お住まい拝見
2025年3月28日更新
[お住まい拝見]家族のつながり密に|T home(株)
[実家建て替え 二世帯平屋]
実家の老朽化を機に、二世帯住宅へと建て替えたKさん一家。親世帯、子世帯それぞれの好みと暮らしを生かした家事、子育てがしやすい住まいで、家族の交流が深まっている

アクセントクロスが目を引く親世帯のLDK。仏間とひと続きで使え、大人数が集まってもゆったり。エレガントなデザインの照明や小物が映えるよう、白を基調にまとめた
家事・子育て楽
Kさん宅
RC造/自由設計/家族8人
花ブロックを用いた外壁が軽やかな印象のKさん宅は、平屋の二世帯住宅。階段を上った先に両世帯それぞれの玄関が並び、東側が親世帯、西側がKさん宅になっている。
仏壇のあった祖母の家(母屋)と実家、2棟を建て替えての家づくり。「子どもたちを庭で伸び伸びと、安全に遊ばせたかった」というKさん宅は、LDKから子ども室と中庭へ目が届く造りが特徴。リビングやダイニングでくつろぎながら、中庭で遊ぶ子どもたちを見守る。キッチン脇のオープンスペースには、滑り台などの遊具を置いている。夫人は「キッチンで作業をしていても、子どもたちの『滑るの見ててよ~』という希望に応えてあげられる」と笑う。
キッチン背後に水回りがまとまり、洗濯機から干し場への移動もスムーズ。収納もたっぷり設けてもらった。「家事ストレスをためない動線を建築士さんがアドバイスしてくれて、とても暮らしやすい」と夫人。Kさんは「友人を呼ぶ機会も増えた」と喜ぶ。
仏壇のある親世帯は、行事には20人ほどが集まる。Kさんの父は「リビングを広く取ること。そして、親戚が集まったときに、昔育った家の記憶が思い出せる何かがあるといいと思った」と話す。仏間には母屋の欄間を飾りに生かす。
キッチンも広々。パントリーを抜け、玄関へと回遊できる造りは、Kさんの母のお気に入り。「買い物の運び入れが便利で、風も抜けて気持ちがいい。孫たちもグルグル回って楽しそう」と目を細める。

ダークブラウンをアクセントにしたKさん宅(子世帯)のLDK。キッチンから室内を見渡せるため、家事をしながら遊んでいる子どもたちを見守ることができる
家族の行き来増え
設計は、Kさんの幼なじみで、家族ぐるみで交流のある建築士に依頼した。「相談しやすく、細かい部分まで親身にアドバイスをしてくれて、とても助かった」とKさん。
庭はKさんの提案で、管理がしやすいよう人工芝を敷いた。「建て替え前は、草刈りに半日以上掛かって大変だった。息子のおかげで楽になった」と、Kさんの父は喜ぶ。
家族の行き来もより頻繁になり、家がにぎやかになった。「夕食を作ってもらうこともあり、助かっています」と夫人。Kさんは「夏には近所に住む妹と姪っ子も一緒に、庭でプール遊びやBBQをするのが楽しみ」と、目を細めた。

LDの先にウッドデッキがあり、中庭へと続く。キッチン背後のスペースに水回りがある
ここがポイント
敷地の高低差を生かす
Kさん宅が建つのは住宅が密集した昔ながらの集落。敷地は南西2面を道路に接し、南北で最大約2.5メートルの高低差がある。元々、2階建ての実家と、仏壇のある祖母宅の2棟が建っていた。二世帯住宅への建て替えを相談された建築士の棚原彰悟さんは、親世帯、子世帯それぞれが、気兼ねなく過ごせることを重視。広い敷地を生かした、完全分離型の平家を提案した。
親戚が集まる機会が多いため、前面道路のある南側に複数台の駐車スペースを確保。「住宅は元の高さを変えずに道路から約1.8メートルの高さに据えることで造成費用が抑えられ、道路からの視線も気にせず過ごせます」と棚原さん。

花ブロックが印象的な外観。敷地の高低差を生かし、住宅は道路から約1.8メートル高い位置に設けた。親世帯(右)へはスロープからも出入りできる。親世帯、子世帯それぞれが望む暮らしに合わせて、外壁の高さを変えた
両世帯の玄関を隣り合わせに設け、東側に親世帯、西側に子世帯を配置。親世帯は、親戚の集いを重視して計画。仏間は4.5畳とコンパクトながら、隣接するLDKと一体的に使えるようにした。キッチンは、複数人で使うことを想定して広々。玄関ホールからパントリー、キッチン、リビングと回遊できる造りにし、家事の利便性を高めた。

両世帯の玄関が並ぶポーチ。親世帯側は庭とオープンにつながる
子世帯は、子どもたちを伸び伸びと安全に育てることが設計の主軸に。プライバシーと防犯性を高めるため、コートハウスを提案。外壁に花ブロックを用いることで圧迫感を和らげ、風と光を取り込みながらデザイン性も高めた。
LDKからは庭が見渡せ、LDKの北側に配置した子ども室は、3室のうち1室をオープンスペースにすることを提案。「お子さんが小さいうちは家事をしながら遊びを見守り、会話も楽しめることを重視。壁を設けて、個室にすることもできます」。

子世帯の子ども室。収納の間に引き戸が収まり、2室に仕切れる

子世帯の玄関。大容量のシューズクローゼットにはベビーカーも収まる

子世帯の洗面所。室内干しができ、物干し場(左)への動線もスムーズ

親世帯の玄関ホール。正面のパントリーを抜けるとキッチンにつながる

親世帯にはカップが飾れるキッチンカウンターを造作。照明も映える
[DATA]
家族構成:親世帯:家族3人
子世帯:夫婦、子ども3人
敷地面積:617.97平方メートル(約187坪)
親世帯・床面積:99.04平方メートル(29.96坪)
子世帯・床面積:101.98平方メートル(30.85坪)
建ぺい率:37.10%(許容70%)
容積率:32.53%(許容200%)
用途地域:未指定
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設計:T home(株) 棚原彰悟
構造:一級建築士事務所 e-craft
施工:T home(株)
電気:(有)丸興電気
水道:宮本工務店
◆問い合わせ
T home(株)
電話=080・3957・7974
https://at-thome.jp
撮影/矢嶋健吾 文/比嘉千賀子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2047号・2025年3月28日紙面から掲載
この記事のキュレーター
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- 比嘉千賀子
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編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。