お住まい拝見
2016年10月14日更新
外はRC造 内は木造[伸びやかな「回」空間]|(株)デザインネットワーク
[強さと温かさを両立]宜野湾市大山の高台に建つGさん宅の外観は台風に強い鉄筋コンクリート造(RC造)で室内は温かみのある木造。両立の良いトコ取りをしたハイブリッド住宅だ。
3階から2階のダイニングを見下ろす。写真右側に鉄筋コンクリート造(RC造)の壁が見えるように、外側の構造はRC造でその中に木の床や柱などが組み込まれている。
伸びやかな「回」空間
Gさん宅
混構造(RC造+木造)
自由設計/家族5人
2階のダイニングから、リビング、アマハジテラス①まで真っすぐに部屋が続く。南東の大開口(写真奥)と上の吹き抜けの効果で、なんとも開放的
宜野湾市の傾斜地。Gさんは父親から譲り受けた土地にコンクリート打ちっ放しのモダンな家を建てた。低くなった1階部分はピロティ式の駐車場、高くなった2階部分に玄関があり3階までが住宅だ。
ここまでは、県内で珍しくないタイプの家。
室内に入ると印象は一変。木の香りが漂い、杉材の柔らかな足触りに和む。木の柱や梁が目に飛び込んでくるそこは、間違いなく木造の空間だ。
沖縄生まれのGさんは「台風にも強い鉄筋コンクリート造」を希望。本土生まれの夫人(45)は「なじみ深く、温かみのある木造に住みたい」と思っていた。
建築家は両方をくみ取り、鉄筋コンクリートで2階分(2・3階部分)の大きくて頑丈な「箱」を作り、その中に杉の床や壁、柱や梁を組み込んだ。
大空間の中央、2階には家族の集うリビング・ダイニングがある。3階天井まで吹き抜けになっていて、上方向への抜けと北西と南東の大開口による横方向への抜けで、抜群の開放感。
だんらんスペースをぐるりと見下ろす形で、3階の「多目的スペース」があり、その下に浴室やトイレ、キッチンや寝室が配されている。いわば「回」の字形の間取りだ。
やんちゃ盛りの三男(4)が階段を駆け上り、お気に入りの太鼓を持って踊りながら3階をぐるっと1周。2階から見上げるGさんは「毎日こんな感じ。体育館みたいな家って、よく言われます」と笑う。
2階の庭で遊ぶ子どもたち。疲れたらウッドデッキテラス(写真右)と、リビングの間にある半屋外空間「アハマジテラス①」でひと休み
「天空のキッチン」
キッチンは北西の隅にある。実はここが、家の中で一番眺めが良い。キッチンの半分はダイニングに面し、もう半分はテラス②に飛び出している。
コンロの前が特等席で、外との距離がグッと近づく。夫人は子どもたちの様子を伺いつつ「今日は空の色がいつもと違うとか、雲の形が面白いな、とか。気持ちよく家事ができる」と、「天空のキッチン」を満喫している。
長男(10)と次男(9)は庭でハンドボールの練習。疲れたらリビングとひと続きになった半屋外空間「アマハジテラス①」=右写真=で涼む。
それぞれが好きな場所で過ごしつつ、互いの気配を感じられる。開放的な「回」空間は家族をつなげる。
傾斜地に建つGさん宅。高くなった2階に玄関を配置。低い1階はピロティ式の駐車場。玄関があるのは西側のため、西日対策で開口は最小限。コンクリート打ちっ放しの外観と、木造の室内は印象は真逆。「ウチに来たお客さんは皆、ギャップに驚きます」とGさん
2階のキッチン。半分がテラスに飛び出していて、外との距離が近い。高台にあるため眺めが良い
キッチンとテラスは直接やり取りができる。バーべーキューの際に重宝しているそうだ
ここがポイント
外は強度を重視 内は柔軟さ配慮
デザインネットワークの一級建築士・島田潤さんは、これまでも沖縄の風土に合う家としてRC造の中に木造を組み込んだ家を手掛けてきた。
「RC造の外観は、台風だけでなくシロアリにも強い。中は木造の方がライフスタイルに合わせて間取りを変えやすい」と説明する。
Gさんとは建築士と施主をマッチングする「ASJ」を通して出会った。島田さんの提案と夫婦の希望がかみ合い、設計はスムーズに進んだ。
RC造で生まれた大空間を生かし、個室は極力設けなかった。家の中央を大胆な吹き抜けにしたことで「階同士がつながり、どこにいても家族の気配が伝わる」と説明する。将来、息子たちそれぞれの部屋が必要になれば、引き戸や作り付けの家具の配置で仕切れるよう配慮した。
わんぱくな3兄弟がいて、バーベキューが好きなGさん一家。外の空間も楽しく使ってもらおうと、深い軒がせり出した半屋外空間「アマハジテラス」を四つ造った。「テラスは遊び場やだんらんの場になり、室内へ光と風を入れつつ強烈な日差しは防ぐ重要なポイント」。
Gさん宅はことし6月に第二回沖縄建築賞を受賞した。
Gさん宅のパース
[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人
敷地面積:296.91平方メートル(約89.82坪)
1階床面積:97.66平方メートル(約29.54坪)
2階床面積:103.97平方メートル(約31.45坪)
3階床面積:58.74平方メートル(約17.76坪)
建ぺい率:43.24%(許容70%)
容積率:70.16%(許容160%)
用途地域:第一種中高層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリートラーメン構造 +木造の混構造
設計:(株)デザインネットワーク 島田潤
構造:(有)建築構造研究所
施工:(株)大興建設
電気:(株)日本電設
設備:(有)ライフ工業
[設計・問い合わせ先]
(株)デザインネットワーク
098-858-2008
http://www.dn-okinawa.com/
写真/矢嶋健吾 編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1606号・2016年10月14日紙面から掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。