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2025年1月10日更新

[お住まい拝見]畑から山へ 緑一続きに|(有)門一級建築士事務所

F邸のLDKは東西の両側に掃き出し窓があり、西側の畑と東側の山が一続きになる。この開口から光と風を取り込み、近所に住む親族が顔をのぞかせる、沖縄らしい住まいだ。

開放的なLDK。掃き出し窓に挟まれ、風が通り抜ける。二つの窓により東側(写真右)の山と西側(左)の緑がつながる


風と光抜けるおおらかな家

Fさん宅
 RC造/自由設計/家族4人 

「空き家だった祖母宅を取り壊すことになり、そこにマイホームを建てることにしたんです」とFさん。以前は草木に囲まれてうっそうとしていたが、伐採すると東側に山、西側に畑が広がる見晴らしがよい場所だと分かった。

新居のLDKは、その眺望を存分に堪能できる。東西両側に4枚引きの掃き出し窓があり、開けると光と風が通る。「自然を感じられる家、という希望通り」と満足げに話すFさん。 

周囲には実家や親戚宅があり、互いによく行き来する。撮影時もFさんの両親が庭から顔を見せたり、めいが訪ねてきたり。昔のウチナー家のような、おおらかな暮らしが垣間見えた。



東西に4枚引きの掃き出し窓があり、広々としたLDK。写真中央の廊下は水回りや寝室などへ続く


緑に囲まれ、高低差がある敷地に立つ。「F邸を通し緑の軸がつながるイメージでプランした」と建築士。植栽はもともと敷地にあったものも活用した


自慢の「カーブ廊下」

内外観のデザインは直線的でスタイリッシュ。Fさんは「新聞やホームページを見て、センスが良く機能的な家を建てる建築士事務所に依頼しました」と話す。

シャープなラインが多用される中で唯一、曲線が存在感を放つ場所がある。LDKからプライベートスペースへと続く廊下だ。曲がった先にある洗面室からの光が、カーブを描く白壁に当たることで柔らかなグラデーションが表れる。「ここが結構、来客からほめられるポイントです」

寝室や水回りなどプライベートスペースは「効率」を重視。洗濯機のある室内干し場とウオークスルークローゼット(WSC)が一続きになり、洗って・干して・しまうが最短で済む。そのWSCは寝室からも出入りができ「身支度もラク」。

シンプルな動線の中に、地域の緑や光・風をうまく取り込んだF邸だった。
 

プライベートスペースへ続く廊下。カーブの壁に、先にある洗面室からの光がグラデーションを描く。足元の地窓からも光が入る


浴室は坪庭に向けて開き、プライバシー、採光・通風を両立。この坪庭は反対側の廊下の採光にも役立っている


洗面台の上部の窓から光が入り、その先にあるカーブの壁を照らしている。写真奥は洗濯乾燥機を備える室内物干し場


室内洗濯干し場とウオークスルークローゼットは隣り合っていて、洗濯動線が最短で済む

 

ここがポイント

違和感を消す


直線的でスタイリッシュな外観。屋根付き駐車場は小石が浮き出た「洗い出し」仕上げ。玄関は扉に合わせて天井と壁に木を用いた。随所に自然素材を使用して、緑豊かな環境になじませた


F邸を設計した門一級建築市事務所の建築士・金城司さんは「眺めの良い東西側に掃き出し窓を設けることで、光と風を導き入れつつ、一続きになる緑の中で暮らすような住まいを提案した」と話す。

暮らしに風景を取り込むため、「見え方」にこだわった。「設計はスムーズだったが、現場での調整に手間を掛けた。余計な物は見えない場所へ移動させたり、動かせない物は建物になじませたり、植栽で隠したりして、目に留まらないようにした」と話す。

例えば設計上は室内から見えないよう配置したガスボンベだったが、現場で確認するとリビングの一角から少し見えたため「数センチ単位で動かした」。電柱などは植栽でゆるく隠し、目に付いたガスの配管は「外壁と同じ色のテープを巻いて、見えても気にならないようにした」。

屋根付き駐車場内にある雨どいは、「打ち放し壁の色に合わせてグレーに塗ったが、影になる場所のため少し白っぽく浮いて見えた。そこで、2トーンほど暗い色に塗り直した」など、実情を見ながら微調整を重ねた。

廊下のカーブも見え方を意識しての形。「直角にすると、光が面で分断されて奥が暗くなり空間が途切れて見える。カーブにすることで、壁伝いに光がまわり奥行きが生まれる」と説明する。

金城さんは、「F邸では『違和感を消す』ことを徹底してやった。快適な家をつくるには、間取りや機能はもちろん建築的な収まりも重要。余計なことを意識させないように整えれば、見える景色が変わり、居心地も変わる」と力を込めた。
 


リビングには10人は座れそうなソファが鎮座。「主人がテレビは大きいものが良いと言っていて、そのテレビに合うサイズのソファを置いた」。開放的なリビングだから圧迫感なく収まっている


玄関を開けると、はめ込み式の窓があり東側の山へ視線が抜ける


[DATA]

家族構成:夫婦+子ども2人
敷地面積:487.00平方メートル(約147.31坪)
1階床面積:155.33平方メートル(約46.98坪)
建ぺい率:39.39%(許容60%)
容積率:28.90%(許容200%)
用途地域:指定なし
躯体構造:鉄筋コンクリート壁式構造
設計:(有)門一級建築士事務所
構造:建築設計 明
施工:(株)DEN.CREATE
電気:shin電創
水道:(有)丸栄電気水道工業

問い合わせ
(有)門一級建築士事務所
電話=098-888-2401
https://www.jo1q.com/


撮影/矢嶋健吾 文/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2036号・2025年01月10日紙面から掲載

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週刊タイムス住宅新聞編集部

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