事 竹島寛
水 道:(有)龍設備工業 稲福修
玄関扉:まっくるー屋工房 伊礼聡、新垣範雄

[設計・問い合わせ先]
アトリエネロ
098-889-0103
http://www.a-nero.com

写 真/高野生優・フォトアートたかの撮影
編 集/週刊タイムス住宅新聞編集部

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1549号・2015年9月11日紙面から掲載

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